真アゲハ ~第69話 綾部 希6~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



綾部「ん?何だあの外国人…」

綾部が逃げた先にトールとナイルがいた
ナイルは丁度綾部が載っているリストを確認し、綾部を見つけた

ナイル「…いた」

目が合うと、ナイルは綾部に近付く
背中に背負っていた2つの剣を抜き取り、刃物を綾部に向ける

綾部「おおっ!?」

トール「ナイル!?」

突然のナイルの行動に驚くトール
いつの間にか繋げてあった迷子紐も外れ、ナイルは攻撃を始める
殺られると思ったのか、綾部は指を交差するように重ね、ナイルの頭上から網を出した

ナイル「!」

綾部「全く…危ないなぁ。僕は平和主義なの!」

アビリティを発動し、困っている隙に逃げようとする
ところが

…ズバッ!ズバァッ!

綾部「あらぁ…!?」

後ろを振り返ると、ナイルが2つの剣で網を細かく切ったのだ
一切迷いのない動きだ
同時に距離を詰め、綾部に剣を向ける

ガキィンッ!

ナイル「…!」

綾部「…フゥッ」

2つの剣が綾部に当たる直前、綾部が逃げた先にあったシャベルを使い、盾として剣を止めた
ギリギリだったが、命を繋ぐことが出来た
ナイルの2つの剣はと言うと、シャベルの木の部分に刃が刺さってしまった

よく見ると、2つの剣は普通の剣ではない
山鎌のように剣身が曲がった、シックルソードだ
ナイルは2つのシックルソードを使いこなす様だ

綾部「…随分、珍しい武器を使うねぇ…!」

ナイル「このっ…!」

2つのシックルソードを抜き取り、再び刃を向けようとする
だがその隙に綾部が、右の人差し指を上から下へと動かし、ナイルの頭上にたらいを落とす
ゴンッ!と鈍い音がし、ナイルは頭を抑える

ナイル「~っ!」

綾部「ふぅ、危ない危ない」

トール「ナイル!大丈夫~!?」

ナイル「っ…あぁ」

たらいをどかし、気持ちを切り替える
しかしその時、綾部の後を追ってきたカンナ達が現れた

カンナ「待ちなさい!…ってえ?誰?」

綾部「おやまぁ、もう追い付いちゃった」

ナイル「ん?」

ナイルやトールが現れた事でカンナは混乱する
だがナイルが武器を持っている時点ですぐに分かったのは、ナイルは一般の外国人では無いことだ

ユウナ「カンちゃん!気をつけてね!」

ナイル「…彼女は?」

トール「えっと…あ!あった!」

離れているトールは資料を調べる
そこには輝人の写真、そして輝人の関係者の写真までも載っていた

トール「ナイル!その子斑目輝人と知り合いの女の子だよ!人間だよ!」

カンナ「!」

ナイル「なるほど」

トールの話を聞いて、資料の内容を思い出したのか納得する
今の一言で、カンナはナイルとトールの正体を知った
輝人の事から話すと言うことは、『アクアリウム』の関係者だ
カンナはバッグからエスポワールの九節鞭を取り出し、臨戦態勢に入る

ナイル「…!」

カンナ「貴方達、ネクロハンターですのね」

トール「おおお…何あの武器。ニコちゃんみたい…」

カンナ「何をするかは分かりませんが、彼は殺らせませんよ?」

綾部「!おやまぁ」

先程まで自分を追いかけていたとは思えないカンナの答え方に驚く
それには理由があった

カンナ(ネクロを許すつもりなどありませんが、ネクロハンターに殺させる訳には行きませんわ!ここは私が…)

アゲハ族として、綾部を捕らえるつもりだ
そのためにネクロハンターに簡単には殺らせない
だがそれを良く捉えなかったのだろう、ナイルはカンナに敵意を向ける

ナイル「…人間の癖に、ネクロに味方をすると言うのか」

カンナ「…!」

ナイル「ならば仕方ない、容赦はしない」