開館50周年記念特別展 山種コレクション名品選Ⅳ
東西検証第二弾。東京画壇の名作で日本近代絵画を概観
山種美術館50周年を記念するシリーズ最後の展覧会は、東西対決の東京編です。
江戸から明治へ、さまざまな価値観が転換していく近代にあって、日本画の新しい在り方と革新を求めて、模索と挑戦を続けた画家たちの軌跡を東京の画壇から観ていきます。
美術館創設者の山﨑種二は、戦前・戦後を通じて、日本画家たちを支援し続けました。
こうした画家との直接の交流により、彼の依頼によって揮毫されたものなど、作品にはさまざまなエピソードが残されています。
この由来も含め、近代から戦後まで、日本画壇を牽引した代表的な画家たちの名品約50点、切手や教科書の掲載などで観たことのある作品たちが勢揃い!
山種美術館の底力を実感できる、記念特別展最後を飾るに相応しい内容となっています。
第1章 近代の東京画壇
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西洋化の進む明治時代、新たな日本画の地位確立を求めた、アーネスト・フェノロサと岡倉天心による指導のもと、横山大観、下村観山、菱田春草らが古典研究を重視しながらも、時代にふさわしい画題や表現を追求していきました。
1889年には東京美術学校が開設され、初代校長として岡倉が就任します。その後、彼らは日本美術院を新たに創設、小林古径や速水御舟らが次世代を担う個性を発揮します。
また、官設の展覧会として開設された文展(大正期には帝展、昭和に改めて新文展)からは、川合玉堂や鏑木清方、松岡映丘などが現れます。
明治から昭和初期の東京の日本画壇を支えた画家たちの代表作品が一同に並びます。
入り口で迎えてくれるのは、松岡映丘《春光春衣》。
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この季節に相応しい、あでやかな作品です。
縦長の画面上部に十二単衣の姫君を、下部に松と桜を配し、色彩のバランスが心地よく、観ているものも華やいだ気分になります。
次いで並ぶのは橋本雅邦の《日本武尊像》。
こうした日本の神話に基づく作品は、天皇をいただく、新しい日本の政治体制の中、日本の歴史の正当と愛国意識を醸成する意図に沿って、当時の画家たちの多くがモティーフとしました。
中でもこの作品は、そのたたずまいの健康的な神聖さで高く評価された、雅邦の代表作のひとつです。
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この作品は、「美術館を創って万人に公開するなら」という条件で、大観が山﨑種二に購入を許したものだそうです。
彼のトレードマークともいえる富士が雲間から勇壮な姿を表して、墨画ながら、しっかりと彩色された一枚です。
もう1点の《叭呵鳥》は、その目つきの悪い(笑)表情がキュートです。
絹本・墨画淡彩 山種美術館 |
《月四題》から「秋」と「春」が並びます |
菱田春草は《月四題》から春と秋の2点が。
胡粉や金泥を上品に使用し、凛としたたたずまいです。願わくば4点並ぶところが観たいもの。
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金地に、上下を大胆に切った松と絡む白藤がリズミカルに描かれた屏風は、琳派を彷彿とさせる装飾性を持っています。
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川合玉堂は、彼らしい農村の穏やかな風景を描いた《早乙女》。
俯瞰の視点で、大きく田んぼの一区画を切り取った構図は、これまでにない新しい試みです。
そして、小林古径の《清姫》からは4点。
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このたび修復されて、画面も活き活きとした色彩と輝きを取り戻し、久しぶりのお目見えです。
「寝所」「日高川」「鐘巻」「入相桜」。 |
ぜひ近寄って観てください!
愛しい安珍を追う清姫の髪は黄金色のオーラを纏っています。
思いの強さから龍に変じた彼女が、彼の隠れる鐘に巻きついた、その空気にも金泥が施され、迫力の画面になっていることが確認できます。
平面性と細やかな装飾性とがみごとに合致した、個人的にはいちおしの作品です。
このほか、あまり知られていませんが、渡辺省亭の《葡萄》《月に千鳥》が、精緻と大胆を兼ね合わせた巧みな筆で印象的です。
渡辺省亭 《葡萄》 19-20世紀(明治-大正時代) 絹本・彩色 山種美術館 |
渡辺省亭 《月に千鳥》 20世紀(明治-大正時代) 絹本・彩色 山種美術館 |
また、速水御舟《昆虫二題》の2点も、西洋画も研修し、自身の表現に活かしていったという彼の独特の画風を感じさせる秀作。
1928(昭和3)年頃 紙本・彩色 山種美術館 |
中村岳陵や松岡映丘らの合作《伊勢物語》では、美しい書とともに、かわいらしい絵物語を楽しめます。
山種美術館 |
落合朗風の《エバ》は、まるでフランス西洋画のルソーの作品のよう・・・。
鮮やかな植物の繁茂と異国風の女性像で、戦前の日本画とは思えない、不思議な世界を創っています。
第2章 戦後の東京画壇
戦後の日本画壇の復興は、終戦翌年には復活した日展から始まります。
ここからは、「日展三山」といわれた、東山魁夷、杉山寧、髙山辰雄をはじめとし、抽象的な表現や油彩のような絵具の厚み、内面的な主題など、それまでの日本画とは異なる表現や技法を試みて、未来への日本画の在り方を模索していきました。
同時に復活した院展からは、安田靫彦や前田青邨らが、従来の日本画の格調を引き継ぎつつも、時代に合った表現を創りあげていきます。
それらは、奥村土牛の大胆な構図と色彩や、小倉遊亀のそぎ落とした中に対象を印象的に配する画風を生み、平山郁夫や守屋多々志らの独自性へと広がります。
日展と院展の画家たちを中心に、戦後の東京画壇の軌跡と平成へと連なる変化を作品で確認します。
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モノトーンに押さえられた画面が、鳴門海峡の渦潮の勢いをあますところなく表します。
よく見ると、微妙に金泥が施されており、その微妙なニュアンスが、画面に独特の深さをもたらしていることが分かります。
大胆で勢いのある作品の印象が強い土牛ですが、その画面には緻密な工夫がなされているのです。
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雪に暮れる京の年の瀬が描かれます。
除夜の鐘の音が聞こえてきそうなしんしんとした年末の風情は、魁夷が得意とした青の階層で、みごとに表されています。
京都の四季を表す4点が一挙展示されています。京都が変わっていくことを憂いた川端康成の言葉に動かされて描かれたもの。
春(《春静》)と冬(《年暮る》)の作品が山種美術館所蔵となった際に、四季連作になる
よう、と初夏(《緑潤う》)と秋(《秋彩》)の作品が揮毫されたのだとか。
大観らに学び、戦後の日本画壇を引っ張った安田靫彦は、神話や歴史から題材を取った作品を得意としました。
その時代の文献や、遺されている遺物を徹底的に研究し、それらを実際の画面に反映させる彼の作品には、物語と史実とがみごとに昇華しています。
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戦に赴く信長が、好んだ「幸若舞」を舞うシーン。
背後に描かれる兜は実際にこの時代に流行した意匠、着用の小袖は、当時の武将が好んだデザインになっています。
このほか、実際の死体解剖の風景を、独自のたらしこみや淡い淡彩で描いた前田青邨の《腑分》、
激しい波しぶきの音が響きそうな加山又造の迫力の水墨《波濤》、
想像で描かれながらもいかにもそうであったかのように思わせる、迫真の肖像を生み出した片岡珠子《鳥文斎栄之》など、
多様化していく日本画の表現と画法を楽しめます。
左:橋本明治 《朝陽桜》 1970(昭和45)年 ともに紙本・彩色 山種美術館 |
また、皇居正殿の東廊下の杉戸のために描かれた作品に感銘を受けた種二が、安田靫彦、山口蓬春、橋本明治、東山魁夷、杉山寧に同種作品の揮毫を依頼したという中から、山口と橋本、杉山の作品も展示されます。
いずれも鮮やかな色彩と金泥、金箔などを使用した豪華で装飾的な作品。
日本美術が持つ、「空間を飾る」用途と、「画」としての存在が画面を埋める装飾性とも併存しているのを楽しめます。
さまざまな技法の工夫とテーマの開発で新たな日本画の道を切り拓いてきた過程を名作で追う東京編。
先の京都編と合わせたとき、日本画壇が切磋琢磨してきた歴史に、あなたは何を見つけるでしょうか。
【おまけ】
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エントランスのカフェでは、いつも展示作品のモティーフを活かした和菓子が楽しめます。
どの作品のどこが使われているのか、そのお味とともに楽しんでみては?
(penguin)
【開館50周年記念特別展】山種コレクション名作選Ⅳ
日本画の教科書 東京編 -大観、春草から土牛、魁夷へ-
会場 :山種美術館 (恵比寿)
〒150-0012 東京都渋谷区広尾 3-12-36
アクセス :JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分
恵比寿駅西口より日赤医療センター前行都バス(学06番)、「広尾高校前」下車、徒歩1分
渋谷駅東口ターミナル54番乗り場より日赤医療センター前行都バス(学03番)、
「東4丁目」下車、徒歩2分
開館時間 :10:00~17:00 入館は16:30まで
休館日 :毎週月曜日
入館料 : 一般 1,200円(1,000円)/大高生 900円(800円)
*( )内は20名以上の団体料金
*障がい者手帳、被爆者健康手帳の提示者および同伴者1名の料金は無料
*中学生以下無料
*きもの割引 会期中きものでご来館の方は団体料金になります
*リピーター割引 使用済み入場券(有料)のご提示で会期中の入館料が
団体料金になります(1枚につき1回限り有効)
お問い合わせ :Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)
公式ホームページはこちら
『 【開館50周年記念特別展】山種コレクション名作選Ⅳ
日本画の教科書 東京編 -大観、春草から土牛、魁夷へ-』
招待券を10名様へ!!(お一人様一枚)
応募多数の場合は抽選の上、
当選は発送をもって代えさせていただきます。
《申込締め切り 4月5日(水)》
お申し込みは、ticket@art-a-school.info まで
!!希望展覧会チケット名、お名前、送付先のご住所を忘れずに!!
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