洋上の小舟 | 湯浅玲子 An die Musik~音楽に寄せて

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音楽学・音楽評論に関する執筆活動と、
杉並区阿佐ヶ谷の楽典とソルフェージュ、楽曲分析のための音楽教室「アルス・ノーヴァ」をご紹介しています。

こんばんは。

 

いよいよ「猛暑」が到来しましたね。

すこし前ですが、ピアノ講師Sさんの発表会を聴きに行きました。普段、講師演奏のピアノをレッスンしています。

 

今年はラヴェル:洋上の小舟 《鏡》より

を演奏されました。

 

「洋上の小舟」は、以前、《水の戯れ》を弾いたときに、コロナ禍でホールでの発表会がかなわず、消化不良という感じだったようで、ラヴェル再挑戦、そして《水の戯れ》と同じような雰囲気の曲、と相談されたときに提案したうちの1曲でした。

 

ラヴェルといったら、まず最初に聴く、ペルルミュテール先生の演奏。

「洋上の小舟」は、同じ音型の続く箇所があり、何のイメージもないとエチュードのようになってしまいます。どのような波を作りたいのか、自分なりの情景を考えて音色の作り方を工夫していきました。

 

まずは、どんな小舟で、どんな海?という話から。

 

私はこの時代の「小舟」というと、定番かもしれませんが、モネの「舟遊び」がまず思い浮かびます。

ラヴェルのイメージした小舟もこのサイズに近いのではないかと(勝手に)思っています。

 

Sさんは、曲中すべてではないのですが、ある楽節について、

飛鳥Ⅱのクルーズに乗船した日、バルコニーに出て見た夜の海を思い出したそうなのです。

飛鳥Ⅱの夜の画像を探してきました!

 

ちなみに、飛鳥Ⅱの乗船中、BGMでこの「洋上の小舟」が流れていたそうです!

 

夜という時制は、私の想像になかったのですが、彼女は「飛鳥Ⅱの夜の海」をイメージしてから、演奏に落ち着きが出てきて表現に迷いがなくなりました。

 

ラヴェルが見たらびっくりのサイズの船ですが、時代も違うし、何を想像するかはある程度自由があってよいと思っています。

 

当日、ホールのスタインウェイ・ピアノで聴くラヴェルはやはり素敵でした。最後の一音まで集中を切らさず、音楽と対峙していたSさんに、心から拍手を贈りました!