真アゲハ ~第61話 酒森 将平2~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



警官「あのー…君何歳かな?小学生が警察署に何の用?」

愛知県警察署の入り口では、1人の警官が話しかけていた
その相手は、小学生くらいの身長の女の子だった

?「ですから!私は小学生じゃありません!こう見えて32ですから!(#`皿´」

だが見た目とは裏腹に、年齢を30代だと怒鳴っている
彼女は見た目は小学生だが、既に成人済みなのだ

ー天雨勉議員の秘書兼SP
 那取 皆萌(32)ー

勉「何を騒いでいる」

皆萌「!…天雨先生、失礼しました」

勉「また小学生に間違えられたのか」

警官「え?あの…」

国生「その人はとっくに成人してるぞ、失礼なこと言うな」

そこに捜査一課の警部の国生が現れる
真実を聞いた警察官は「申し訳ありませんでした!」と謝罪する

国生「大変失礼致しました」

皆萌「…ふん、分かればいいです」

勉「皆萌、すぐに帰るぞ。1分1秒でも無駄には出来ない」

亜季「ありがとうございました」

国生と烏丸が礼をすると、天雨議員と皆萌はすぐ車に乗り込む
クルマに乗り込むと、勉は話し出した

勉「全く…見た目で間違えられるのはしょうがないが、あんなに騒ぐことないだろ?」

皆萌「で、ですがあの警官は全く私の話を聞いてくれなくて…」

勉「言い訳するな」

皆萌「すみません…」

勉「…それより、那取家としての仕事はどうだ?」

皆萌「!」

“那取家”
その名前が出てきて、皆萌は反応する

那取家は室町時代の影で暗躍を続けてきた暗殺者の家系だ
時代に合わせて武家や大名に仕えており、その実力は本物である
現在は政治家の天雨家に仕えている
ちなみに、天雨議員はネクロと言う存在を知っている

皆萌「弟…鮮斗は“アルルカン”の動きを追っているところです」

勉「そうか。死人を動かしたい売人がいると言うだけでも、吐き気がする。そんな連中を増やして何がしたいんだ。戸籍上抹消されたも同然な死人が、さも一般人の様に国税を貪っているのが非常に無駄だ。おまけに人間とは思えない化物の様な能力を持ってるだと?ふざけている。そんな連中を消すためにも、警視庁に直談判をして、この愛知県に屍人対策課を作ったんだ。総力を上げて、撲滅をしないと気が済まない」

皆萌「仰る通りです」

勉「…鮮斗に伝えておけ。その売人を見つけたら迷いなく抹殺しろと」

皆萌「かしこまりました」

皆萌が返事をすると、勉は自分のポケットからあるものを取り出す
先程烏丸からもらった木箱だ

皆萌「それは?」

勉「教え子からもらったお守りだ」

皆萌「教え子…あぁ、烏丸さんですか」

勉「5歳ぐらい歳が離れていて、もう警察を引退した身だと言うのに…」

皆萌「いいでは無いですか。それほどあなたが立派な教官だったと言うことですよ」

勉「ふん…」

皆萌「お守り…もしかして克幸様に?」

勉「あぁ、受験だからな」

皆萌「克幸様、勉強頑張ってらっしゃいますね。同時に生徒会長を務めていて、今度の『花鳥風月祭』もはりきって準備していますし。それに大学は先生が指定したところを希望していますよ。この前のテストでは判定Aだったみたいですし」

勉「…一応高校までは自由にさせると伝えたし、この年で最後だからな」

皆萌「…そうですね」

勉「話は終わりだ。仕事に戻るぞ」

皆萌「はい」





?「はい我慢だ、動くなよ?」

『“治療(medical)”!』

ドスッ!

サミュエル「うっ…!ぐっ!アァァァァァッ!」

同じ頃、名古屋港水族館近くのとある施設で、悲鳴が聞こえた
そこには包帯姿のサミュエルとニコールがいるのだが、何やら注射の様な物を刺されて、悶え苦しみだした

サミュエル「フーッ…!フーッ…!」

先日の『CASINO Shachihoko』の爆発に巻き込まれ、重傷を負ったサミュエルとニコールは現在治療中なのだ
荒々しい治療になっているが。

ー『アクアリウム』専門医 通称“海亀(シータートル)”
 小浜 昴生(41)ー

小浜「よし、これで2発目だ。全治3週間はかかる治療があと3日で終わるぞ」

ニコール「は、早いですね…仕事早いなんて、ムカつく…」

サミュエル「けどさぁ…すっごい痛いんだよね…っ」

小浜「仕方ないだろ?これはそう言うアビリティなんだ。“回復(ヒーリング)”があれば、1発で治るが、なかなか手に入らないんだよ」

トール「大丈夫?2人とも」

コバルト「ったく、人の仕事取るからバチが当たったんだよ」

2人の様子を心配して、トールとコバルトはそこに現れる

小浜「しかし怪我をしてきて、すぐ治して、治ったと思ったらまた戦場…ブラック企業かここは」

サミュエル「うーん…否定はしないかな?」

小浜「ほら治療は終わりだ。とっとと飯食って寝てろ」

ニコール「はぁい…痛すぎる…」

この施設を借りて、『アクアリウム』専用の医務室を作ったのだ
怪我をした者は、ここで治療を受けている

コバルト「あーぁ、これでまた離脱か。彩耶ちゃんの謹慎は未だに解けないし、ナイルやエドワルド、シャーク(鮫)はまだ日本に来ないし」

トール「ナイルは今日本にいるよ?でも砂漠っぽいとこいるみたい」

コバルト「早く来いよ!どんだけ方向音痴なんだよ!」

トール「僕も今後はルーカスを託児所に預けながら戦わないとダメになっちゃったし。穣くんは遠いから、とりあえずすぐ動けるのは僕と炎くんとコバルトくんと、オクトパスと後は…」

鮮斗「僕だよ」

そこに“ピラニア”こと那取鮮斗が現れる
サミュエルとニコールを心配して来たのだろう

コバルト「おっ、来た来た」

鮮斗「あの2人は?」

トール「ベッドの方に行ったよ。これから仕事?」

鮮斗「あぁ。…と言っても『アクアリウム』の仕事じゃない。那取家の仕事なんだ」

コバルト「大変だねぇ。天雨議員って、結構厳しいんでしょ?大丈夫なの?」

鮮斗「間違ったことは言ってないから平気だよ。それに僕ら那取家はそうでなければ生きていけないんだよ。あの2人、平気そうなら帰るね」

そう言うと鮮斗はそのまま帰りだす
直後鮮斗のスマホに電話が入った

鮮斗(…ん?姉貴から?)