創作小説「アゲハ」シリーズ公開中! -3ページ目

創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



輝人「ふぅ、ただいま」

ネクロ研究センターから探偵事務所に戻ってきた
輝人は、自分の椅子に座る
栗栖はまだ手術をしたばかりで、病院にいる

輝人(…あいつがいないと、ここまで静かなんだな)

普段味わえない栗栖の存在と言うありがたみを知る
栗栖の事を待つため、少しでも仕事をこなそうとパソコンに眼を向ける
すると、彩耶華のファイルが眼に入った

輝人「あ、そういやあいつから依頼を受けていたんだった。また忘れていたーなんてことになったら、日奈子にブッ飛ばされるな。改めて眼を通しておくか」

そう呟き、ファイルをクリックする
彩耶華には以前、アゲハ族の事を黙ってもらう代わりに、自分の両親を殺した犯人を探して欲しいと依頼されていた
ここ最近事件もあって、手をつけずにいたが、改めて眼を通すことにした
もちろん、彩耶華に頼まれて、事前に資料はかき集めていた

輝人「…あれ?」

そのかき集めた資料の中の、とある写真を見た
彩耶華の両親の焼死体だ
その焼死体には、見覚えがあった

輝人「…この焼死体、さっき見たやつと同じだ…!」

焼死体の状態が、先程ネクロ研究センターで見たものと同じだった
偶然の可能性もあったが、新聞の文章も眼に入る

『当日は記録的猛暑日だと観測され…』
『プールは1滴も水がなく…』

この文章を見て、先程のネクロ研究センターで自分が考えたネクロのアビリティを思い出す
“天気(ウェザー)”のアビリティなら、殺人が可能だ

輝人「…まさか、この犯人って…!」

今回の中国で起きた警察官殺人事件、そして彩耶華の両親を殺した犯人が同一人物だと確信した





名古屋にあるショッピングモール
そこの本屋前では、漫画家の『New堂雲』こと、星浦綺堂のサイン会が行われていた

「わぁ~!サインありがとうございます!」
「いつも泣けてきちゃって…!」
「この前サインもらえなかったので、嬉しいです!」

綺堂「ありがとうございます」

綺堂は色紙を貰うと、サインを次々に書いていく
その様子を、到着した彩耶華とコバルトは見ていた

コバルト「…思ったよりおっさんだな」

彩耶華「ちょっと、失礼ですわよ?」

コバルト「だってこんな絵を描くのに、実はおっさんでしたとか、嬉しくないギャップだね」

彩耶華「嬉しくないのは、アビリティだけにして欲しいですわね」

綺堂がネクロではないかと疑い、とりあえずサイン会が終わるまで待つ
他の一般人を巻き込みたくない
だが思ったより長い行列が出来ており、時間がかかりそうだ
綺堂の顔が見える範囲まで近寄る

コバルト「これはかかりそうだね、どーする?」

彩耶華「どうすると言われましても…」

スタッフ「お客様、ファンの方ですか?」

彩耶華「!」

そこに本屋のスタッフが声をかけてきた
列に並ばずに眺めているので、気になったのだろうすぐに彩耶華は否定するが、それは綺堂の眼にも入る

綺堂「…?」

彩耶華「な、なんでもありませんから。では…!」

彩耶華はその場をすぐに去ろうとする
ここにいてはかえって目立ってしまう
するとその拍子に、彩耶華の鞄から何かが落ちる
それは、学生証だった
その学生証は、綺堂のところに滑ってしまう

綺堂「…!おや」

彩耶華「あっ、す、すみません…!」

コバルト「もー何やってんの」

彩耶華は学生証を拾おうと、綺堂のところへ歩み寄る
綺堂は一旦サイン会を中断し、学生証に手を伸ばす
彩耶華の写真と、名前を見てしまった

綺堂「…!」

彩耶華「すみません…っ」

彩耶華はすぐ学生証を手にし、鞄にしまい、その場をすぐ去ろうとする
その時、綺堂が声をかけた

綺堂「…貴方、財前彩耶華さん?」

彩耶華「!…え?」

綺堂「“財前スポーツ”のご令嬢…だよね?」

彩耶華「…!」

“財前スポーツ”とは、彩耶華の両親の会社だ
彩耶華はその会社のご令嬢だが、両親が亡くなって、遺産は凍結、彩耶華はご令嬢では無くなった
だが、何故目の前の漫画家が自分の事を知っているのか、気になって立ち止まった

コバルト「…」

彩耶華「…貴方、何故その事をご存知ですの?」

綺堂「どうしてかって?決まってるじゃないか」

綺堂はそう言うと立ち上がり、彩耶華の顔を見る
彩耶華とコバルトの顔は警戒に満ちた顔、一方の綺堂からは殺気を感じた

そして、綺堂の口からとんでもない台詞が出た








綺堂「…君の両親を殺したのは、私だからだ」

彩耶華「…!」