真アゲハ ~第70話 有馬 隆之10~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



有馬「ご馳走さまでした」

ステーキを最後まで食べ、ステーキハウスを出ていく
自身のスマホを確認すると、ある人物からメッセージが届いていた
それを確認すると、有馬は自身の赤いスポーツカーに乗り込み、走らせる

有馬(珍しく“集合”ですか…)

車を走らせ、到着したのはビジネスホテルだ
近くの駐車場に車を停めて、中へ入る

有馬「…!」

入った瞬間、異様な空気を感じた
既に夜となったこの時間、チェックインの時間としてお客の出入りが激しくなる時間帯だ
だがお客の姿はなく、ましてやフロントマンやスタッフの姿もない
鉄のような匂いがする

有馬「……血…?」

スタッフ「うっ…うぅっ…!」

どこからか呻き声が聞こえた
見てみると、女性のスタッフと思われる人物が床を這っていた
なんで這っているのか意味が分からなかったが、よく見ると涙を流して大泣きしていた
床を這ったその後は、赤い液体で染まっている
これは血だ
女性のスタッフの脚をよく見ると、両足共に切られて、切り口から血が流れていて、引き摺った痕がある

スタッフ「た…助けて…!たす…け…」

ドスッ!

スタッフ「ゴブッ…!」

有馬「…!」

女性のスタッフの頭に、黒い刀が刺さった
血を吐いて、女性のスタッフは死亡する
血は飛び出てしまい、有馬の服にかかる

有馬「ちょっと、美しい私の服汚さないでくれます?これブランド物なんですよ?」

有馬は何も怯えもせずに、目の前にいる人物に話しかける
その人物は、スタッフの頭に刺さった黒い刀を抜くと顔を上げる
金髪のオールバックに、金具で頬を留められた顔には、見覚えがあった

骨喰「…そこに立っていた貴様が悪い」

ー“元”辻斬り
 骨喰 影近(38)ー

そこにいたのは、かつて“辻斬り”と騒がれていた骨喰影近だった
数ヶ月前、輝人が師匠のルチアの仇を取り、警察病院にいたが、その病院から骨喰は消えた
骨喰は、ある人物と共に抜け出したからだ

有馬「…腕の具合、慣れてきたみたいですね」

骨喰「あぁ、もうぎこちない動きなんて出来ない」

輝人がルチアの仇を取った時、骨喰の両腕は輝人によって切られた
もう刀が触れない状態で負けた
今骨喰の腕は、義手だ
有馬が治して、装着してくれたのだ

有馬「しかし驚きましたね。まさかホテルで行うとは…それもここまで人を殺して」

骨喰「奴は上だ、行くぞ」

骨喰は刀の血を振り払い、鞘にしまう
これまで骨喰の衣装は、和装だったが、今回は違う
現代風な服装に、腰に刀、そして背中には大きな鎌を装備している

骨喰と共に2階に上がると、そこは宴会場だ
その宴会場には、黒いロングコートと黒いトリルビー、黒いペストマスクを装着した“闇の商人”クロノスの姿があった

クロノス「…揃ったか」

有馬「お招きありがとうございます」

骨喰「…奴がいないな、韓国人の」

骨喰は周りをキョロキョロとする
もう1人呼ばれた者がいたみたいだ

クロノス「テオか?あいつは任務中だ。連絡は後に行う。それより有馬、お前手術は成功したのか?」

有馬「えぇ、つい先程終わりました。そして、逃げきりましたよ。流石美しい私」

クロノス「フンッ、まぁ構わんが…あまり目立つような事はするな」

有馬「もう医者として活躍はしませんよ。既に退職届を出してきましたし。これからは、貴方様のそばで、美しく戦うとしましょう。ネクロハンターも、斑目輝人もまとめてね」

骨喰「待て、斑目を殺るのは我だ」

輝人の名前を聞いて、骨喰の雰囲気が変わった
何かしらの憎悪がこみ上がってくる

骨喰「奴は我の腕だけではなく、“親友の命をも奪った”。我のこの手で、奴を地獄に落とさないと気が済まない。我が新しく打ったこの刀で、奴の首を狩る」

クロノス「話はそこまでだ。本題に入るぞ」

クロノスがそう言うと、2人は黙る

クロノス「これまで影でしか活動しなかったが、奴らが…『アクアリウム』が現れたからには、悠長には出来ない。お前達の事も、私の事もバレてしまうその前に、潰さねばならない」

有馬「なるほど…」

クロノス「既にテオが潜り込み、情報を聞き出している。後はタイミングを見て、我々が仕掛けるだけだ。そして…」

骨喰「そして?」

クロノス「…斑目輝人や関係者も潰さなければならない。◯か✕か?」

骨喰「◯だな」

クロノス「…これからが、楽しみだよ」

そう言い、クロノスはニヤリとマスクの下で笑うのだった


ー有馬 隆之ー






○NEXT●
→輝人達が有馬の正体を知った一方、彩耶華は『アクアリウム』に届いた依頼を受けていた。その中で、焼死体が発見された物を見つけ、自分の両親を殺したネクロではないかと調査を進める。
 進めていくうちに、人気漫画家の『New堂雲』と出会うが、果たして彼は…!?