真アゲハ ~第61話 酒森 将平1~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



徳川が街から消えて3日となった
『CASINO Shachihoko』での爆発事件はすぐに報道され、有名となった
この爆発が起きた事で、徳川と一二三が犯人だと特定され、全国に指名手配となってしまった

輝人「あれから3日…手がかりを探しているんだが、どうにも見つからなくてな」

瑠美「まさか徳川くんがあんなことを…」

ネクロ研究センターに定期診断を受けに来た輝人はぴよりんの被り物をしている加治木にも話す
加治木も訳を知っている
表向きは、徳川は爆発事件の犯人として指名手配されたが、裏では“REBORN”を密売していた“アルルカン”だと輝人から聞いたのだ

輝人「くそっ…!ちゃんと調べてさえいればこんな…!」

瑠美「斑目くん、自分を責めちゃダメだよ」

輝人「それはそうだが…」

瑠美「斑目くんは一生懸命頑張っているよ。徳川くんの事は残念だけど、斑目くんが止めてくれるって信じてるよ」

輝人「加治木…悪いな」

加治木に説得され、輝人は納得する

瑠美「それにしても、売人だったとはね~」

輝人「あ、その事なんだが…」

“売人”という言葉を聞いて、輝人はある情報を加治木に話そうとする
それは“闇の商人”クロノスの事だ
こいつはネクロに対して様々な武器を売っている
早く止めなければならないと思っていたが、最近クロノスに関しての情報を手に入れた

瑠美「ネクロに武器の提供してる奴でしょ?こっちでも調べているんだよ。あのグレイシアって女に、あんな武器を提供するなんて…かなり高度な設計だと思うよ」

輝人「やっぱりそう言う武器か…多々良さんのも?」

瑠美「多々良さんは…うちに来ないんだよね。来てくださいって言ってはいるんだけど、来てくれなくて」

輝人「仕事が忙しいのか、こういう所が苦手なのか…(・・;」

瑠美「それで、何?何か新しいこと分かったの?」

輝人「あぁ、それは…」

輝人が伝えようとしている事、それはクロノスの正体だ
男か女か分からないが、顔に痣がある人物だ
今のところ、日奈子が通っている花巻女子学園の教師・黒羽か、新しく入った屍人対策課の警視・烏丸のどちらかである

輝人「クロノスの正体だが…」

するとコンコンッとノック音が聞こえた
ガチャッと扉が開く

?「所長、失礼します」

瑠美「あ、矢田さん」

輝人「…!」

そこに入ってきた人物の顔を見て、輝人は大きく右目を開いた
なんとその人物は、顔に大きな痣があったからだ

ーネクロ研究センター 副所長
 矢田 仙里(30)ー

輝人(あ、痣持ち…!?)

矢田「あれ?診断中でしたか?失礼しました」

瑠美「あぁ、大丈夫ですよ。斑目くんびっくりしたでしょ?この人はネクロ研究センターの副所長の」

矢田「矢田仙里と申します。こちら名刺です」

矢田は白衣の内ポケットから名刺を取り出し、輝人に渡す
輝人は一瞬固まるが、ハッとして、自分も名刺交換をした

輝人「えっと…“やた せんり”って読むんですね。珍しい名前ですね」

矢田「よく言われます。斑目輝人…もしかして、所長が話していた探偵さんですか?」

瑠美「はい、そうですよ」

矢田「わぁ~!会えて光栄ですよ!所長から斑目さんの武勇伝はいくつも聞いていますからね!」

輝人「は、はぁ…そうですか…」

瑠美「斑目くんのかっこいいところは話しているからね~」

瑠美は笑いながら輝人に話すが、内心輝人は焦っていた

輝人(…痣持ちの人物がまた増えたな…。これだと、クロノスが誰なのか分からなくなったぞ…!)

矢田「?どうしました?」

輝人「あ、いや…失礼ですが、その痣は…」

矢田「あぁ、これはすみません。驚きましたよね?過去にネクロによって、やられてしまいまして…」

瑠美「もーダメだよ斑目くん、そんなストレートに」

輝人「す、すいません…」

瑠美「それで、話って何?」

輝人「え?あ、いや…なんでもねぇよ。そろそろ帰るわ」

矢田が登場したことにより、加治木に話そうかと思っていたクロノスの正体を、話さずに帰ることにした
矢田の顔を見て、クロノスではないかと考えたからだ

輝人(…本人かもしれないのに、話せねぇよなぁ…)





同時刻 愛知県警察署

亜季(『CASINO Shachihoko』の爆発…明らかに徳川本人がやったものだな)

先日の爆発事件の資料を読みながら、烏丸はコーヒーを飲んでいた
飲み終えると、カップをゴミ箱に捨てる

亜季(…調べはもうついている。“アルルカン”と言う売人で、あの『REBORN』を売っていた張本人だ。みすみす逃すわけには行かない。どこに逃げていようと絶対に…)

?「…烏丸?烏丸じゃないか」

亜季「え?」

声をかけられ、ふと顔を上げると、そこにはスーツ姿の男性がいた
その男性を見ると、烏丸は丁寧に敬礼をする

亜季「お久し振りです、天雨先生」

ー愛知県県会議員
 天雨 勉(40)ー

勉「先生だなんてよしてくれ。昔の話じゃないか」

亜季「私にとっては、先生ですよ。警察学校時代の教官でありましたから」

勉「早くに引退して、今は議員だ。それより、励んでいるみたいだな」

亜季「えぇ、お陰さまで」

勉「その調子で精進するんだ。一刻も早く、この国に存在する“無駄な連中”を撲滅してくれ。そのために、君ら“屍人対策課”を設立したんだからな」

亜季「はい、かしこまりました」

烏丸は頷くと、ふと何かを思い出した
自分の鞄から何か小さな木箱を取り出す

亜季「すみません、渡したいものがありまして。こちらを」

勉「?…開けてもいいか?」

烏丸が返事をすると、天雨議員は木箱を開ける
そこには『合格祈願』と書かれたお守りが入っていた

勉「これは…」

亜季「ご子息の克幸くん、今年受験ですよね?それは私から応援の気持ちです」

勉「…ありがとう、渡しておくよ。克幸も喜ぶと思う」