オールドマスターの名画が集結!『大エルミタージュ美術館展』 〜森アーツセンターギャラリー〜 | 美術ACADEMY&SCHOOLブログ出動!!!

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これぞヨーロッパ絵画の王道!

 

 かつての帝政ロシア歴代皇帝が国の威信をかけて収集した、珠玉の美術品コレクションを所蔵するエルミタージュ美術館。その1万7千点の絵画コレクションの中から、16世紀ルネサンス、17・18世紀のバロック・ロココの巨匠たちの名画85点が六本木ヒルズにやってきました!今回来日した作品は、全てエルミタージュ美術館の常設展示作品という、まさに美術館の「顔」ともいえる名品揃い。エルミタージュ美術館展の決定版と銘打つこの展覧会の見どころをご紹介いたします!

 

 本展は全体を地域別に分けた6章構成となっています。画題の傾向などの違いで、それぞれの国の特徴が見えてきます。

 

プロローグ

ウィギリウス・エリクセン《戴冠式のローブを着たエカテリーナ2世の肖像》1760年代

©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18

 

 展覧会の冒頭を飾るのは、エルミタージュ美術館の礎を築いた女帝エカテリーナ2世(在位1762−1796)の肖像画です。歴代ロシア皇帝のうち、畏敬を込めて「大帝」と呼ばれるのはピョートル1世とエカテリーナ2世の二人だけ。外国人でありながら、亡き夫に代わってロシア皇帝になったエカテリーナは、勤勉で教養豊かな知性溢れる女帝として、堂々とした姿で描かれています。ロマノフ王家のシンボルである双頭の鷲があしらわれた豪華な衣装も目を引きます。

 1764年、エカテリーナはベルリンの実業家から317点の絵画コレクションを取得。親しい人たちにコレクションを見せる場を作り、エカテリーナはそこを「エルミタージュ(フランス語で「隠れ家」の意)」と呼びました。ルーヴル美術館、メトロポリタン美術館と並び称される世界三大美術館の一つ、エルミタージュ美術館の始まりです。

 本展では、エカテリーナ在位中に収集したコレクションも数多く展示されています。作品横のパネルに王冠マークが付いていますので、チェックしてみてくださいね。

 

第1章 イタリア:ルネサンスからバロックへ

 神が中心の中世文化から、人間中心の近代文化への転換の端緒をなしたルネサンス。その発祥の地であるイタリアは、長い時代に渡って美術の一大中心地となりました。キリスト教一色の美術を払拭したルネサンスの時代は、やがて動感を強調した劇的な表現や、強い明暗のコントラストを用いた現実感の強いバロック絵画の時代へと移っていきます。

 

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像》1538年

©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18

 

 第1章展示室の入口正面で私たちを出迎えてくれるのは、盛期ルネサンスの大巨匠ティツィアーノが描いた肖像画。ティツィアーノらしい豊満な美女がまとうのは、男性ものの衣装でしょうか。この女性が何者なのかははっきりしていませんが、色々と想像を掻き立てられます。

 

 

ポンペオ・ジローラモ・バトーニ《聖家族》1777 年 

©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18 

 

 親しみやすい柔らかな表情の聖母と、幼いキリストを中心とした《聖家族》を描いたバトーニ。バトー ニは「イタリア最後のオールドマスター」と呼ばれた 18 世紀の画家です。 

展覧会場内風景

 

第2章 オランダ:市民絵画の黄金時代

 17世紀のオランダでは、レンブラントやフランス・ハルスといった巨匠たちが活躍していました。富裕階級だけでなく、一般のオランダ国民にも愛好された絵画の中核を担っていたのは、世俗的な室内画や風俗画、風景画、静物画といった絵画でした。

 

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 

《運命を悟るハマン》    1660年代前半

©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18

 

 レンブラントが描いた《運命を悟るハマン》。ハマンは旧約聖書の『エステル記』に登場する人物です。 ペルシャ王クセルクセスの后に選ばれたエステル。大臣のハマンは、エステルの養父でユダヤ人のモル デカイに対する個人的な恨みからユダヤ人を皆殺しにしようとしますが、エステルの機転によって阻止 され、ハマンは王から極刑を言い渡されます。

 自分の運命を悟り胸に手を当て、観念した様子のハマン。右奥に佇むのがクセルクセス王、左にいるの が別の家臣とされていますが、実はこの絵が正確に『エステル記』のどの場面を描いているのか、未だに 議論されているところだとか。

 この作品に関して、音声ガイドでは又吉直樹さんが芸人らしい目線でツッコミを入れてくれています。 巨匠の作品も見ている側の自由な角度で楽しむことができる、ということを思い出させてくれます。 

 

第 3 章 フランドル:バロック的豊穣の時代

 この章のキーパーソンは、北方バロック最大の巨匠ルーベンス。17 世紀フランドル(位置的にはほぼ 現在のベルギー)では、ルーベンスとその工房が圧倒的な影響力を持っていました。ルーベンス作はもち ろん、フランス・スネイデルやヤーコプ・ヨールダンス、ヴァン・ダイクといったルーベンス工房出身者 の作品も並びます。 

 

ピーテル・ブリューゲル(2 世)(?) 《スケートをする人たちと鳥罠のある冬景色》

1615-1620 年頃 ©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18 

 

 ルーベンス全盛の少し前、リアルで詩情豊かに季節感を描写して人気を博したブリューゲル一族。「農 民画家」と呼ばれたピーテル・ブリューゲル(1世)、その息子で夜の火事を好んで描いたため「地獄の ブリューゲル」と呼ばれたピーテル・ブリューゲル(2世)、もう一人の息子(ブリューゲル(2世)の 弟)ヤンは花の絵を得意とし「ビロードのブリューゲル」と渾名されました。

 《スケートをする人たちと鳥罠のある冬景色》は「地獄のブリューゲル」と呼ばれた息子が描いたとされています。時代も国も違う私たちにはわかりづらいですが、当時の人々には一目瞭然であったろう諺 や伝承の引用が絵の中に盛り込まれています。画面右には今にも作動しそうな鳥罠。画面左、スケート靴 を履きカーリングの原型になったゲームに興じる人々の足元の氷が、思いの外薄い。一見ほのぼのとし た田舎の風景に、薄暗い「危険」を描きこんでいます 。

 

 

フランス・スネイデルス《鳥のコンサート》1630 年代-1640 年代
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18 

 

 スネイデルスが描いた《鳥のコンサート》。イソップ物語の「フクロウと鳥たち」からヒントを得たもの と推測されています。楽譜を持って指揮するフクロウ。歌い手たちを見る限り、耳を覆いたくなるような 不協和音が発せられることしか想像できませんが、たくさんの種類の鳥たちの描写は丁寧で賑やかで、 絵としてはとても楽しい。 

 

第 4 章スペイン:神と聖人の世紀

 16 世紀に「太陽の沈まぬ国」として隆盛を極めたスペインでしたが、絵画の黄金時代はそれから約 1 世紀後に訪れました。カトリックによる国家統合を理想とし、異端に対して不寛容であったフェリペ2 世に続く時代であり、禁欲的で敬虔なカトリック信仰に基づく宗教美術が「国民絵画」として確立されていきました。 

 

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ 《幼子イエスと洗礼者聖ヨハネ》1660 年頃
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18 

 

 ムリーリョが描いた幼いイエスと洗礼者聖ヨハネ。二人が幼き日に出会うという記述は聖書にはあり ませんが、好まれた画題であったようです。港の孤児や庶民を多く取材したムリーリョの描く宗教画は、 柔らかいのに説得力があり、不思議な魅力を感じさせます。 

 

フランシスコ・デ・スルバラン 《聖母マリアの少女時代》1660 年頃
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18

 

 私の個人的なオススメはと問われたら、真っ先にこの絵を挙げます。フランシスコ・デ・スルバラン 《聖母マリアの少女時代》。たとえキリスト教画であるということを横に置いたとしても、「無垢」な彼女 の表情に心打たれ、感動せずにはいられません。

 スルバランは本来男性が主体の硬質な宗教画を得意とした画家ですが、スルバランの娘をモデルにし たのではといわれるこの幼気なマリアは数ヴァージョンが確認されており、彼にとって大事なテーマの 一つだったことが窺えます。 

 

第 5 章 フランス:古典主義的バロックからロココへ

 絶対王政を確立し、豊かで強力な国となった 17 世紀のフランス。ルイ 14 世時代に再編された王立絵 画彫刻アカデミーの教義は、プッサンの古典主義様式を由来としていました。続くルイ 15 世の治世では 軽快で優美、遊び心や郷愁を特徴とするロココ文化が花開きます。

 

 

ジャン=オノレ・フラゴナールとマルグリット・ジェラール 《盗まれた接吻》1780 年代末
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18

 

 ロココの重鎮フラゴナールとその義理の妹マルグリットの共作《盗まれた接吻》に描かれたのは、ロココ的「戯れの恋」。シックでエレガンスでコケティッシュな人物たち。内容についてはもはや説明は不要でしょうか。 

展覧会場内風景

 

第 6 章ドイツ・イギリス:美術大国の狭間で 

 ドイツとイギリスの美術界は、国内情勢が不安定だったため他国から少々遅れをとっていました。混乱した世相の中、16 世紀北方ドイツではドイツ・ルネサンスを代表するデューラーやクラーナハと いった画家が登場。社会的状況の影響を受けながらも、北方独自の偉大な伝統を生み出していきました。 イギリス絵画のクオリティ向上は、政情が安定した 18 世紀初頭を待たねばなりませんでした。イギリス絵画の重要なジャンルは、肖像画。冷静な優美さでモデルの個人的背景や内面まで表現したトマス・ゲインズバラなどの巨匠が現れました。

ルカス・クラーナハ《林檎の木の下の聖母子》1530 年頃 

©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18

 

 日本国内でも大回顧展が開かれたばかりのクラーナハ。色白、広い額、切れ長の目、おちょぼ口、尖り 気味の顎、ブロンドの髪。描かれた聖母はクラーナハの理想の女性像で、ドイツに多いゲルマン系の雰囲 気を醸しています。うねり輝く髪や、聖母の首元から頭部を覆う薄いベールの描写がとても繊細です。

 

 

 他にも特筆すべき作品が多すぎて困ってしまいますが、ぜひ本物を美術館でじっくり味わっていただ きたいと思います。流行に左右されないオールドマスターの手腕をたっぷり堪能できる、絶好の機会です。 

また、本展はロシアの国民的キャラクター、チェブラーシカとのコラボレーションも展開。チェブファンなら可愛い限定グッズも見逃せませんよ!

(伊藤)

 

『大エルミタージュ美術館展  オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち』開催概要

会期:2017 年 3 月 18 日(土)−6 月 18 日(日)※休館日 5 月 15 日(月)

開館時間:午前 10 時−午後 8 時(火曜日は午後 5 時まで、但し 5/2 は午後 8 時まで) 

※入館は閉館の 30 分前まで
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ 森タワー52 階)
〒106-6150 東京都港区六本木 6-10-1
六本木ヒルズへのアクセス:
東京メトロ 日比谷線「六本木駅」1C 出口 徒歩 0 分(コンコースにて直結)

 都営地下鉄 大江戸線「六本木駅」3 出口 徒歩 4 分
都営地下鉄 大江戸線「麻布十番駅」7 出口 徒歩 5 分
東京メトロ 南北線「麻布十番駅」4 出口 徒歩 8 分
観覧料(税込):

     当日    団体 

一般   ¥1,600  ¥1,400 

大学生  ¥1,300  ¥1,100

中高生  ¥800   ¥600
*小学生以下は入館無料
*団体料金は 15 名以上で適用されます。添乗員は 1 名まで無料 *障がい者手帳をお持ちの方と介助者(1 名まで)は、当日料金の半額 

お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル) 

展覧会公式ホームページ http://www.hermitage2017.jp

     Twitter @Dai_hermitage
     Facebook http://www.facebook.com/hermitage2017/

巡回展情報
名古屋展
会期:2017 年 7 月 1 日(土)−9 月 18 日(月・祝) 会場:愛知県美術館
神戸展
会期:2017 年 10 月 3 日(火)−2018 年 1 月 14 日(日) 会場:兵庫県立美術館 

 

 

 『大エルミタージュ美術館展  オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち』 
招待券を10名様へ!!(お一人様一枚) 

応募多数の場合は抽選の上、
当選は発送をもって代えさせていただきます。


《申込締め切り 4月21日(金)》

お申し込みは、ticket@art-a-school.info まで 手紙

!!希望展覧会チケット名、お名前、送付先のご住所を忘れずに!!

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