しもりえにっき
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 「突然ですが皆さん、色とは何だと思いますか?」
 
 身の回りのものには全てあたりまえのように色があるものだから、急に何だと訊かれても・・ちゃんと考えたことはない人が多いのではないでしょうか。
 
 真っ暗闇の中では、人間の目は何も見ることができません。ということは・・・、どうやら光と色には何か深い関係がありそうですね!

 皆さんは虹を見たことはありますよね。虹はおよそ7色あると言われています。虹はそもそも太陽の光です。でも太陽を見ても7色あるようには見えないですよね・・。

 「色って何なんだろう??」


 
 下落合アトリエの7月初回の授業は「色彩学」でした。そもそも色とは何なのかということから、画面上の配色のコツまで、色についての学習です!

 冒頭で色と光に関係性について触れましたね。授業ではまず、光には色が隠れているのではないかという仮説をたて、次に実際にみんなの前で光を分解して、本当に色が出てくるのかどうか実験してみました。
 
 
実験には子供クラスも一緒に参加しました!初めての大人クラスだからドキドキするね!!
 
 つまりアトリエに虹を出現させようというのです。

 はたして、成功するのでしょうか?!

皆さん、これは 何だと思いますか?
これはプリズムといって 光を分解できる 魔法の石です!
 この日はあいにく雨が降っていたので、太陽の光ではなく懐中電灯の光を分解することにしました。

 部屋を真っ暗にして・・・


 この光にプリズムをかざしてみると・・・。

 うわっ!! 色が出たっ!!!
すごーい!!
子供たちは大はしゃぎ!
さらに、びよ~~んとのばすと・・・・

虹が出たっ!!

午前クラス+子供クラスA
今度は虹色の雨を ふらせてしんぜよう!  アブラカダブラ

夜間クラス






午後クラス
うわーっ!             きれい!

 実験は大成功!! プリズムによって光は見事に分解され、色のスペクトルが出現しました。これにより、光の中には色がふくまれているということが証明されました。ちなみに「虹色の雨」は万華鏡によって光を拡散させ、それをプリズムによって白色光分解して作りました。



 というわけで、一番初めの問いの答えは・・・

 色は光。 さらに 光は波長。

 ということなのです。光は電磁波、すなわち波動の一種で、白い光は多くの波長が複合して成り立っています。白色光はプリズムを通すと屈折率の違いによって分光され、色の系列(スペクトル)になるのです。



 では、赤いものはなぜ赤く見えるのでしょう?

 身の回りにある物体には、固有の色があると思われがちですが、実は、照らされた光のどの色の波長をはね返し、またどの色の波長を吸収するかによって色は決定されるのです。
 つまり、赤いバラは、光の中の赤い波長だけを反射させ、それ以外の色の波長は吸収してしまう性質のものであると言えます。反射された赤い波長は眼球の中にある網膜に達し、桿状体(かんじょうたい)と錐状体(すいじょうたい)という2つの視細胞によって、初めて「赤」と識別され、最後は脳によって、これは「赤いバラ」であると認識される・・・というのが色の正体だったのです!


子供クラスA

子供クラスB
         おうちのなかに 虹がでるなんて びっくりしたよ!   こんなかんじ だったよね!
 虹をつくる実験を見た子供クラスの生徒達は、すぐさま自分たちのアトリエに戻り、その印象を早速絵にしました。赤・青・黄の三原色を混ぜて、いろんな色もつくってみましたよ!


 一方大人クラスはその後も引き続き、色についての講義を受けていました。色相・明度・彩度といった色の三属性についてや、補色について、そして配色の秩序について学習しましたね。




補色残像の実験中(夜間クラス) 赤と緑をじーっと見つめていますよ!

補色残像の実験を体験したい方はこちら↓をクリック。
http://www.youtube.com/watch?v=atuS6tEEh70

 補色残像とは、ある色をしばらく見つめた後に、その色を視界から消去すると、視覚上にはその補色が残像として残る現象のことです。


 手術着の色は、なぜ青いのでしょう?


 高速道路の標識は、なぜ緑なのでしょう?

 その答えは、補色残像の事をよく考えると分かると思います。

このお寿司、 どっちがおいしそう?            


色は人間の心理に大きく影響を与えます。




配色の秩序


セザンヌ 「青い花瓶のある静物」


ボナール 「浴槽の裸婦」

 セザンヌやボナールやスーラの作品における配色の解説をして、前半の講義が終了しました。

 ここでいったん、ブレイクタイムです!
 とも君が京都旅行のお土産に、お煎餅を持って来てくれましたので、みんなでごちそうになりました。伏見稲荷に行ったのかな?
キツネのお面の形をした、おもしろいお煎餅だったので・・・



みんなキツネさんになってしまいましたとさ(笑)・・・
めでたしめでたし。
こん!


さて、後半は、実習です。色相環の作成と、彩度を下げない混色のテクニックを学びます。実際に3原色から、あらゆる色を作りだし、色の感覚を身につけましょう!


実習風景(午前クラス)




色相環制作(午前クラス)


実習風景(午後クラス)

イェーイ!

立方体による彩度研究(午後クラス)


実習風景(夜間クラス)

ふむふむ!
立方体による彩度研究(夜間クラス)


実習で制作した色相環と立方体による彩度研究の図

 たった1日で、色について本当に盛りだくさんのことを学びましたね! みなさん、お疲れ様でした。今までは何気なく見ていた色ですが、これからは色について、ちょっと考察してみようという意識が芽生えていてくれれば本望です。
 よく「汚い色」という言い方をしますが、色というものは単独で汚いということは、まずありません。その色は、周囲の色との関係が悪いから汚く見えるのです。色とは他の色との関係により価値が決まると覚えておいて下さいね!
 
 それでは次回からは「人物着彩」が始まります。今回学んだ事を、しっかりと生かして、ぜひとも傑作を描いて下さい!


絵画教室下落合アトリエ
講師 村尾 成律
www.shimorie.com



Joseph Kosuth "One and Three Chairs" 1965
 これはジョセフ・コスースの「一つと三つの椅子」というタイトルの作品です。実物の椅子、その等身大の写真、そして辞書にある「椅子」の語義を並べたものです。ひとつひとつはそれぞれが「椅子」であることを主張している記号です。私たちは「椅子」を思い浮かべる時、これら(イメージや用途、それにまつわるもの)を同時に考えます。
 実物の椅子は知覚の対象としての椅子(指示記号)と、心理的象徴としての椅子(概念表象)の2つによって「椅子という記号」になっています。一方、写真と辞書の語義はこの前述の2つの代用物として「椅子のメタ記号」と言えます。コスースはこれら3つの椅子を並置することによって、プラトン的なイデア(理性によってのみ認識されうる実在)としての1つの椅子を表現しました。この作品の鑑賞者達は物質についての現実と観念の間を行き来させられることになるのです。

 この作品は「コンセプチュアル・アート」の代表的な作品です。コンセプチュアル・アートとは1960年代にアメリカを中心に始まった美術史上のムーブメントで、非視覚的なもの(行為、観念、意志など)を非物質的な方法(写真、言語、記号など)で表現するというものでした。
 コンセプチュアル・アートには、近代までの美術作品が持っていた、鑑賞者の情感を動かす要素が見当たりません。下図のように作品の要素を切り詰めた「ミニマルアート」でさえ、人の手(手わざ)を経た事物(作品)でした。

Frank Stella "Tomlinson Court Park" 1959
 ところがコスースの作品にあるのは記号そのもので、作者はただ既製品(レディメイド)を並べたにすぎません。つまり、このムーブメントは、鑑賞に堪えうる作品をつくるという従来の意識や価値観を捨て、作品それ自体よりも、制作の着想とプロセスこそが芸術であるという思想を表明するものでした。

 上級コースの6月の課題は「コンセプチュアル・アート演習」でした。
 それでは、その内容をご紹介いたします。課題文は次のようなものです。

 絵画や彫刻といった従来の美術にあった手わざを伴った作品(物)を根本から否定して、コンセプトこそアートとするこの思想に、最初は皆さん当然ながら困惑されました。
 そこでまず初めに、講師による参考作品をお見せしました。それがこちらです。

Murao Masanori "LOVE" 2011
この作品は、LOVEというラベルが貼られた箱を皆さんにプレゼントするというパフォーマンスです。受け取った皆さんは嬉しそうに箱のふたを開けます。でも実は、中には何も入っていないのです。しかし確かに作者は愛を中に込めました。これは、目に見えぬ大切なものを可視化しようとする試みなのです。皆さんは箱の中に何を見たのでしょうか。

 それでは、生徒作品をご覧ください。

Kanazawa Miki





講評会で作者によるコンセプトの発表を聞くクラスメートたち。
 携帯電話やタブレットの画面に映し出されているのは作者本人。そしてそれをまた二重に撮影したものをプリントアウトして壁に展示しました。作者の姿を確認できるのは携帯電話などの画面の中だけで、その被写体(本人、本体)の姿はそれ以外に見当たりません。情報化社会と言われ始めてから随分長い年月が経ちましたが、今や人間そのものも情報と化し、本当の本人の姿はぼやけて霧の中に居るかのようです。フェイスブックなどは、まさにこれにあたるでしょう。世界中の人とコミュニケーションが瞬時にとれるようになり、人間同士の絆が一見強くなったようにも思えますが、二重にも三重にも情報のベールが積み重なることで、実は誰と向き合っているのか、もはや分からなくなっているのではないかという危うさを感じずにはいられません。



Ikuta Kennji

 一見すると視力検査表のように見えるこの作品。よく見ると実は通貨記号の羅列です。これらはそれぞれ、世界の国々の中で経済的な豊かさの順、国民の幸福度の順、国土の面積の広さの順になっています。視力検査のように片目でこの表を見つめてみましょう。目立って見えるものはどこの国の通貨記号でしょう。よーく見ようとしても見えてこないのはどこの国のそれでしょう?お金をたくさん持っているということは、幸せということなのでしょうか? 日本は経済大国になりましたが、毎年3万人近くも自殺者をだしてしまっています。一方、南アジアに位置するブータン王国の経済規模は日本の市町村レベルに匹敵するほどの低い水準ではありますが、「世界一幸せな国ブータン」として知られるように、幸せの指標である国民総幸福量が高いと言われています。鑑賞者はこの視力検査表を前にしたとき、自分の何を検査する事になるのでしょうか。




Ishii Kanato
 同じ大きさの発泡スチロール製の玉をブラック、ダークグレー、ライトグレーの3色で塗り分けました。重さは当然どれも同じですが、色の性質によりブラックが重く、ライトグレーが軽く感じますね。人間の知覚をくすぐる作品です。「鉄1kgと綿1kg、どっちが重い?」なんだかこのなぞなぞを思い出しちゃいました。(笑)



Tomotune Atushi
 記号論的に"apple"をシニフィアン(指示するもの)とシニフィエ(指示されるもの)に分け、時系列ごとにロランバルト的「シニフィアンの戯れ」にチャレンジした作品。ひとつのリンゴから色々な事柄を連想できるのですね。


クラスメート全員で作品を鑑賞中です。




Takahashi Yumiko
 この作品はオブジェになってしまっていて、コンセプチュアル・アートとは言えませんが、作者の心情を素直に表現できている魅力的な作品となりました。頭から耳から鼻からスパイラルが噴出しています。目からは涙が出ていますね。きっと心を揺さぶられるようなことがあったのですね。

コンセプトを発表中の作者


 基礎コースから順を追って続けてきた、美術史を学ぶカリキュラムもいよいよ現代美術に突入しました。そして、これが最後の美術史の授業となります。上級コース生はこの先、今まで学んで来た美術史の知識と、今まで身につけた作品制作の技術と精神を基に、各自の創作研究を深め、独創的かつ優れた作品を生み出す事を目指します。

 
 前回(2011年)のコンセプチュアル・アート演習の様子をご覧になりたい方はこちらをクリックして下さい。
コンセプチュアル・アート演習①
コンセプチュアル・アート演習②

絵画教室下落合アトリエ
講師 村尾 成律
www.shimorie.com


 6月の基礎コース・中級コースの課題は「静物着彩」でした。赤い車のおもちゃ、紙風船、コンクリートブロック、そしてロープがモチーフです。それぞれの材質の違い、力が加わりピーンと張ったロープの緊張感、そして色彩といった諸要素を、4月・5月で身につけたデッサン力で、上手く表現に繋げることができたでしょうか。制作から講評会までの様子をご紹介します。

制作風景(午前クラス)
 現在、午前クラスには子供クラスから進級してきた生徒が3人います。子供クラスで十分に感性を磨かれた3人。大人クラスで更に研鑽を積みます。今まではアクリル絵具での制作でしたが、いよいよ今回から油画に挑戦します。初日は、3人とも買ってもらったばっかりでピカピカの油絵具と画材を嬉しそうに持って来ましたね!ドキドキとワクワクが表情から溢れていましたよ!(笑) 子供たちのキラキラした顔を見ると、私たち講師も嬉しくなってきます。

油画初挑戦! 大きなキャンバスに描くのも初めてです!

こちらは油画歴1年の先輩です! さらさらと描き上げていきます。
 油絵具は水彩絵具やアクリル絵具に比べて、扱いづらい絵具です。思い通りに扱えるようになるまでに最低でも1年はかかるような代物です。しかし、いったん使いこなせるようになると、無限の可能性が溢れだし、あらゆる表現を可能にする大きな力を発揮します。最初の1年間はじゃじゃ馬を馴らすような感じかも知れませんが、塗り方や色の組み合わせ、オイルの種類など、いろんな事を試してみて、油絵具の魅力をたくさん発見してほしいと思います。

講評会(午前クラス)
 講評会で作品をずらーっと並べると、全員が以前と比べて明らかにデッサン力がアップしていると思いました。4月・5月におこなったデッサン力強化において、かなり具体的な課題を提示し、それを期間内にクリアーする目標を掲げました。生徒達はその目標に向かって一生懸命頑張りました。その努力がここに実を結んだと言えるでしょう。

生徒同士でお互いの作品を批評し合います。
 絵画の学習で最も重要な事は、絵具の塗り方や形の描き方を学ぶ事ではありません。それを超えて、自分は何を表現したいのか、何を人に伝えたいのかという主体的な精神の確立であると私は思います。生徒達(特に子供たち)には、この力を身につけてもらう為に、本教室では生徒同士でお互いの作品を批評し合う場を設けています。1年前には、みんなの前で発言するのは恥ずかしいという思いと、人の作品を批評するなんてとんでもないという思いが合わさって、ひとこと発するのも精一杯だった子供たち。しかし今では、みんなの前に立ち、指し棒を使いながら作品の良いところ、改善すべきところを指摘しながら自分の意見を言えるようになってきました。見事な成長ぶりです! 今後は更に、討論できるようにまでしていきたいと考えています。

自分の考えを述べる子供たち。

講評会(午後クラス)

講評会(夜間クラス)








 全員が順調な成長ぶりを見せています。物の捉え方が徐々に理にかなってきました。しかし完成度がまだまだ不十分です。この点については以前から指摘しているのですが、未だ改善されていません。高い完成度とはどういうことなのか真剣に考える必要があります。手数を増やすことは勿論ですが、ただまんべんなく画面全体に手を入れれば良いというわけではありません。一部分を集中的に質の高い描写を施し、他の部分と差をつける「粗密の関係」について研究してみましょう。それを成功させるためにも、計画的な作業時間の配分が必要ですね。
 7月は「人物着彩」です。人物だからといって特別な捉え方をするのではなく、静物と同様に冷静な観察眼を忘れることなく取り組んで頂きたいと思います。楽しんで!

絵画教室下落合アトリエ
講師 村尾 成律
www.shimorie.com