真アゲハ ~第73話 天雨 克幸6~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



克幸が千鳥工業高等学校に入って数分が経った
中で何が行われているのか分からないため、心配だ

鮮斗「うぅ…っ」

輝人「…何も起きないな…」

亜季「…!誰か出てきたぞ!」

その時、校舎から1人出てきた
教師の厚木だ
腕を押さえながら、歩いていく
厚木が出てきたことで、野次馬達は騒ぎ出す

教師「厚木先生!その腕は…!?」

厚木「…奴らに、撃たれまして…」

犬渕「酷い怪我だ、すぐに救急車を手配します!」

厚木の状態を見て、犬渕はスマホを耳に当てる
それより気になるのは、克幸の事だ
克幸の姿がないため、烏丸は話を聞く

亜季「あの…天雨克幸くんは?」

厚木「…私の代わりに…人質に…」

亜季「なっ!?」

輝人「なんだって!?」

近くにいた輝人達も驚く
千晴達の耳にも入った

優里亜「そんなっ…!」

小真知「あのバカ、無茶を…!」

千晴「っ…」

鮮斗「あ?なんで克幸様がいないんだ?炎、どうなってる?」

通信機を使って、鮮斗は炎に連絡をする
炎は“千里眼(clairvoyance)”が入った双眼鏡で体育館内を確認する

炎『…今出てきた教師と入れ替わったみたいだ』

鮮斗「はぁ!?」

サミュエル「人質交換…ってこと?」

怪我を負った厚木に代わって、克幸は自ら人質になると言い出した
これには鮮斗も驚きだ

鮮斗(くそぉ…!どーすりゃいいんだよ…!このままじゃ克幸様が…!もし、もし“奥様”の時みたいな事になったら…!)

歯を食い縛り、打開策を何か考えるが、それと同時に思い出したくもない記憶を思い出してしまう

炎「…ここまでか」

“千里眼(clairvoyance)”の効果が切れてしまったのだろう、体育館内を見ることが出来なくなってしまった
中の様子も確認できず、どうすればいいかと考えていた時だった

彩耶華「…ん?」

彩耶華のスマホに、日奈子から連絡があった

彩耶華「日奈子さん?」

日奈子『彩耶華、今どこにいる?千鳥工業高等学校で、大変なことが起きてるんだよ…!』

彩耶華「えぇ…実は私もその現場にいますわ」

日奈子『やっぱり…!もしかして、炎さんも?』

彩耶華「いますわ」

炎「…?」

輝人『繋がったか?代わってくれ』

日奈子『う、うん…!』

すると電話越しで、日奈子が輝人に代わった
輝人は電話をする

輝人『彩耶華、そこに炎以外のネクロハンターがいるのか?』

彩耶華「え、えぇ…」

輝人『まぁこんな状況じゃ、駆けつけない訳ねぇよな。事情も知ってると思うが…千鳥工業高等学校には“烈怒羅夢”がいる。幹部のほとんどがネクロだ。さらに言えば、うちのゆにが、人質としているんだよ』

彩耶華「それは…ご存知ですわ。炎先輩から聞いて…」

炎「おい、代われ」

彩耶華からスマホを取り、炎が輝人と電話をする

炎「さっきから何が言いたいんだ?」

輝人『チッ、炎か…』

炎「舌打ちすんなら切るぞ?」

輝人『待て待て、状況とかはお前の方が分かってるよな?体育館の中、見えたか?』

炎「…さっきまではな。もう電池切れだ」

輝人『ならOKだ。単刀直入に言うが…これから“烈怒羅夢”を潰さないか?』

炎「なんだと?」

コバルト「ん?ねぇ、さっきから誰と電話してるの?」

輝人『丁度良いや、他のネクロハンターにも繋げてくれねぇか?』

炎「…?」





ギュッ…!

円「おらよ」

克幸「くっ!」

一方の体育館
厚木と入れ替わった克幸は、後ろ手の状態で結束バンドを巻かれ、拘束されてしまった
円に突き飛ばされる
何とか2年生の生徒達が受け止めてくれた様で、怪我はない

「会長!」
「大丈夫ですか!?」

克幸「あぁ…平気だ」

「すいません会長…!俺達のせいでこんなことに…!」

克幸「気にするな。そうだ、兄貴がお前の事心配していた。もう少しの辛抱だから、頑張れよ」

「兄貴が…?は、はい…!」

真緒「会長…っ」

克幸「…!」

2年生の生徒達を見回すと、真緒とゆにと眼が合った
首に付けられている爆弾に気付く

克幸(あれがさっき警察が呟いていた爆弾か…!なんて奴らだ…!)

拘束されて無かったら、円の顔をぶん殴ってやりたい気分だ
悟られないように、怒りを抑える

鹿島「ほら、食事だ」

2年生の生徒達の拘束が外されると、同時に克幸が持ってきた水と食料が提供された
ダイエット商品の乾パンみたいな物だ

千種「食欲無いなぁ…」

飛鳥「こんな状況で食べたくないね…」

真緒「…皆さん食べましょう。贅沢は言ってられませんよ」

ゆに「うぅ…首痛いよ…」

克幸「皆、喉が通らないかも知れないが、力をつけてくれ」

克幸は拘束されたまま、2年生の生徒達を励ます

丸原「円さん、あいつにも爆弾付けます?」

円「いーやいいよ、それより黒羽まだなのか?」

丸原「あ、か、確認して来ますね…」

円の目付きが怖いのか、丸原は体育館を離れる

宗方「俺も行く、気分転換だ」

と、宗方も体育館から離れる
それを見た円はフゥ…とため息をつき、時計を確認する
もう夜になっていた

円(黒羽が来たら、来海を殺したことを償わせてやる。そしたらこいつらは…)

克幸「……」