小説『分岐点』:第5章「気持ち」 | 安浪蘭人には“愛”があるーArrow Land is “LOVE”.ー

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安浪蘭人(あろうらんど)です。人間ですが、作家、コピーライターもやってます。気ままにやりたいように生きられる幸せを噛み締めています。あなたに伝えたいコトは“ありがとう”!。これからも遊びに来てくださいね(^o^)v❣️

今夜も…、お逢いできて嬉しいです!

『分岐点』:第4章「失神」は、いか
がでしたか?たくさんの方がお読みく
ださって、本当に嬉しいと思っていま
す。ありがとうございます!

では、第5章「気持ち」をお送りしま
す。

お楽しみいただけたら幸いです
(^o^)v。





 『分岐点』 安浪蘭人


登場人物

 医大同級生の仲良し5人組
  武蔵野女子医科大学医学部出身の
  仲良し5人組で年齢は34~35歳。
    
  谷口 真由(たにぐち まゆ)
   大学内科の勤務医。独身。
   本作のヒロイン。初体験でいい
   経験を積む。新たに心の問題を
   感じ始める…。
  吉田 奏 (よしだ かなで)
   クリニック経営者兼婦人科医。
   バツイチ。先日、潮吹きを経験。
   真由の初体験をプロデュース。
  山本 由美(やまもと ゆみ)
   公立病院の耳鼻咽喉科医。独身
   だが、恋人は居る。
  西内 一美(にしうち かずみ)
   東京の地元医院で内科勤務医。
   結婚しているが…。
  王塁 未来(おうるい みき)
   大学眼科の勤務医。彼は何人か
   居る。

  古里 太一(ふるさと たいち)
   ひょんなコトから吉田奏と出逢
   う。本作の主人公の一人。


 第5章 「気持ち」

昨日の夕方までの私と、今の私とは明
らかに別人だ。改めて強烈にそう意識
する。

オンナになった。心もカラダもオンナ
になった。オトコに対する気持ちが、
今までは感じたコトのなかった執着と
して芽生えた。他の男性とタイチは、
私の中で全く違う存在になった。

さっきまで全く知らなかったオトコな
のに、今では私の全てを知っている男
のように感じる。私はタイチのコトを
まだ知ってるとは言えないのかも知れ
ないが、心とカラダが気持ちよくつな
がる相手であるコトは知っている。

そう言えば、気持ちいい、って言うの
に、心いい、とは言わない。気持ち、
と、心、とは別物なんだ。そんなコト
を思ってタイチにそう言ってみた。

「あははは。気持ちいいっていうのは
気持ちよいってコトだよね?それなら
こころよい、とは言うよ。心が良いと
は書かずに、『かい』っていう字の快
いって書くけどね」

ああ、タイチの方が一枚上手だ。その
通りだ、と思う。少し癪だなあ…と思
って、

「じゃあ、気持ちと心は同じなの?」

と言ってみた。タイチは、

「気持ちと心。言葉が違うんだから細
かいニュアンスは違うと思うよ。でも
気持ちいい、と快いは、ほぼ同じ意味
だと思う」

完璧な答え、だと思った。私はタイチ
に少し拗ねたような感じで、

「ああ、私のすべてを知られてしまっ
た人なのに、冷たい…」

と 独り言のように呟いたら、意外な
反応が返って来た。

「いや、まだ何も知らないよ。ほんの
少しだけ、マユの素顔は覗けたけど、
マユの全てなんて、ほとんど知らない
よ」

タイチは本当にそう思っているらしい。
当たり前のように、そう言った。私は
少し不満だった。

「あんなに私の全てを理解してくれた
クセに、そういうツレないコトを言う
んだ…」

そう言ったら、タイチはふっふと笑っ
て、こう言った。

「いやいや、本当にほんの一部しか知
らないよ。じゃあ、例えば…」

そう言って、少し意地悪な顔をした。

「俺はマユのカラダを知ってるって思
ってるようだから敢えて言うけど、マ
ユを俺の素手でしか愛していないだろ
う?ローターもバイブも電マも電動歯
ブラシさえも使っていないんだ。マユ
が何でどれくらい狂うかなんて、全く
知らない…。しかも裸で抱き合ったん
だ。素肌にストッキングを破いたら、
どれくらい感じるのか、服を裂いたら
どう感じるのか、ベッド以外の所で抱
いたら、どう乱れるのか、何にも知ら
ないんだよ。バックで突いたらどう乱
れるのか、騎乗位ならどうか…とか、
知ってるコトなんて、さっきのコト以
外、何もない。さらには生理中はどう
なるのか、排卵時期近辺と平常時では
どう変わるのか、本当に知らないコト
ばかりだ。俺はマユを知ってるなんて
とても言えないのがよくわかるだろう」

…正直に言う。タイチにこう言われて
る瞬間、私は気が遠くなりそうになっ
ていた。この人の性に関する引き出し
は、滅茶苦茶広くて深くて大きいんだ。
それこそが私が魅かれた1番の大きな
理由なのかも知れない。いや、奏もそ
こに魅かれてるのかも知れない。

「それ、全部、やって見せてよ。そう
したら、私のコト、少しは解ったって
言ってくれるようになるんだよね?生
理中も、24時間マラソンセックスも、
タイチがしたいと思うコトなら何でも
していいから、私のコト、1番解って
くれるオトコで居て欲しいの」

タイチは、裸のままの私を思いっきり
抱き締めた。そして、すごく優しくキ
スをすると、私の肩をつかんでカラダ
を離し、私の目をジッと見て、

「マユは、同世代か自分より若い世代
から本当にいいオトコを見つけて、そ
のオトコと一緒に自分の性に関するい
ろいろなわがままをチューニングして、
満足を知るコトを覚えるのが1番幸せ
だと思うよ。じーさんは、いつでも勃
つとは限らなくなるんだ。マユはこれ
から脂が乗り切る時期に向かう。いつ
でも抱き合えるオトコが幸せの最低条
件だと思う…」

この人、きっと本当に優しいんだと感
じる。でも、私も必死だった。

「タイチがいいの。ひよこは初めて見
たモノを母親だと思うって言うじゃな
い?私にとって、タイチはオトコなの。
初めて知ったオトコであると同時に、
私の中でオトコそのモノなの。だから
代わりの人じゃダメなの。他の女性と
の関係は今まで通りでいいから、私と
も付き合って。お願い!」

奏が申し訳なさそうにタイチに言った。

「太一、ごめんね。面倒臭くなっちゃ
ったコトは謝ります。でも、もし、真
由を彼女の一人に加えるなら、私も入
れてね。真由だけって言ったら、私は
許せないと思う…」

タイチは、私と奏を両方見ながら、

「どちらとも付き合わないから安心し
てくれ。ふたりとも、物凄く魅力的な
女性だから気持ちは揺れ動くけど、俺
じゃあ、満足させ続けるのは無理だか
ら…」

そう言って、私の髪を撫でてくれた…。

私は何かを言いたいのに何を言ったら
いいのかがよくわからなかった。奏が
言う。

「勃つか勃たないかなんて、どうでも
いいの。それこそ、そういう時はバイ
ブだって、電マだっていい。おもちゃ
を使えばいいじゃない。でも、あなた
には指や舌があるし、何より私達の気
持ちいいコトを一緒に感じるセンサー
が付いている。それが1番大切だって
気付かせてくれたのは太一だよ。だか
ら、たまにでいいから、こうやって逢
いたいの。だめ?」

タイチは悩んでいる…。さっきから何
も言わない。奏が追い打ちをかける。

「真由だって、最初に独占したいなん
て言わないって約束したんだから独り
占めしたいなんて言わないよ。私も言
わない。奥さんは愛してあげて。でも
たまに、私達にも潤いを分けて。今夜
みたいな時間をたまに頂戴。それだけ
だよ。もちろん、こういう時間は私達
がお金は出すから…。太一はカラダだ
け来てくれればいい。ね?いいでしょ
う?」

私も一緒に頭を下げた。この関係がな
くなるのはイヤだと思ったから…。だ
から自分に素直になって言ってみた。

「愛して欲しいなんて望まない。だか
ら、あなたの余った時間を私達に振り
向けてくれないかな?あなたが好きな
ように、自由にしててくれて構わない。
私はタイチの言う通りにする。それで
もダメ?」

タイチは、私のコトを不思議な顔をし
て眺めていたが、優しい顔になって言
った。

「ふたりとも、俺のコトを必要だって
言ってくれてありがとう。こんなにい
いオンナ達に求めてもらうのは男冥利
に尽きるよ。でもね…」

タイチはそう言うと、バスタオルを腰
に巻いて、ソファーに座って言った。

「マユにも、奏にも、無理せず付き合
えるステディーが必要だと思う。自分
を押し殺して相手に合わせる関係なん
て、自分のコトが嫌いになってしまう
よ。自由に付き合うコトが男女間でも
同性間でも最低限必要なんだ」

そう言って、コーヒーを淹れようとし
始めたのを、一美が「私が淹れますか
ら…」と、人数分のコーヒーを淹れて
くれた。私もバスタオルを巻いて、テ
ーブルのコーヒーカップに手を伸ばし
た。

「マユ…」

タイチが私の顔を見て、言った。

「俺の言う通りになんかしなくていい
んだよ。男と女が1番楽しいのは、ど
ちらも好き勝手言える関係しかないん
だよ。俺はね、こんなふうに思うんだ」

そう言って、穏やかな表情を見せてく
れた。

「例えば、オトコがオンナに『おまえ
はドMだね』っていう場合、このカッ
プルは、近いうちにうまく行かなくな
るか、別れるかだろうなあ…と思う。
どうしてかって言うと、ふたりの関係
性を固定化させようとしているからだ。
ドMになれるオンナは女王様になった
って魅力的だよ。ドSになれ、って言
っても難しいかも知れないけど、『お
まえは今日は女王様になって俺をイジ
メてみろ。俺の命令だから聞けるな』
と言われれば、どSの命令は聞きなれ
てる訳だから、女王様としての態度は
立派なモノになる筈だよね?つまり、
オトコとオンナは常に50vs50(フィ
フティー・フィフティー)だと思わな
いか?先刻のマユと俺だって50vs50
だから気持ちよかったとは思わないか
い?だとしたら、自分から相手の言う
通りにするから時間をちょうだいなん
て言ったらイケないよ。自分から自由
を奪って、って言ってるようなもんだ
ろう?」

奏がタイチを好きになってしまったの
がよくわかる。私も、タイチのコトが
どんどん好きになって行く。タイチの
言う通りだと思う。でも…。

「なんでも言うコトを訊くから付き合
って、って言うのは本音だよ。だって
若い人で、タイチみたいに全てで尊敬
出来る相手なんて見つからないと思う
もん。たぶん、タイチには何でも言う
コトを訊くからって言っても、付き合
ってくれたら50vs50で付き合ってく
れるって言う信頼感があるのかも知れ
ない。でも、失いたくないっていう気
持ちが強過ぎて、自由をなくしてもタ
イチを失いたくないんだよ。その気持
ちはわかってよ」

私は今の精一杯の心を込めて、そう言
った。勝手に涙が頬を伝う。どうして
こんなに失いたくない、と感じるんだ
ろう…?。昨日の夕方まで知らなかっ
た人なのに…。奏が口を開いた。

「例えば、太一が私の自由を奪いたい
って思って、縛ったり目隠ししたりし
ても、私は全然平気だよ。太一のする
コトなら信じてカラダを任せることが
出来る。きっと、真由が言いたいのも
そういうコトだろうと思うんだ。相手
を手放しで信じられるって感覚はその
人と関係してみないとわからないコト
だと思うんだ…」

そこまで言うと、未来が久しぶりに割
って入った。

「ちょっと待って。関係しなくてもわ
かるわよ。もし、ふたりと付き合おう
っていう話になったら、あたしも入れ
てって言おうと思ってたんだから…」

由美も一美もうなづいている。奏が、
一美に向かって、

「あんたにはご主人がいるでしょう?
なに言ってんのよ!」

と文句を言った。一美が言い返す。

「まあ、言ってくれるわね。あんなの
見せられて、私は夫が居るからなんて
いう訳ないじゃない。古里さんは妻子
持ちなのに、その人を奪い合ってて、
よくそういう道徳的な排除をしようっ
て思い付くわね。信じられない!」

未来が、「まあまあ…」と間に割って
入る。タイチが一美に話しかけた。

「さっき、訊かれたコトなんだけど…。
マユに愛情が湧いたからできたって答
えたよね?それは本当のコトだし、マ
ユは愛すべき女性だからそうなって当
然だと思うんだけど、例えばソープラ
ンドに行く男は愛情が無くても排泄と
同じように女性と出来るから行く訳だ
よね?だから、ああいう出逢い方なの
に愛情を持って抱き合えたのは、マユ
がいいオンナだったから、っていうコ
トだと思うんだ。逆に目の前であんな
行為を延々と見せられた一美さんや由
美さんが、排泄の延長でオトコとした
くなっても無理ないよねー」

一美と由美が、ほぼ同時に「違う!」
って言った。一美が、

「実は、もっと煽情的なモノだと思っ
てた。綺麗な処女喪失なんてないと思
ってたし、あんな出逢い方で愛情たっ
ぷりの行為が見られるなんて思ってな
かった。始まってみたら、私がこんな
初めてだったらどんな人生を送れただ
ろうって羨ましくて涙が出そうになっ
た。こんな所で感動するなんて思って
もみなかったから、真由が心から幸せ
だろうなって思ったの。私も古里さん
と一度寝てみたら、もっと自分を解放
出来るようになるんじゃないかな?っ
て少し想像しちゃった…」

そう言うと、由美も、

「私もだいたい同じ。人の行為を直接
見たのは初めてだったけど、こんなに
エロくて愛情たっぷりで気持ち良さそ
うなのは反則だよなあ…と思った」

未来が、奏に言った。

「奏が真由を選んだのはナイスな人選
だと思ったのと同時に、もしあたしが
選ばれてたら、どんなに気持ちよかっ
ただろう…って悔しかった。そういう
経験だったと思う。みんな、そう思っ
たの。誰が悪いとか、誰がいいってい
う話じゃなくて、みんな自分の経験と
比べてみて、自分の経験の内容の貧し
さに震えたんだよ。オンナの快感をオ
トコが自分のコトのように感じてくれ
る関係を作れる相手なんて見つかるん
だろうか、ってむしろ不安でいっぱい
になったんだと思う。だから、古里さ
んと関係を持って、そういう経験を実
現して欲しい、って思ったんだ…」

奏はみんなに頭を下げて謝った。

「みんな、ごめん…。私、太一を繋ぎ
止めるのに必死だった。太一は私とは
もうしてくれないんじゃないか?って
思ってた。真由の話は衝撃的だったか
ら、今まで知らないまま生きて来たの
は可哀想過ぎると思ったの。だから、
渡りに船って思った。でも、私一人に
見せて、とは言えなくて、みんなを巻
き込んでしまった。本当にごめんなさ
い…」

私はいたたまれなくなって、口を開い
た。

「私は感謝してるよ。ただ、奏と違っ
て諦めが悪いと思う。だって、初めて
だったんだもん。タイチ以外に比べる
経験がないんだから、タイチが全てな
の。それが全てなら、諦めようがない
でしょう?」

みんなの気持ちが一通り出た。それを
聞いていたタイチが、やっと口を開い
た。

「みんな、ありがとう。俺は幸せ者な
んだろうな。そんなに言ってもらえて
嬉しさ半分、戸惑い半分だなあ…。た
まに逢うのは構わないよ。でも、カラ
ダの関係を前提としてだと期待に応え
られない日だって出て来ると思うから
今日は誰と…みたいな逢い方なら断ら
ないとイケない。いろいろ相談されて、
俺がわかる範囲で答えるコトくらいな
ら出来るだろうけど、それじゃダメな
のかな?」

みんながそれぞれに返事をした。

「ダメじゃないよ」
「それでいいよ」
「また逢えるなら嬉しい」
「これからも逢えるんだね?」

私はみんなと一緒にこう言った。

「それで充分だよ」

奏の気持ちが手に取るように理解でき
た。逢えたら、また何かが始まるかも
知れない。私が付き合って欲しいって
強引に言ったのが、トラブルを引き起
こした原因なのかも知れない。

心とカラダは表裏一体なのかも知れな
いなあ…と思った。カラダがトリガー
になって、心に火がついたり、心の不
安で肌の温もりが恋しくなったりする
のかも知れない。

私って、こんなに自信のない子だった
んだなあ…と、少し自嘲気味に笑って
みた。タイチが、私の顔を見て、

「どうした?マユ…」

と言った。そうか…。今の、私も奏も
自分のコトばかりだから自信がなくな
ってるんだ。相手のコト、回りのコト
に少し意識を向けてみよう。そうすれ
ば、人との距離感が取りやすくなるの
かも知れない…。

私はオトコと距離がゼロになったのが
初めてだったから、どうしたらいいの
かわからなくなったんだろうか?少し
だけでいいから、今、1人になりたい
なあ…。そんなコトを考えていた…。





次回は、9月12日(日)に

 第6章 「カラダ」

を、お送りする予定です。

乞うご期待!



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