○前回までのあらすじ●
→乙葉来海が殺され、半グレ組織“烈怒羅夢”の円は苛立っていた。刑務所の監視カメラの確認、看守を1人拉致して拷問して調べた結果、来海を殺した犯人が花巻女子学園の教師の黒羽正臣だと判明する。だが黒羽が千鳥工業高等学校に用事を済ませて出てきた姿を捉えた事で、黒羽が千鳥工業高等学校の教師だと勘違いしてしまい、千鳥工業高等学校の2年生を人質に、籠城事件を起こしてしまうのだった…!
夕方
高速道路を降りた大型バスがあった
それは、校外学習を終わらせて学校へと戻る千鳥工業高等学校の3年生が乗っていたバスだ
克幸「うーん…後は、作り方次第で頑丈な鞄や服が出来るって訳だな」
そのバスには、千鳥工業高等学校の生徒会長の天雨克幸の姿があった
校外学習のレポートのメモだろうか、何やら細かく書いている
沖田「おっ、克幸!何書いてるんだ?」
そこにクラスメイトの男子3人が、後ろから話しかけてきた
克幸「沖田、白杉、沢地」
学ランの中に青と白のボーダーのTシャツを着た男子が沖田、癖っ毛と酔っ払いみたく赤い顔が特徴の男子が白杉、クールな顔付きで制服をきっちり着て、髪型も七三分けで整えている男子が沢地だ
克幸「あーこれか?今回の校外学習のメモだよ、後でレポート提出だって言われたから、忘れない内にメモって記録してんだよ」
沖田「お~、さすが生徒会長だねぇ」
克幸「いや普通だから、お前らはどーなんだ?何もメモしてねぇけど、どんなこと学んだか書けないだろ?」
白杉「うーん、楽しかったって書くよw」
克幸「それだけか?良くねぇだろ、またお前の姉ちゃんに箒で尻ひっぱたかれんぞ?」
白杉「げぇ!姉貴の話は止めてくれよ!只でさえ身体が俺より一回りくらい横にでかいのに…」
沖田「男なのにやられてんなよ」
白杉「おっとぉ?その言葉そのまま返すぞ?お前だってあのドイツ菓子の店の…なんだっけ?まぁいいや、そこに新しく入ったアルバイトの子に、惚れてるんだろ?」
沖田「なっ!だ、だって…可愛いんだもん…!赤いエプロンしてるし、歌もすごく上手だし…!か、歌手目指してるんだってさ!」
沢地「お前音痴だもんな」
沖田「う、うるへー!俺だって練習してんだ!」
克幸「大体彼女に会うために、甘いもの食べないお前がケーキ屋に通っているとか…もはやストーカーだな」
沖田「す、ストっ…!?」
沢地「折角推薦でもらった大学に落ちないようにな?」
克幸「そういや沢地、この前のオープンキャンパスどうだった?」
沢地「ん?あぁ、良いところだったよ。もうそこに行くって決めたからな。弟も同じ大学に行くんだ」
白杉「仲良いよなぁ、うちと大違い…」
沢地「克幸は?大学は別のところに行くんだろ?」
克幸「あぁ、父さんとの約束だから。工業関係とは違う大学へ行くよ」
進路の話になると、克幸の表情が少し暗くなる
沢地「…判定、良かったな」
沖田「親父さん厳しいなぁ、何も将来くらい好きにさせてくれてもいいのにな」
克幸「そう言う訳には行かない。ちゃんと約束したんだ。もうここまで自由にさせてもらったから…後は一生かけて返すだけだ」
沢地「…随分言葉に重みがあるな」
克幸「……まぁな」
克幸の父親は、愛知県の政治家・天雨勉議員だ
厳格な精神の持ち主で、無駄を嫌う
克幸が高校卒業まで自由なのは、父親と約束をしたからだ
克幸(自由なのもあと少しか…)
教師「…え!?は、はい…!」
すると教師が何やら電話を受けて、深刻そうな顔をして頷いた
バスの運転手からマイクを借りて、話し出す
教師『え~…み、皆聞いてほしい…!このバスは、千鳥工業高等学校には戻らず、校舎から離れた場所にバスを停めて、そこで解散とする』
「え…!?」
教師の突然の発表に、バスに乗っている生徒達はザワザワとし出す
克幸「あの…何かあったんですか?」
教師『え、えっと…学校側が決めたルールだ』
克幸「…?」
教師の挙動不審な行動に違和感を持つ克幸
先程の教師への電話は、警察からのものだった
教師(まさか千鳥工業高等学校が占拠されてしまったなんて…!被害者がこれ以上増えないためにも、1年生と3年生はとりあえず何も知られずに、無事に帰路につかせるしかない…!)
沢地「…あれ?おかしいな」
克幸「どうした?」
沢地がスマホを見ながら、頭を抱えてる
何か困ったことがあったみたいだ
沢地「弟から、連絡がないんだ。それも既読も付かないし…いつもならすぐ連絡をよこすのに…」
試しに電話をしてみるが、聞こえてきたのは、アナウンスだ
沢地「…あれ?電源切れてるのか?いやあいつがそんなはず…」
克幸(なんだ…?千鳥工業で、何が起きてるんだ?)