真アゲハ ~第71話 星浦 綺堂9~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



彩耶華「ハァッ!」

彩耶華が綺堂に向けて近代鉈を振り回す
両親を殺した犯人をようやく見つけたんだ、ここで逃がすわけにはいかない

綺堂「真正面から来るとは…だが」

綺堂は指を鳴らす
その時綺堂の後ろから風が吹き荒れる
綺堂にとっては追い風だが、彩耶華にとっては向かい風だ
強くて思うように前に進めない

彩耶華「こんな風…!」

それでも彩耶華は諦めずに進む
確認した綺堂は、さらに指を鳴らす
すると今度は、風に合わせて白い何かが飛んできた

彩耶華「きゃあ!」

それは彩耶華の身体に当たると、彩耶華にとってダメージを与えた
白い何かの正体は、雹だった

コバルト「うわっ!なんで…!?雪はまだなのに…!」

綺堂「天気を1つ変えるだけで、雹を生み出せる。ほら、これはどうだ?」

ゴンッ!

彩耶華「っあ…!」

彩耶華の頭に大きな雹が直撃した
頭から血が流れてしまうが、それでも綺堂を睨み、突進する

彩耶華「やぁっ!」

綺堂「!」

風と雹を受けながらも、綺堂の元へ到着することが出来た
近代鉈を振り上げるが、綺堂は避ける

綺堂「見事な捌きだな、とても女子高生とは思えない」

彩耶華「余裕ぶっていられるのも、今のうちですわよ!」

綺堂の余裕にイライラが募るのか、彩耶華は攻撃を続ける
見ているコバルトは、ヒヤヒヤする

コバルト(彩耶ちゃんの親を殺したネクロだとはいえ、何て言う戦闘能力だ。こりゃただ漫画を描いていたって訳じゃ無さそうだな)

綺堂「寒くなったか?なら暖めよう」

綺堂が手首を捻ると、風と雹が止んだ
そう思うとすぐに、熱気が襲いかかってきた
また太陽を操っているのだ

彩耶華「このっ…!」

バキッ!

綺堂「!」

逃げる綺堂に痺れを切らしたのか、彩耶華は綺堂の脚に蹴りを入れる
突然の事に油断し、綺堂はバランスを崩してしまう

彩耶華(今ですわっ!)

バランスが崩れた綺堂は、胸ががら空きとなった
今ならと、彩耶華は近代鉈を突き刺す

綺堂「ぐ、わぁぁっ!」

コバルト「やった!」

彩耶華「…?」

だが、彩耶華はすぐ違和感を覚えた
確かに近代鉈は、綺堂の胸を捉えているのだが、刺さった感触がまるでない

…ユラァ…!

彩耶華「なっ!」

コバルト「!」

綺堂が揺れたと思ったら、跡形もなく消えた
捉えた綺堂は、偽者だった

彩耶華「これは…!」

綺堂「蜃気楼」

彩耶華「!あっ…」

彩耶華の背後から声が聞こえ、振り返るが遅かった
頭と首を抑え込まれ、絞められてしまう

彩耶華「ぐぅ…!」

コバルト「彩耶華!」

綺堂「動いたら、こいつも殺す」

彩耶華「舐めないで…もらいたいですわね!」

後ろから抑え込まれているが、綺堂の右足を思いっきり踏み込む
その隙を狙い、彩耶華は背負い投げを入れた

綺堂「っ!」

彩耶華「忘れては困りますわ。私は“財前スポーツ”の娘ですのよ?あらゆるスポーツは身につけていますわ!」

綺堂「なら、これは?」

バチィンッ!

彩耶華「あっ…!」

コバルト「彩耶華!」

彩耶華の脚に向けて電流を流した
相当強かったのか、彩耶華は膝をついてしまった
その隙に綺堂は上体を起こし、彩耶華に手を伸ばす

コバルト「っ…!もう我慢出来るかぁ!」

彩耶華を守るため、コバルトは約束を破ってしまったが、放っておけるわけがない
ナイフを取り出し、綺堂に向ける

綺堂「“吹雪”」

ビュオオオォ…!

コバルト「っ!またか!」

どこからか強い風と雪が降りだした
それは間違いなく吹雪だ

コバルト「こんな雪がなんだ!すぐに…」

吹雪の中を進もうと1歩踏み出そうとするが、足が動かない事に気付いた
見てみると、雪が既に積っていたのだ

コバルト「なっ…!こんな短時間で…!?」

綺堂「約束は守らなきゃならないだろ?そこで大人しく見ていな」

彩耶華「せ、先輩…!」

綺堂「さて、どう殺して欲しい?ご両親と同じ様に、燃えたいか?」

彩耶華「…!」