現在整備のため休館中の国立西洋美術館は、実業家・松方幸次郎氏が主にフランスで買い集めたコレクションがもとになっている、というのは周知のとおり。

 

松方コレクションとして知られるそれらの収集品は、フランス政府に接収されたり、ロンドンの倉庫火災で焼失したり、といった波乱万丈を経たのち、残ったものが西洋美術館の常設展などで公開されてきました。

 

 

2019年には、返還後傷みが激しくほとんど公開されなかった絵画、仏政府から返還されなかったものの特別に一時的に貸し出しを受けた絵画、パリのロダン美術館で借り保管されている最中に撮影されたコレクションの写真、ロンドンの倉庫火災で灰燼に帰した作品のリスト、、といったレア品もまじえ、松方コレクションの全貌をつまびらかにする松方コレクション展が開かれました。

 

 

川崎造船所社長時代に先見の明を発揮し、軍需需要で大儲けをした松方幸次郎氏。

大金を携えてフランスでコレクションを増やしたものの、会社はやがて傾きコレクションどころではなくなり、美術館構想(共楽美術館という名前で作られる予定だったことが先の西美の展覧会で明らかにされていましたっけ)も頓挫。

 

ル・コルビュジエの指揮下で国立西洋美術館が完成したのは幸次郎氏の死後のことでした。

 

 

そんな絵画収集の明暗を経験した幸次郎氏の父は首相経験者・松方正義氏。

(以前書いた気がするけれど、建築家の槇文彦氏の奥様は、幸次郎氏のお孫さん。)

 

そんな由緒正しき松方家の別荘が軽井沢にあり、現在「涼の音」という名でカフェとして使われていると知りました。

 

今夏「コロナはまた再び大流行しそうだね、夏休みを取るなら今のうちだね」、ということで6月の平日に休みを取ってでかけた先がいくつかあり、軽井沢もそんな旅程のひとつでした。

 

とはいえこの日、どうしても午後2時までには帰宅せねばならず、午前中のみのちょっとした散策ではありましたが。

 

もともと室生犀星が晩年住んだ家を見るつもりででかけたのですが、歩いていたらこんなものが登場し、その存在に気付いた、という次第。

 

 

 

プレートに書かれたところによると、戦時中はスウェーデン公使館にも転用されていた由。

 

 

 

 

 

新緑がまぶしいいい季節。

モーニングメニューもあるようで、10時過ぎに到着したときには食事をしている人の姿も。

なかなか素敵。

屋外にもテーブルがあって、これならソーシャルディスタンスも完璧ですね。

 

なにしろ今回は軽井沢滞在2時間というタイト・スケジュールなので後ろ髪を引かれつつも、向かいにある室生犀星宅見物へと向かいました。(そしてその後は軽井沢最古の教会へ。)

 

 

 

確かに説明書きにあった通りバンガロータイプ。

華美に走らずなかなか堅実で、そして頑丈そう。

外から中はうかがい知れなかったけれど、これはいつか食事がてら偵察したいものです。

 

 

 

 

新緑の季節は特に気持ちがよくてお勧めの場所。

室生犀星の自宅もビロードのような苔に囲まれた素敵なお宅でした。

 

 

 

 

軽井沢’21/初夏① 西洋美術館コレクター松方家の別荘がカフェに転用
軽井沢’21/初夏② 軽井沢の日本人別荘1号と指揮者山本直純氏の祖父は三笠ホテル創業者
軽井沢’21/初夏③ 松方家の別荘続報とライシャワー妻松方春子さん

軽井沢’21/初夏④ 苔むす室生犀星終焉の地
軽井沢’21/初夏⑤ 脇田美術館に隣接 吉村順三氏が建てた別荘