真アゲハ ~第78話 竜生九子10~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



楊「…クソッ、まだ追ってくるか…!」

光「待て!」

楊に巧の鞄と飛の特殊警棒を再び奪われ、光がいち早く追いかけている
逃げた先は、ショッピングモールの折り返し地点にある、旧服屋だ
商品の服はないものの、残された陳列棚に試着室、マネキンなどが置いてある

楊「…とうっ」

床を蹴り上げてジャンプし、楊は陳列棚の上に上がる
上を利用して、逃げる気だ

楊「ここなら高インパラ」

棚の上を走り、渡る
高い場所なら、追いかけてくる光の姿も確認出来るので、すぐに逃げられる
棚が近くに無ければ、試着室の上に乗れば良いだけだ

楊「さて、奴は……ってあれ?」

光の居場所を確認しようと、試着室の上に上がり、後ろを振り返るが、どこにもいない

楊「降り切れたかな?」

?「どこ見てんだよ」

楊「!」

楊の真下から声が聞こえたが、その時には遅かった
足元に光がいた、光が強い蹴りで、試着室を倒したのだ

楊「う……おおお!?」

試着室が倒される前に、楊は飛び上がる
しかしそれを光は狙っていた

光「獣人術“ガゼル”型 ガゼルノ角!」

バキッ!

楊「ガハッ!」

空中なら身動きが取れないため、光が楊の腹に蹴りを入れた
楊は腹にダメージを受けただけでなく、床に背中を叩きつけられた

パシッ!

光「返してもらうぞ」

叩きつけられたと同時に、楊の手から巧の鞄と飛の特殊警棒が離れた
光がすぐにキャッチする

楊「くぅ…!」

飛「兄貴!」

そこに遅れて飛達が駆けつけた
光が手にしている鞄と特殊警棒を受け取り、満面の笑みを見せる

巧「やった!良かったぁ~~…!」

飛「フゥ~~!やっぱこれでなきゃな!」

華「良かったわね、2人とも!」

雪「…!光兄!」

光「え?」

雪が突然声を上げる
振り返ると、楊が脚を伸ばして、光に攻撃を仕掛けた

楊「“我流”獣人術“インパラ”型 インパラノ爪!」

光「獣人術“ガゼル”型 ガゼルノ爪!」

光はそれを自身の獣人術で受け止めた
その瞬間、楊と光の脚技がぶつかり合う
どちらも引きを取らない

イジュン「お~、楊の技にはいつも惚れ惚れするのぉ」

飛「と言うか…」

華「なんだか2人の技…」

光と楊の攻撃を見て、その場にいた全員は気付く
2人の攻撃が、獣人術が良く似ているのだ
技が似てたりと言うのは、“龍の一族”の者同士の獣人術なら良くある事だ
だが楊は違う、我流だ
我流でここまで素早く、技も同じように出来るなんて考えられない

光「ハァッ…!ハァッ…!」

楊「フゥ…なかなかやるな」

光「それはこっちの台詞だ。お前こそその技は…!」

「何故真似が出来る?」そう聞こうとした
だがそう聞く前に、楊の口が開く

楊「お前の方こそ、パクるな」

光「…は?」

楊「インパラとガゼル、似たような動物だからって、俺の技をパクるな。不愉快ンパラ」

光「…はぁぁ?」

何と、同じ理由は光が楊の“我流”獣人術をパクったと難癖をつけてきたのだ
普通は逆のハズだ
その場にいた光と、飛達は呆れた

楊「俺の方が強インパラ。偽物なんかに負けなインパラ」

雪「…偽物?」

巧「いやどー見たってあんたの方がパクりでしょ」

楊「とっととその技止めるなら許してやる。お前の技は偽物過ぎて酷インパ」

光「獣人術“ガゼル”型 ガゼルノ蹴」

バキッ!

楊「グハッ!」

イジュン「楊!」

楊が言い終わる直前、光が膝蹴りを楊の顔面に入れた
もろに喰らい、頭がクラクラする

楊「…なっ、何をする…!」

光「インパラインパラうるせぇんだよ。俺の方がパクりだぁ?本家の獣人術舐めてると、お前殺すよ?マジで(-_-#」

イジュン「ヒエッ(・・;」

楊とイジュンは光の顔を見るが、その顔はとても怖かった
般若のような顔と言うのは、こう言うことだろう

雪(…光兄、滅茶苦茶怒っている…)

飛(優しい人程怒ると怖いって…この事だな(・・;)