一葉記念館の話を再び。
記念館には、先日掲載した一葉の旧宅周辺の模型だけでなく、
舞台化された「にごり江」の舞台装置模型もありました。
作者は舞台美術家の朝倉摂さん。
彫刻の巨匠・朝倉文夫の娘さんです。
舞台は、日生劇場で行われたようです。
摂さんの名前はこれまでも耳にしていたけれど、改めてWikiを見てびっくり。
当初画家を目指し、伊東深水に師事していたとか。
さらに舞台美術のほうでは、「ヤマトタケル」も手掛けていたんですね。
娘さんは舞台女優さんで、親子三代、それぞれ異なる分野で才能を発揮。
さて肝心の一葉関連の展示ですが、自筆原稿や手紙の複製なども多くあります。
記念館による解説も豊富ですが、半井桃水との関係については、断定的なことは
書かれていません。
中島歌子の横やりといったドロドロ的な話にも触れておらず。
こちらは小説デビュー作。「闇櫻」の未定稿。
原稿用紙はマス目のない罫線タイプ。
以前掲載した、自筆を転写した記念碑で見た通り、一筆書きのように
流れる筆致。
「たけくらべ」の現代語・原文対訳を読んだ際は、平安朝の記述があったのが印象的でした。
「いとおかし」に近い表現が散見されました。
「花ごもり」未定稿。
マス目付きの原稿。
再版が多く出たとのことで、当時の人気度がしのばれます。
吉原にほど近い下谷龍泉寺町では、駄菓子などを売る商いを開始したものの、
うまくいかなかった模様。
なんでも向かいにライバル店ができてしまったとか。
新聞広告で見て、易者にアドバイスを乞うた、そんなニッチな情報までありました。
一葉が目にした易者の広告。
でもその易者との面談がきっかけで、文学一筋に歩むことを決めたということです。
この一葉記念館の開館ポスターを見たところ、なんだかとてつもなく古そう。
なんと1961年!
そんな昔からあるんですね。
建物の外観が異なっていています。
柳澤孝彦氏設計の今の建物ができたのは、2006年のことです。
吉原・大門の明治期の写真も。
ただこのころはすでに最盛期は過ぎていたはずで、そのせいか、あるいはモノクロ写真のせいか、
思いのほかギラギラ感が見えません。
今はこんな様子。
在りし日をしのぶのは難しいような、それでいてどことなく、
いまもまだどこかつながっている部分があるような。