真アゲハ ~第57話 雲野 顕8~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



ー“事件は無事、解決した。”

翌日の夕方、輝人は事務所で報告書を書いていた

ー“今回の犯人『患者殺しの医者』こと雲野顕は逮捕されたが、医者でもネクロでもなかった。奴は自分が飼っている爬虫類の血清が欲しくて、医者になりすまし、患者を利用していた最悪な外道だった。後から茉莉花さん達から聞いた話によると、雲野の家には爬虫類が確認され、生き物に罪はないと保護されたそうだ。雲野によって毒に犯された患者は、雲野が採取した血清を使い、何とか一命を取り留めた。毒が完全に抜けたら、退院できるそうだ。”

航平「栗栖さん、まだ帰ってこないなぁ~」

事務所の時計を見て航平は呟いた
栗栖は今、外に出ている

ー“最近ネクロの事が多々あったせいか、ネクロ関係の事件だと勝手な思い込みをしていた。1ヶ月前はなんとも無かった患者が、突然病気になってしまうなんて、ただの偶然だった。ちょっと考えすぎたと思った。”





弘泰「本当にありがとう栗栖くん、助かったよ」

栗栖「いえいえ、こちらこそ病院で騒ぎを起こしてすみませんでした」

その頃栗栖は、名古屋市総合病院にいた
元の職場とはいえ、迷惑をかけてしまったことを改めてお詫びに来たのだ

橋川「こちらこそありがとうございました。やっぱり栗栖先生にお願いして本当に良かったです!」

渉「もううちに来るなよ?また騒ぎを起こされては困るからな」

弘泰「渉」

渉「!…フンッ」

事件が終わった後も、栗栖の対応は変わらなかった
渉はその場を去る

弘泰「すまないね、今度また時間がある時は食事に行かないか?今の…君の仕事にも興味があるんだ」

栗栖「院長先生…ありがとうございます。それでは」

礼をして、栗栖は病院から出る
すると赤いスポーツカーに乗り込もうとする有馬を見つけた

栗栖「あ、有馬先生!」

有馬「!栗栖先生、昨晩のこと聞きましたよ。お疲れ様でした」

栗栖に気付いて、有馬は前に出る

栗栖「あの…昨日は犯人だと疑ってしまって、申し訳ありませんでした」

有馬「いえいえ、気にしないでください。犯人が捕まって良かったですよ。またいらしてください。その時は、医者同士仲良く話しませんか?」

栗栖「はい、もちろんです」

栗栖は手を伸ばし、有馬と握手をする

栗栖「…!」

有馬の手に触れた瞬間、ヒヤッと冷たい体温を感じた
まるで氷を触っているみたいだった

有馬「?どうしました?」

栗栖「…冷たい」

有馬「あぁ、すみません。ここを出る前にお手洗いに行ってまして、水で手を洗っていたからですね。驚かせてすみません」

栗栖「あ、あぁ…そうですか。すみません。もうお帰りですか?」

有馬「はい、今日はここまでですので。それでは」

握手を止めると、有馬はスポーツカーに乗り込み、動かした
スポーツカーが見えなくなると、栗栖は改めて有馬と握手した手を見る

栗栖「……まさかな」

首をかしげ、栗栖も病院を去った



有馬「~♪」

スポーツカーの中、ご機嫌な表情で運転する有馬
すると電話がかかってきた
有馬はイヤホン型の電話で対応する

有馬「もしもし、貴方から電話をかけてくるなんて珍しいですね」

その電話の相手は、意外な人物からだった

クロノス『…ニュースを確認した。“患者殺しの医者”がいたそうだな』

それは、自称“闇の商人”クロノスからだった
商人の時とは別の口調でクロノスは話す

有馬「本当ですよ。まさかよりにもよって私の患者に手を出すとは…危うく私の正体がバレてしまうのではないかとハラハラしましたよ」

クロノス『しかもあの探偵も介入したとか、下手に目立つ行動はよしてくれよ?』

有馬「そこはご安心ください。私の“アビリティ”は、後からやってくるものですから」

クロノス『そう言うことではない、ネクロハンターの集団が日本に上陸し、最近嗅ぎ回っている。お前も知ってるハズだろ?いくら病院と言う名前のかごの中でも、いずれは気付かれる可能性がある』

有馬「…そうですね。用心はしますが、そのためにとある保険をかけておきましたよ」

クロノス『保険?…誰かに“病を処方”したのか?』

有馬「えぇ、それも例の探偵の助手的存在である優秀なお医者様をね…。1ヶ月後が楽しみですよ。その時になったら、どう判断するのか…」

バックミラーに映った自分の顔を見て、ニヤリと微笑む
有馬が仕掛けた罠が迫り始めた事を、この時は誰も知らないでいた



ー雲野 顕ー







『真アゲハ』キャラクタープロフィールの紹介


☆逢坂 渉

①6月10日
②170㎝
③A型
④ういろう
⑤運動
⑥サマースポーツ
⑦名古屋市総合病院の次期院長
⑧父、妹(祐希奈)
⑨✕
⑩名古屋市総合病院の次期院長で、栗栖の元婚約者・祐希奈の兄。大切な妹が結婚すると言うことを聞いて不安になっているのか、栗栖を当初から毛嫌いしており、3年前祐希奈が亡くなり、さらに栗栖への対応が悪化する。(ただし、祐希奈がグレイシアになったことは知らない)
 患者の事は大切に思っており、信頼も厚い。
 祐希奈とは正反対で、サマースポーツが得意。過去にはサーフィンで賞を獲得したとか。
 




○NEXT●
→両親を殺したネクロへの復讐心が消えない彩耶華に、アサギが「ネクロ探し」の交渉を持ちかける。
 予期せぬ事態に気付いた日奈子は、彩耶華を救うために動き出す!
 日奈子の想いがぶつかる時、ついにエスポワールが開花する…!