絵画教室下落合アトリエの課外授業「絵具工場見学」。絵具会社の大手「株式会社クサカベ」の皆様にお世話になりました。
子供グループと大人グループに分かれ、工場見学と絵具制作を交互に行う工程です。前回は工場見学の様子をお伝えしたので、今回は絵具制作の様子をご紹介しましょう!
「工場見学」を終えた大人グループの一行は、次に行う「絵具制作」の為に、実習室へと移動してまいりました。子供グループは水彩絵具を制作しましたが、大人グループは難度が高い油絵具制作を行います。講師は株式会社クサカベ技術開発部の研究員の方にお願いしました。
壁には様々な画用液や技法のサンプルが展示してありました。
まずは、絵具についての基礎知識のお勉強です。絵具は顕色材と展色材、そして大抵は助剤を加えて作られています。顕色材とは色素のことで、大抵は顔料が使われています。展色材とは顔料を画面に定着させる固着材(バインダー)と溶剤からなります。簡単に言うと、顕色材は色の粒で、それを画面にくっつけるノリの役割が展色材ということです。
絵具には、油絵具・水彩絵具・アクリル絵具など、他にも様々な種類があります。 しかしその全てに顔料が使われているという共通点があります。では何が違うのかというと・・・、展色材、つまりノリの役割を果たす物の種類が異なるのです。油絵具の場合は、多くは亜麻仁油(リンシードオイル)。水彩絵具はアラビアゴム。アクリル絵具はアクリルエマルジョンといった具合です。
さあ!いざ実習です。今回作る色は、ウルトラマリンブルーとプライムイエローレモンの2色から好きな方1色を選びます。まずは平らな板の上に顔料を出します。
もんじゃ焼きのようにドーナツ状に土手を作ります。
その中に油絵具のバインダーである乾性油を入れます。乾性油とは乾く性質の油のことです。オリーブオイルなどはいつまで経っても乾きませんよね。だから乾性油ではありません。乾性油の種類には、リンシードオイル、サフラワーオイル、ポピーオイルなどがあります。乾くといっても厳密に言うと、水のように蒸発して乾くのではなくて、酸化重合といって、酸素と結合して乾いたような状態になります。
油絵具に使用する乾性油は、塗膜の強度や黄変の度合いによって選択されますが、多くはリンシードオイルを使用するのが一般的です。
みなさん真剣に作業しています!なんだか昔やった理科の実験を思い出しますねぇ。
スチール製のヘラ(パレットナイフ)で、顔料と乾性油をまんべんなく混ぜ合わせます。
こねこね。
大人グループにただ一人混ざっている幼稚園児の我が息子。スタッフの方にお手伝いしてもらいながら、こねこねしています。
すべて混ぜ合わせたら、板の端に寄せます。
次に絵具を少量ずつ、ガラス製のすり棒で押しながら円を描くように研磨していきます。そうすることで色に輝きが生まれ、着色力も強化されます。工場では三本ロールミルで行っていた作業工程です。
今度は本日助っ人で来てくれた佐藤先生に手伝ってもらっている我が息子。ぐりぐり~。
このすり棒おもしろい形をしていますよね! 余談ですが、昔オランダにあるレンブラント(バロック時代の巨匠です)のアトリエを訪ねた時に、有りましたこれ、ガラスではありませんでしたが、アトリエの片隅に。あの時代は、まだチューブが発明されていなかったから、絵具の保存ができず、毎回絵の制作をする前に、弟子がこのすり棒を使って、絵具を作っていたそうですよ。大変だったんですね!
左がレンブラントの住居兼アトリエだった場所を、現在は美術館にしてある「レンブラントハイス美術館」の外観です。右は内部のアトリエです。その脇に・・・
このように絵具を作る作業台があるのでした。顔料やオイルが置いてありますねー。右端に見えるのがすり棒です。ちょっと形は違いますけどね。あそこで絵具をぐりぐりと研磨するんですね!
イーゼルと椅子があったので、ちょっと座ってみちゃいました・・(^<^)
本当はダメみたいでしたが・・・ヒヒヒ(^_^)v。
さあ!話を本題に戻しましょう!!
実は、結構この研磨作業が大変で、このわずかな量の絵具を研磨するのに1時間程かかりました。板の左上の塊はまだ研磨していない絵具。そして真ん中で研磨し、研磨済みの絵具を右上へ・・・という作業を繰り返します。
やっとすべてを研磨し終わりました!
次はチューブに絵具を詰める作業です。空気の抜けを良くする為ににチューブの蓋をゆるくして、お尻の方から少しずつ詰めていきます。
チューブいっぱいに絵具を詰めたら、手前の機械でチューブのお尻を、きゅっきゅっと折り曲げて閉ます。
最後に、色名、制作年月日、そして自分の名前を書いたオリジナルラベルをチューブに貼って、完成です!!
この世にたった一つのオリジナル絵具です! しかも、体質顔料が入っていない純度の高い高級絵具だそうですよ! いやー達成感ありますよねー、実際作ってみると。僕もこうやって作ったのは初めてだったので、なんだか感動しました。嬉しかったです!
いつ使おうかなぁー。もったいなくて、ずっととっておくかもな(笑)。
以上で、課外授業「絵具工場見学」の全行程が終了しました。1日のうちで工場見学と絵具制作を体験でき、盛りだくさんの内容でした。
お世話になりました株式会社クサカベの技術開発部の皆さんに、この場をお借りいたしまして改めて厚く御礼申し上げます。本来は高校生以上の参加と定めてある規約を、私の「ぜひ、子供たちにも本物の現場を見せてあげたい!」という思いを酌んで下さり、規約を曲げてOKを出して下さいました。また、これだけの大人数で同日の参加は初めてとの事で、クサカベ初の2グループ編制の交代制を組んで頂きました。まだ寒い3月から、お忙しい時間を割いて、メールや電話での打ち合わせを繰り返し、色々とご無理を聞いて下さいましたこと、本当にどうもありがとうございました。
この経験を糧に、絵画教室下落合アトリエスタッフ・生徒一同、ARTの修行に邁進してまいりたいと思います。
絵画教室 下落合アトリエ
講師 村尾 成律
www.shimorie.com