日奈子「……ハァッ!」
ある平日の夕方、日奈子は熱田神宮にいた
今航平やカンナ達と、ネクロハンターの龍 炎に稽古をつけてもらっていた
炎「ダメだ、左に反れてる。もう少し右だ」
日奈子「やぁっ!」
炎「よし、そうだ」
炎が指導しながら日奈子の相手をしている
日奈子は気合いが入っている
カンナ「ふぅ…日奈子さん、いつもよりはりきってますね」
航平「やっぱ若いからなぁ…。俺なんて、身体中がいたい……(|||´Д`」
カンナ「ボコボコでしたからね」
炎「よし、もういいぞ」
日奈子「ハァッ……ハァッ……」
日奈子は動きを止める
水分補給のため、スポーツドリンクを飲む
茜「お疲れ様です、日奈子様」
炎「最初に稽古をつけてもらった時から型は出来ていたから、覚えるのが早いな。茜のおかげか」
茜「いえいえ、他愛もない取り柄ですから。それにしても今日は随分とはりきってますね。何かありました?」
日奈子「ううん、ちょっと強くなりたいと思って」
いつもと取り組み方の姿勢が違うと全員は気付く
日奈子は強くなりたいと言っているが、本当の目的は
日奈子(もしまた財前さんとぶつかる時、弱いままじゃダメだ。少しでも同じ舞台に立たないと…)
ギクシャクしている彩耶華と対等に分かり合うためだ
この間明智遥にアドバイスをもらい、自分が何をすべきか考え、まず同じく戦えるように強くなろうと思ったのだ
炎「…まぁ良いが、前よりは動きが良くなってる。だが少し無駄が多いな。無駄を無くせば、次の攻撃をもっと早く出来るぞ」
日奈子「は、はい!」
炎「にしても、お前らはネクロハンターでもないのに稽古をつけたがるなんて…余程輝人の事を守りたいんだな」
航平(まぁ、それもあるけど…)
カンナ(アゲハ族として戦えるためにって言えないですね…)
稽古をつけてもらっている理由は、ネクロと戦っている輝人や炎に負担をかけないためだけではなく、アゲハ族としても戦えるようにしたい
そのために今稽古をつけている
茜「そろそろ暗くなってきましたし、終わりにしましょうか」
カンナ「あ、今日は私がアルバイトの日ですね。これから斑目探偵事務所に向かいます」
航平「俺はうどん屋、日奈子ちゃんは?」
日奈子「今日は休みです。バイトは明日からですね」
炎「…日奈子、少し話がある。いいか?」
日奈子「え?は、はい」
茜「どうかなさいました?」
炎「日奈子だけでいい、あんたは来るな」
茜「あら、かしこまりました」
日奈子「?」
2人きりで話したい事があるなんて珍しい
そう思った日奈子は炎についていく
2人だけとなると、日奈子が話し出す
日奈子「炎さん、なんですか?」
炎「お前なんで、そこまで強くなりたいんだ?」
日奈子「え?」
炎「お前から“強くなりたい”って言うなんて珍しいと思った。なんでそこまで強くなりたい?何かあったか?」
日奈子「…!」
話と言うのは、日奈子が何故強くなりたいかだった
勘が鋭いのか、炎は事情を聞く
日奈子「……炎さんは、すぐ分かりますね」
炎「お前が分かりやすいんだ、顔に書いてあるぞ?」
日奈子「え!嘘っ!?」
炎「まぁ、茜は分からなかったみたいだが。まさか…彩耶華のことか?」
日奈子「!」
すぐ彩耶華の事だと気付かれた
日奈子の反応を見て、炎は「やっぱりか」と言う顔をする
炎「だったら止めておけ、あいつと戦ってもお前が勝てる可能性は低い。すぐ負けるぞ?」
日奈子「い、いや財前さんと戦うわけじゃないです!ただ…」
炎「ただ、なんだ?言っとくが、あいつには関わるな。この前だって酷い目に遭ったばかりだろ?輝人の命だって狙うつもりでいるし、下手すれば今度こそお前の命もない。その命を粗末に扱うってなら別だが」
日奈子「…私はただ財前さんと話し合いたいだけなんです!そのためにも少しずつ、距離を掴みたくて…」
炎「他人のお前がどうしてそこまで介入したがるんだ?あいつの事は放っておけ、あいつだってそう望んでる」
日奈子「でも…それじゃあ財前さんはずっと1人のままですよ。いつまでも、自分の感情に囚われていたら、余計辛いだけです…!」
ギュッと拳を作る
彩耶華を救いたい気持ちでいっぱいなのが、伝わってくる
炎「…ったく、輝人がどうしてお前の事を“朝ドラヒロイン”だって言うのが分かった気がする」
日奈子「え?」
炎「あいつを救いたいのは勝手だが、下手すると、お前本気であいつに嫌われるぞ?ただでさえ迷惑がられてるのに」
日奈子「うぐっ…!(・・;」
炎「俺はあいつに介入するつもりはない。ましてやお前をサポートもやらない。やるなら中途半端は止めろ、それだけだ」
日奈子「!炎さん…」
その言葉は、言い方を変えれば「彩耶華を任せた」と言う発言だった
反対されるかと思ったが、炎なりに考えていたのだろう
日奈子(ありがとう、炎さん…!)
炎(…ったく、ここまでお節介な女は初めてだな。だが、なんか放っておけないんだよな…)