真アゲハ ~第78話 竜生九子9~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



ラム『…っう…!』

張からスカウトされたラムは、指2本を猛毒の指にするため、多種多様の生き物の猛毒を調合した物にに指を入れて、毒を慣れさせた
これは、“龍の一族”の4男・毒(ドゥ)が行った方法だ

ラムは毒の使いになるために、毒慣れをしているのだが、やはり苦痛だ
下手すれば自分が猛毒で死ぬかもしれないと言うのに、痛みに耐えて、指2本だけを毒の指にしているのだ

張『…見事な色になってきましたね』

ラム『うっ…も、もうダメだ…!』

張が様子を見に行くと、ラムは毒から指を抜く
時間をかけたおかげで、ラムの人差し指と中指は、紫がかってきた

ラム『ハァッ…!ハァッ…!』

張『あと少しですよ。毒慣れをすれば、“龍の一族”に勝てます』

ラム『こ、ここまでやるかぁ…!?技を鍛えた方がよっぽどダメージを与えられるんじゃないのか…?』

張『確かに。ですが、人間の身体はそれだけが武器になるとは限りません。指先だって、立派な武器になるんです』

ラム『武器…?』

張『爪を伸ばせば人を傷付けることも出来ますし、目を抉る事だって出来ます。指先も立派な武器…いや、拳を得意とする人間にとって、指先は立派な暗器になります。想像してみてください。拳が武器だと思っていた人物が、突然指で腹を抉ってきた、刺してきたと相手を騙し、命を取る瞬間を…』

ラム『なるほどな…悪くない』

張『イジュンや楊も、それぞれの獣人術に合った特別な訓練を積んでいます。少し時間があれば指2本で人を殺せるほどの猛毒が出来ますが、“龍の一族”は簡単には殺られない。少しの間倒れるくらいの毒は出来るでしょう。頑張ってくださいね』





ラム「コモドオオトカゲって知ってるか?全長2mはあるほどのインドネシア等に生息する大きな黒いトカゲだ。そのトカゲは20㎞の速度で走り、獲物を仕留める。歯には毒があり、その毒を受けて助かる動物はいない。まずは“ジャガー”を1匹、仕留めたぜ」

昴「ぐぅ…!」

炎「てめぇ…!」

ラムが毒慣れをして出来た2本の指を知らずに受けてしまった昴は、青くなっていく
このままでは昴は最悪死んでしまう
ラムがズボンのポケットから、小さな小瓶を取り出す
そこには白い液体が入っていた

ラム「安心しろよ、ここに張さん特製の解毒剤がある。これを飲ませれば毒は完全に消える」

老「こいつ…!」

炎「張?…なるほど、やはりそうか」

ラムの口から張の名前を聞いて、炎は確信した
竜生九子の3人は“羅刹天ーラクシャーサー”に関係していた

炎「貴様、“羅刹天ーラクシャーサー”の人間か」

ラム「お?もう分かったか」

老「何?…まさか俺らの実家を襲った奴らの仲間か!?」

炎「飛や巧が襲われた時点で、妙だと思った。それに雪が通っている学校にDVDが届くなんて、調べているに違いないと思ったからな」

ラム「やっぱり賢い奴だな、龍 炎。張さんから話を聞いた通りだ。と言っても後からスカウトされたんだがな。俺らも、お前らに復讐するために手を組んだだけなんだが」

老「何?」

炎「あのクソ親父、どこまで迷惑かけたんだよ…!」

ラム「本当は全員殺したかったが、ここに来たのは全員じゃ無いみたいだし。まぁ、強そうな奴らを殺せば、後はガキだけだから楽だぜ」

老「ハッ、舐められたもんだな。“我流”とか名乗る奴らが、本家に勝てるわけがねぇだろ」

ラム「それが今日、覆す事になるぜ!」

解毒剤をポケットにしまうと、ラムは両手を大きく広げ、独楽のように回りだした
素早く回りだし、炎と老の元に迫ってくる

ラム「“我流”獣人術“トカゲ”型 “獲離魔鬼(エリマキ)”!」

ラムが回り続ける事で、風が吹き出す
大きな竜巻になったと思った瞬間、炎の頬を何かがかすった
それは、鋭利な刃物のような物で、炎の頬を切った

炎「…!まずい!避けろ!」

老「は?うわぁっ!」

ズバッ!ズバッ!ズバッ!ズバッ!ズバッ!

斬れる刃物は持っていないハズなのに、飛んでくる刃が強い
大きさは小さいものだが、こう何発も放って来ていては、ダメージが多い
炎と老はギリギリのところを避ける

炎「昴!」

昴「っ…!」

動けない昴を担ぎ上げ、飛んでくる刃物が届かない場所へ避難する

昴「すまないねぇ…、情けないねぇ…」

炎「気にするな」

老「くそ…!酒さえあればな…!」

星「兄ちゃん!」

可「ただいまくるりん」

老「!」

するとそこに離れた場所にいたはずの星と可が帰ってきた
可の手には何か瓶がある
だが今来ては、危険すぎる
刃物が飛んでいるのだ

老「バカ来るな!危ないぞ!」

星「え?」

ラム「…ハァッ…ハァッ…!」

その時、ラムの動きが止まった
眼が回ってしまったのだろう、ふらふらだ
同時に風も鋭い刃物も止んでしまった

老「お?止んだか…!お前らこっちに来い!」

可「は~い」

炎「…今だ!」

止んだことを確認すると、炎は走り出す
床に落ちている昴の鉄棒を持ち、ふらついているラムの頭に向けて、振り上げる

バキッ!

ラム「ってぇ!」

炎「…どうやら終わった後の対策はしてないみたいだな」

昴の鉄棒は重いが、普段鍛えている炎にとって大したこと無い
棍の様に持ち直す

炎「昴、借りるぜ。解毒剤と一緒に返す」

昴「……好きにするといいねぇ」

ラム「いでぇな…!頭を強く叩きやがって…!」

炎「とっとと解毒剤、渡してもらおうか?」

頭を押さえるラムに向け、獲物を狙う虎の様な鋭い眼を見せる

ラム「……嫌だと言ったら?」

炎「“虎”がお前を食ってやるよ」