真アゲハ ~第63話 乙葉 来海11~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



『…名古屋の人気アイドルグループ“TOY Doll”のメンバーである乙葉来海さんが、殺人罪及び監禁罪の容疑で逮捕されました』

ー“事件から一夜明け、アイドル業界はとんでもない騒ぎになった。”

翌日の夕方、ニュースを確認しながら、輝人は今回の事件の報告書を打ち込んでいた

ー“事件の犯人である乙葉来海、改め相坂彩音はネクロで、そのアビリティを使って、たくさんの人の命を手にかけた。助かった被害者もいるが、全員を助けたわけではない。あれから来海は、警察署で取り調べを受けているが、何も話してくれないそうだ。”

『殺人とか怖いんだけどー』
『終わったな、最低アイドル。死ね』
『ファンだったのに、幻滅。もう辞めるわ』
『もう2度と出てくんな』

ゆに「うーわ、一気に中傷来たし。ヤバ」

栗栖「まぁ彼女はそれほどの事をしたんだ、許されるとは思えない」

SNSには、来海に対する誹謗中傷が書かれていた
当分収まることはないと思うが、他の“TOY Doll”のメンバーにも被害が来ないわけではない

ー“『大地プロダクション』は今回の事件で大ダメージを受け、今でも事務所は嫌がらせの電話やメールの対応で、ライブやイベントどころでは無いそうだ。むしろ被害者だと言うのに、桜木さん達が可哀想でならない。それほどの事を、来海はやってしまったんだ。”

始「そういや、野田さんは大丈夫だった?ショック受けてない?」

カンナ「真希ですか?もちろんショックを受けてました、大ファンでもありましたから」

航平「だよなぁ…」

カンナ「でも、まだ解散とかしないと言うので、立ち直ることが出来たら、また応援するそうですよ?」

始「素晴らしい精神力だよ」

ー“『TOY Doll』は大きく傷付いたが、メンバーは解散しないそうだ。今は無理だが、落ち着いたらまた動き出すと公表した。改めてアイドルとして動き出すまで、影ながら応援をしようと思う。”

日奈子「おはよう!」

茜「お待たせしました!」

事務所に日奈子と茜が入る
栗栖はすぐ質問してきた

栗栖「どうだった?藤咲らんるさん…来た?」

日奈子「…それが…」

栗栖「え?来なかった?」

日奈子「来ました」

ゆに「来たんだ」

日奈子「でも、前と違っていて少しビックリしました」

日奈子の顔は嬉しそうだ
それもそのはず、らんるが学校に戻ってきた

ー“藤咲らんるは無事に見つかり、日奈子が背中を押してくれたおかげか、学校にまた通いだしたと言う。しかも話によると、ツインテールを止めたそうだ。”

日奈子「珍しくロングヘアでさ。あの取り巻き2人も興味無かったハズなのに、また一緒になってくっついてさ。いつも通り…だけど、少し違う感じだった」

茜「でも変わり無かったそうですよ?日奈子様達と話した時がいつもと同じだったそうで」

日奈子「本当、どうしてあんなだか…」

そう言う日奈子だが、顔は少し嬉しそうだった

ー“結局、乃亜から徳川の情報はとれなかったが、徳川はこの愛知県にはいないことが分かった。後は頑張ってカジノのスタッフを片っ端から調べていくとしよう。そうすれば、いつかはまた徳川に届くことが出来るんだからな。”

輝人「…フゥー」

栗栖「お疲れ様」

輝人「…あ、そういや日奈子。お前乃亜が来た時、話したいことあったみたいだが、なんだ?」

ふと乃亜が来た時の日奈子の様子を思い出した
あの時日奈子は強く輝人に依頼したいみたいで、聞けずにいたがようやく触れた

日奈子「あー…それだけどもういいよ」

輝人「は?良いのか?」

日奈子「うん」

もう話が終わったと、日奈子は輝人に聞くことを止めた

日奈子(…あの時、オミ先生がらんるが来てないって事を輝人に依頼しておいてって言われていたけど、もう解決したから、良いよね)

輝人「…?」





コツーン… コツーン…

来海(……今度こそ本当に終わった。私はもう、アイドルにはなれないんだ…)

名古屋警察署の牢屋に、来海はいた
体育座りで、静かに待っている
手にはネクロ対策の手錠がかけられ、アビリティを発動することが出来なくなっている

来海(円様とも連絡が取れない…円様の隣に、もうなれないんだわ…っ)

円の隣で輝いていることが、夢だった
だがそれももう叶えられない
円は絶対、自分の事を見捨てるに違いない

…コツン …コツン

来海「…?」

牢屋の外から足音が聞こえ、来海の牢屋に近付いてくる
誰なのか入り口を見てみると、そこには意外な人物がいた

円「…来海」

来海「…!ま、円様…!?」

それは、“烈怒羅夢”のリーダーの円だった
まさか来るなんて思っていなかった、来海は驚く
円は来海が閉じ込められている牢屋を開ける

円「…ここにいたのか」

来海「私の事、助けに来たんですね…!」

円「あぁ、不安だったろ?」

来海「円様ぁ…!」

来海はそう言い、円に抱き付く
円がこうして助けに来てくれるなんて思ってもいなかった
嬉しさのあまり、ギュッと円に強く抱き付く
円も腕を自分の背中に回して、抱き返す
円の胸から温かい体温を感じ、来海は幸せな気分に…

来海(…え?体温?)

抱き付いた瞬間、違和感を持った
円は自分と同じネクロのハズだ、なのに何故体温を感じるんだろうと…
それに円は“瞬間移動(テレポート)”のアビリティを持っているため、自分の家に現れている時は必ず、瞬間移動で来るハズだ
今みたいに、足音を立てたり、鍵を開けて入ったりまどろっこしい事はしない

来海「…あ、あんただ」

ザクッ!

来海「ガハッ…!」

その瞬間、来海の背中に激痛が走る
同時にドクドクドク…と血が大量に流れ出す
それを確認した円…に化けた人物は、来海を離す

円?「…上手く変装出来たみたいだな」

その人物の手には、鋭い苦無が握りしめられていた

来海「あっ…ひゅっ…!」

来海の背中に刺さった場所は、丁度心臓のところだ
ドクドクと赤い血液が流れ、来海は抵抗出来ずに倒れる
円に化けた人物はビリビリ…と顔を覆っていたマスクを破く
そして服装も替える、その正体は…

黒羽「…入ってくるのも、結構大変だったんだ」

来海「…っ…!」

黒羽が来海の死に様を確認すると、こっそり牢屋から出て行った
胸を一突きされた来海は、何も出来ないまま横になる

来海(…幸せの絶頂から、いきなり死へのどん底……。あの時と同じか…)

自分から流れていく血を見て、過去に1度死んだ時の状況を思い出した
あの時も幸せの絶頂だった、だが突然の落雷で、自分はステージに立てなかった
今も、全く同じだ
それも今度は、本当にこの世とさようならだ

来海(…円様…、こんな最後、許してください…っ)

最後まで、円の事を想い、来海の目尻から涙が流れる
そして、ドサァァァ…!とネクロの灰になってしまった

一瞬の出来事だった
その間に乙葉来海は、死んだ
屍人対策課も、驚きを隠せなかった


宗方「おい円!大変だ!」

この事は、後に“烈怒羅夢”にも響いた

宗方「来海が…来海が死んだ…!」

円「…は?何だと…!?」

…そして、近い将来に“烈怒羅夢”がとんでもない事件を起こすなんて、この時誰も予想をしていなかった


ー乙葉 来海
 黒羽に殺されて死亡。21歳。ー







『真アゲハ』キャラクタープロフィールの紹介


☆乙葉 来海

①8月28日
②164㎝
③B型
④イチゴパフェ
⑤ペットの世話
⑥ダンス(ヒップホップ)
⑦アイドルグループ“TOY Doll”
父、母
⑨縮小(ミニマム)
⑩地下アイドルグループ“TOY Doll”のぬいぐるみ担当。その裏では“烈怒羅夢”のメンバーだった。
 本名は相坂彩音だが、幼少期からアイドルを目指していたが、デビュー日に落雷に撃たれて死亡。その後は蘇るも、既に死人として扱われ、世間から抹消された。名古屋に来てからは円の武勇伝を聞いて、会ってみたいと思い、乙葉来海として活動を再開した。円を溺愛していて、円自身も来海に一目置いている。
 ドブネズミのベルーナ(雌)を飼っている。





○NEXT●

→遂に始まった『花鳥風月祭』の体育祭!
 4大高校がそれぞれ火花を散らし、戦う!
 笑いあり!涙あり!戦闘なし!時々喧嘩あり!
 珍しく事件がない楽しい回をご覧ください!