春を映す和の意匠を楽しむ
桜の季節は過ぎましたが、六本木の泉屋博古館 分館では、春らしい装いの展覧会が開催中です!
春を彩る屏風の名品を中心に、新収蔵のうつわ、季節に合った茶道具で“おもてなし”の心を感じるその内容は、すでに展示替え後期に入っていますが(汗)、お花見のあとは、ぜひアートで春を感じてみては?ということで、一部ご紹介です~。
展示室Ⅰ
まずは屏風や調度品の数々で「春」を感じます。
今回の最大の見どころは、「天皇と将軍 華麗なるパレード」として、5年ぶりの公開、《二条城行幸図屏風》。
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1626年、三代将軍・徳川家光と大御所秀忠の招きに応じ、後水尾天皇が京都・二条城に行幸する様子が描かれた、きらびやかで華やかな作品です。
壮麗な天皇の行列を、京都の人々が思い思いの装いと準備をして見物している姿が、屏風全面に緻密な描写で展開。
戦国の時代が終わり、江戸の体制が整っていく歴史とともに、当時の京風俗を満喫できます。
上段には内裏から二条城へ向かう天皇の行列が、下段には二条城から内裏へ天皇を迎えに参内する家光の行列が描かれます。
参列者はおよそ9000人、行幸の先頭が二条城に入っても、後水尾天皇はまだ内裏を出ておらず、行列は朝から夕方まで続いたそうです…。
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行列に従い、往来の端に土下座する武士たち、格子の向こうから覗き見る晴れ着を着た女たち、行列そっちのけで宴会に興ずる人たち、中には子供におしっこをさせる母親まで!
見物人たちの装いを観ているだけでも、時を忘れます。
粛々と進む、豪華な行列と、びっしりとひしめいている京市民たちの対比が面白く、当時の喧噪が聴こえてきそうな臨場感に満ちています。
一方、立ち並ぶ家屋の2階はすべて開け放たれ、そこに人の影はありません…。
これは、治安上の幕府の命が徹底したことを物語ります。
政治と風俗、両者が等価に描かれた貴重な記録、その華やかさとともに楽しんでください!
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この行幸図ゆかりの茶道具も紹介されます。
後水尾天皇の父、後陽成天皇ゆかりの唐物茶入、後水尾天皇ゆかりの香炉、徳川家光愛用の茶釜など、寛永の文化を偲びます。
もうひとつの行幸図《大原御幸図屏風》も第Ⅱ展示室で公開されています。こちらと比較して違いを味わうもよし。
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また、宮川長春の《遊女図巻》は、やがて浮世絵へつながっていく風俗画の始まりを観るとともに、屏風に描かれる衣装との比べっこができるかも。
「春の彩り―花を愛でる心―」として後期に紹介される注目が、琳派の祖といわれる俵屋宗達の工房で作成されたことを示す「伊年印」のある《四季草花図屏風》。
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金地を背景に、写実的で同時に装飾性を持つ、さまざまな草花を堪能できます。
まさに満開、贅沢なお花見です(笑)。
(ちなみに前期は江戸前期に流行した主題の《誰ヶ袖図屏風》とこの時代から生まれてくる風俗画から《扇面散・農村風俗図屏風》が迎えてくれていました!↓)
《扇面散・農村風俗図屏風》から臨む |
《誰ヶ袖図屏風》から臨む |
飛び交う蝶や青貝の花鳥などが施された蒔絵の箱は、そのゴージャスなたたずまいに思わずため息…。
織部の梅文の向付と、沓形の祥瑞絵が描かれた向付の揃いも、かわいらしく春を主張します。
美しい蒔絵の箱たち・・・。 |
小ぶりな器の揃いもかわいい♪ |
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銘に「山桜」を負う茶入。確かに桜の木が浮かび上がるよう・・・。
箱とともに展示されています。
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「みやびな京の名工―仁清―」では、仁清の《唐物写十九種茶入》の一堂展示がおススメ。
すべてを手に包みとって見たくなるほどに愛らしくも清廉な茶入の行進がたまりません。
また、唐物のお茶碗2点も美しいたたずまいです。(↓)
その銘の妙とともに味わってください。
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ホール
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「邸宅を飾るしつらえ―和館編―」として、住友春翆の邸宅を飾った、和様の作品が並びます。
収穫した稲束に飛んでいくる雀が可愛い《耕作蒔絵茶箱》、
修復されてのお披露目で、回転台で観られる《半磁器桜花模様花瓶》(伝 佐々木庄次郎)
が魅力的です。
日本蒔絵合資会社《耕作蒔絵茶箱》 明治時代 泉屋博古館蔵 (前期展示) |
伝 佐々木庄次郎《半磁器桜花模様花瓶》 明治36年(1903) 泉屋博古館蔵 |
展示室Ⅱ
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「茶会を彩るおもてなしの調度」では、泉屋博古館に新たに収蔵された近代作品を中心に、「春のおもてなし」にふさわしい茶道具や絵画作品が紹介されています。
後期必見は、江戸琳派の創始者酒井抱一の下絵による、原羊遊斎による蒔絵の棗。
江戸時代・19世紀 泉屋博古館分館蔵 |
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当代一流のアーティストによるコラボレーション。
抱一のこの作品に関する書状とともに観られるのも嬉しい展示です。
こちらは五代・清水六兵衛による茶碗2品。
五代清水六兵衛《扇流模様茶碗》 大正時代 泉屋博古館蔵 |
五代清水六兵衛《鳳凰模様茶碗》 大正時代 泉屋博古館蔵 |
扇と水流の組み合わせと鳳凰の紋様は、繊細ながら五色の輝きで魅了してくれます。
絵画では望月玉渓《白秏孔雀図》がその羽根の美しさが神々しくさえ見える、品格の一作です。
ぜひ、会場で!
(ちなみに前期には上野寛永寺の桜を描いたといわれながら、これまで幻の作品といわれていた菊地容斎の《桜図》、日本画風に描かれた油彩画であるのがちょっと面白い香田勝太の《春秋草花図》から 「春」が出ていました。すみません、次回展示をご期待ください…)
(前期展示・2/25~3/26) |
香田勝太《春秋草花図》のうち「春」 紙本銀地油彩 大正6-7年(1917-18) 泉屋博古館分館蔵 |
このほか、大正期の蒔絵調度の数々、明治期、三代・清風与平の《白磁桜花文花瓶》などが、シンプルな洗練さで春のおもてなしを演出します。
最後には「邸宅を飾るしつらえ―洋館編―」として、やはり春翆の邸宅を飾った、西洋の作品が観られます。
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日本に最も早く入ったモネ作品のひとつといわれる《モンソー公園》、
フランスの油彩画を元に、二代・川島甚兵衛が綴れ織の技術を改良して作成、パリ万博に出品されたものと同定されるという《猟犬図額》が、
住友コレクションの充実ぶりを伝えます。
華やかで、さわやかな、春爛漫の“おもてなし”、ゴールデン・ウィークいっぱいまでです。
屏風の世界にあそび、茶道具やうつわに春を見つける時間はいかがですか?
(penguin)
『屏風にあそぶ 春のしつらえ 』
会場 :泉屋博古館 分館 (六本木)
〒106-0032 東京都港区六本木 1-5-1
アクセス :東京メトロ 南北線 「六本木一丁目」駅下車
北改札1-2番出口より屋外エスカレーターで3分
東京メトロ 日比谷線 「神谷町」駅下車、4b番出口より徒歩10分
東京メトロ 銀座線 「溜池山王」駅下車、13番出口より徒歩10分
開館時間 :10:00~17:00 (入館はは16:30まで)
休館日 :毎週月曜日
入館料 :一般 800円(640円)/高大生600円(480円)/
*( )内は20名以上の団体料金
*中学生以下は無料
お問い合わせ :Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)
ホームページは こちら
『屏風にあそぶ 春のしつらえ』 招待券を10名様へ!!(お一人様一枚)
応募多数の場合は抽選の上、
当選は発送をもって代えさせていただきます。
《申込締め切り 4月30日(日)》
お申し込みは、ticket@art-a-school.info まで
!!希望展覧会チケット名、お名前、送付先のご住所を忘れずに !!
美術ACADEMY&SCHOOL チケットプレゼント係
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