真アゲハ ~第72話 烈怒羅夢4~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



皆萌『鮮斗、終わった?』

鮮斗「うん、今終わったところだよ」

皆萌『じゃあ寄り道しないですぐ帰ってきてね』

鮮斗「はいはい」

姉の皆萌と電話を終え、鮮斗は電話を切る
そこを狙ってか、ナイルが話しかけた

ナイル「鮮斗」

鮮斗「うおっ、なんだナイルか」

ナイル「さっきは“館長”と何を話していたんだ?」

鮮斗「何って…前回の会議に参加出来なかったから、資料を貰っていただけだよ」

ナイル「その後は?」

鮮斗「…関係ないだろ、こっちの大切な用事だ」

しつこいと感じたのか、鮮斗はキッとナイルを睨む
話しかけることをナイルは止めると、鮮斗は離れていく

トール「あ、ナイルこんなところにいた!また迷子になったらダメだよ!」

ナイル「あ…ごめんごめん」

トールに見つかり、ナイルは引っ張られてしまう
その様子を炎と彩耶華は見ていた

彩耶華「…今日の那取さん、いつもと違いましたわね」

炎「酒を飲んでねぇからだろ」

彩耶華「いえ、そうではなくて…。なんか元気が無いと言いますか…」

コバルト「“奥様”だよ」

炎「コバルト」

2人の話を聞いていたのか、コバルトが入ってきた

コバルト「鮮斗の家の事、知ってるよね?」

炎「家って…あれか?今は天雨議員の家に仕えているって」

コバルト「そ。ずっと仕えているみたいだけどね…6年前にちょっとね」

彩耶華「…何かありましたの?」

コバルト「天雨議員の奥さんが、6年前に殺されたんだって」

炎「…!何だと?」

コバルトから伝えられた内容に、2人は驚いた

コバルト「ずっと前に鮮斗から聞いたんだ。世間では病死とか報道されてるけど、当時何者かに殺されたんだって。そいつがなんで奥さん狙ったのか知らないけど、助けられなかったって、那取家の歴史上最悪の失態だって聞いた」

炎「そういやさっき、ちらっと“七回忌”とか言っていたな」

彩耶華「そんなことがあったなんて…犯人はまだ捕まっていないのですね」

コバルト「みたいだね。だからそれ以来那取家は天雨議員や息子さんをよく守るようにしてるんだって。あ、もちろん鮮斗の前でこの話は…」

炎「する訳ねぇだろ、つかお前もそうやってベラベラ喋んな」

コバルト「えー?2人と話するの久し振りなんだもん」

彩耶華「デリカシー無いですわね…(・・;」





同じ頃、千鳥工業高等学校

ゆに「はぁ…!はぁ…!」

飛鳥「ゆに!大丈夫?」

体操着姿のゆにが、倒れている
それでも地面を這うように、懸命に動こうとする
友達の飛鳥は手を伸ばす

ゆに「ゆ、ゆにの事は良いから…!先に行って…!」

飛鳥「でも…!」

ゆに「後で…!後で追い付くから…!ここで止まっていたら飛鳥は…!ゆには大丈夫…」

?「大袈裟な演技してる暇あるなら早く立て(-_-#」

パコォンッ

ゆに「痛い」

ゆにの頭に黄色いメガホンが入る
そこに体育教師が現れたのだ

ー千鳥工業高等学校体育教師 ゆにの担任
 厚木 誠一(41)ー

厚木「痛いじゃないんだ!そう言う台詞は、もっと走ってから言いなさい!」

と、担任の厚木が指す方向には、スタートラインがある
ゆにの足までの差は、僅か100mである

飛鳥「ゆに、気は済んだ?」

ゆに「オケオケ、いってらっしゃ~いw」

厚木「お前も行くんだよ」

ゆにの友達の飛鳥は再び走る
他のクラスメイト達は、校庭を何周もしている
今回は長距離走だ

ゆに「ゆに100m走ったじゃん」

厚木「100m走じゃないんだぞ、長距離走だ。来年にはマラソン大会が控えてあるって言うのに、お前は1年の時からこんなでどーする」

ゆに「1年の時は50mまでだったもん、今年は2倍ですケドー」

厚木「威張るな(-_-#」

ゆに「ごめんなさい(・・;」

厚木「工業高校の生徒たるもの、体力を付けなくてどーする。お前将来物を作る時、重い機材を運べなかったらどーするつもりだ?」

ゆに「軽い物持ちま~す」

厚木「トンチを言えと言ってるんじゃない(-_-#」

ゆに「ごめんなさい(・・;」

厚木「どーするんだ?放課後俺の補習を受けるか、それとも今日頑張って皆と同じ10周走るか、どっちが良い?」

ゆに「補習の内容によります」

厚木「うさぎ跳び10周」

ゆに「頑張って皆と走ってきます」

厚木「それでよろしい」

ゆにはそう言うと立ち上がり、再び走り出した

飛鳥「ゆにって本当体力無いよね~」

千種「手先は器用でパソコンが得意なのに、体力は全然なんだよねぇ」

真緒「ゆに、頑張りましょう。一緒に走りましょう」

同じクラスメイトの美琴真緒がゆにの隣に入る
ゆにはホッと安堵な表情を見せる
しかし

…コケッ

ゆに「ぅわっ!」

余所見をしてしまったのか、ゆには再び転んでしまった

真緒「ゆに!」

ゆに「うぅっ…ゆ、ゆにの事は良いから…!先に行って…!」

厚木「またやるな!(#`皿´」