真アゲハ ~第73話 天雨 克幸2~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



夕方に差し掛かってきた
千鳥工業高等学校の前には、警察がバリケードを張って、中に部外者を1人も入れさせないようにした

「何々?なんか事件?」
「鳥校に強盗だとよ」
「生徒が人質にされてるみたいだぜ?」
「え?マジで?こわっ…!」
「入らないでください!危険です!」
「娘が中にいるんだ!入れさせてくれ!」

アナウンサー『こちらは籠城事件が発生して早くも1時間が経過しようとしています。まだ犯人の目的が分かりませんが…』

テレビ局まで出てきて、現場は滅茶苦茶だ
そんな中、警察の元に輝人が到着する

輝人「茉莉花さん!」

茉莉花「斑目くん!」

輝人「生徒達は?」

茉莉花「体育館の中ね。校舎から動きは全くない。でも窓は黒いカーテンがかけられて、扉も完全に封鎖されてるみたいで、中の様子が分からないわ」

輝人「マジかよ…まさかこんなことをするなんて思わなかった…!」

日奈子「輝人!」

そこに日奈子達が駆けつけた
茜が連絡をしてくれたみたいだ
その中には、バイトを休みのはずの始や航平の姿もあった

始「茉莉花さん!入れさせてください!ゆにがいるんです!」

茉莉花「始くん、ダメよそんなこと…!」

始「お願いです!俺の妹なんですよ!」

始は中に入ろうとしているが、茉莉花を中心に他の警察官にも止められる
ゆにとは血が繋がっていない兄妹だが、とても心配なのだ

炎「…日奈子から連絡を受けてまさかかと思ったが…」

日奈子から連絡を受けたネクロハンターの炎は、一足先に離れた場所から千鳥工業高等学校の校舎を見ていた
“烈怒羅夢”が関わっているとなると、放ってはおけない

彩耶華「先輩!」

コバルト「炎くん!」

炎「!」

そこに彩耶華とコバルトが到着した

炎「…なぜここにいる?」

コバルト「テレビ局のおかげ、オクトパスがすぐにキャッチしてくれたよ。そんで“館長”が、全員行けってさ」

彩耶華「私だけではなく、他の場所にも皆さん待機しておりますわ」

炎達以外にも、千鳥工業高等学校付近にサミュエル達がスタンバイしていた
もちろんその中には、鮮斗の姿もあった

鮮斗「姉貴ごめん、急に仕事入っちゃって…」

皆萌『気にしなくていいよ。こっちもニュース確認したから』

鮮斗「先生は…なんて?」

皆萌『さっき、“無駄に命を繋げている連中が最後の足掻きとは見苦しいな”って呟いていた』

鮮斗「相変わらずだね…克幸様の事お願いね?」

皆萌『うん、一応担任の先生から保護者に一斉送信のメールが届いた。学校とは少し離れた場所にバスを停めるって。まぁ安全のためだろうね』

鮮斗「そうだね…“奥様”の二の舞にならないように、頑張ろう」

皆萌『……うん。あ、はい、今行きます。…じゃあもう切るね』

そう言い、皆萌から電話が切れた

鮮斗(一先ず克幸様は、保護出来るな。後は他の生徒達の無事を確認しないと…!)





その頃、千鳥工業高等学校の3年生を乗せたバスは、学校から離れた場所に到着しようとしていた

沢地「…既読がまだつかない…」

克幸「……やっぱり何か変だ」

急に到着場所を変更するなんて、不思議に思った
だがその時だった
クラスメイトの白杉がスマホを見て、声をあげた

白杉「……え!?なにこれ!?マジで?」

沖田「どうした?」

白杉「今、姉貴から連絡が来て…!千鳥工業が、強盗に制圧されたって!」

克幸「なに!?」

教師「あっ…!」

白杉のスマホには、『千鳥工業高等学校の籠城事件』のニュースのライブ映像が流れていた
それに気付いたのは、白杉だけじゃない

「え!?SNSに上がってんだけど!?」
「学校に強盗って…マジ!?」
「2年生残ってるよね!?」
「後輩たち、大丈夫かなぁ!?」

教師「あ!し、静かに…!静かにしなさい…!」

沢地「弟から連絡ないと思ったら…そう言うことか!」

沖田「え?まさか学校に帰るんじゃなくて、別の場所に到着しようとしてんのって、そう言うこと?」

何故自分達は学校から離れた場所で降ろされるのか、理由が分かった
それが分かると、生徒達は騒ぎ出す

「先生!後輩たちを放っておけませんよ!」
「そうですよ!助けなきゃ…!」
「学校に向かってください!」

沢地「俺だって弟が…!」

克幸「お、おい!皆落ち着い…」

教師「先生だって、出来るなら学校に向かいたい!」

生徒達を一喝するかの様に、教師は大声で言った
それを聞いた生徒達はしーん…となった
同時にバスは、千鳥工業高等学校から離れた場所で停まった

教師「…だが今向かったら被害者が余計に増えるだけだ!それに今警察が取り合っている!これは安全のためなんだ!分かってほしい…!」

克幸「先生……」

「そ、それはそうだけど…」
「確かに危ないもんね…」
「で、でも…」

納得が行かない生徒もいるが、安全のためを考えると、生徒達は納得せざるを得なかった
仕方なく、生徒達はそのバスを降りる

教師「…すぐに親御さんが迎えに来る様に伝えてあるから、動かないように」

沢地「くそっ…何も出来ないのか…?」

後輩を助けに行きたい、弟を助けに行きたい、皆それぞれ、2年生に対しての想いはある
だが今行けば余計に危険が増すだけ、どうすれば良いか分からない

克幸「…」

全員がバスを降りた後、克幸はなんと、その場からそっと離れた
誰にも気付かれずに、1人でだ

克幸(先生はあー言ったけど、やっぱりダメだ。俺は千鳥工業高等学校の生徒会長なんだぞ!生徒会長として、放っておけるわけねぇだろ!)

教師に注意はされたものの、やはり放っておけなかった
ある程度見えなくなったところで、克幸は千鳥工業高等学校へと走り出した