真アゲハ ~第57話 雲野 顕3~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



弘泰「亡くなった患者は、元々持病を患っていたんです。ですが1ヶ月前に急に容態が悪くなり、入院をしていたんですが…」

輝人達に亡くなった患者の資料を渡す
元医者である栗栖は資料をじっと見つめ、考える

航平「…栗栖さん、どう思います?」

栗栖「…突然持病が悪化したとしても、この持病なら、最適な治療を行えば1週間で退院出来るハズだ」

弘泰「あぁ、私もそう思ったよ。だが、毎回点滴は与えていたのに、良くなるどころか悪くなるばかりでね…。まさか、薬じゃなくて、毒を接種され続けていたなんて…申し訳ない」

航平「あ、いや…院長先生のせいじゃないですよ!」

栗栖「点滴は、確かに最適な物を使ってますね。なるほど、恐らくこの点滴の中に毒を入れられたか、あるいは…猛毒の物とすり替えられたと言うことになります」

橋川「酷い…!誰がそんなことを…!」

弘泰「橋川くんは、犯人を見たのではないのか?」

橋川「す、すいません…!誰かが病室から出たことは分かったんですが…、顔を確認することは出来なくて…!」

栗栖「…この痕は…」

資料には、亡くなった患者の写真が載っていた
弘泰が警察に届けるために、必要だと思って撮ったみたいだ
写真に写っている患者の写真は、酷いもので、紫色に腫れていたり、所々から血が流れている
その中で、栗栖は1つ気になる物を見つけた
左腕の2つの小さな穴だ

栗栖(点滴の痕…と、思いたいが、点滴を射つ場所は決まっている。だが、こっちの痕は…)

輝人「患者の部屋は、個室か」

患者の部屋も確認すると、そこは個室だった
となると、目撃者がいないため、犯人が分からない

輝人「監視カメラも丁度死角になってるし…今この個室は誰か入院しています?」

弘泰「いえ、そこには…ただ、2週間くらい前に別の患者さんが他の個室を使っていますね」

栗栖「!その患者さんは、何故ここに?」

弘泰「確か…癌とか言っていたね。詳しいことは、有馬くんに聞くか」

栗栖「有馬くん?」

弘泰「あ、そうか。知らないんだったね。栗栖くんがここを辞めた後で、新しく入ってきた医者だよ」

そう言うと弘泰は診察室へ移動する
話した有馬と言う医者は、今は診察中らしい

ー名古屋市総合病院 医者
 有馬 隆之(30)ー

有馬「はい、それじゃあ熱を見てみましょう。おでこを向けてくれますか?」

担当しているのは、小さな女の子だ
母親と思える女性と共に診察に来たみたいだ
女の子は、有馬とおでこを合わせる

女の子「せんせぇ、おでこつめたい」

母親「こら!すみません…!」

有馬「いえいえ、気にしないでください。うーん、ちょっと熱がありますね」

診察が終わると、親子は診察室から出ていく
終わったところで、看護師から声をかけられ、有馬は弘泰や輝人達のところへ向かう
栗栖の顔を見ると、声をあげる

有馬「栗栖千翔也先生じゃありませんか!看護師達が噂をしていたので、まさかかと思いましたが、名医に会えるなんて、光栄です!」

栗栖「あはは…名医は止めてください。もう医者ではないので」

有馬「おっと、失礼しました。私は有馬隆之と申します。どんな方だろうと、美しく治療してみせますよ」

航平(ん?美しく?)

輝人(これまた癖がありそうな…)

弘泰「有馬くんはすごいんだよ。腕も確かだし、うちに来る前には、“アンメディック病”の論文を公表して、賞を獲得した経験もあるんだ」

輝人「あんめでぃっく病?なんだそれ?栗栖知ってる?」

栗栖「いや、聞いたことないな」

有馬「私が発見した珍しい病気なんですよ。もちろん名付け親も、美しいこの私なんです」

自信満々に有馬は説明する

有馬「アンメディック病とは、人間の骨髄内の脂肪が何らかの原因で固まり、石になってしまう病気です」

航平「え…骨髄の中に脂肪の石?」

有馬「えぇ、骨髄と言うのは幹細胞が生まれる部位で、幹細胞は人の身体機能を維持する力を持っています。そのおかげで人間の細胞が再生する様になっています。ところが、そこに脂が固まり、石になってしまうと…」

栗栖「幹細胞が機能しなくなり、再生能力も失ってしまう。まさに“アン”メディックか…」

元医者である栗栖はすぐに理解する
輝人達3人はちんぷんかんぷんだ

栗栖「…ですが、これは癌とは別の物なんですか?細胞が異常を来すと言うなら、普通に癌だと…」

有馬「癌と違うのは、細胞ではなく脂肪だと言うことです。私が見つけた事例で、特に印象強かったのは、頭蓋骨に発見された事ですね」

栗栖「頭蓋骨に?」

有馬「えぇ、初めて発見したのがそれで…。その時の患者を助けることが出来ず、今でも申し訳ない気持ちでいっぱいです。その患者と同じ目に遭わせないためにも、アンメディック病を研究して、今では治す方法も分かったんです」

弘泰「革命を起こしたと言われてね。世界中を探しても、アンメディック病を治せるのは彼しかいないんだよ」

輝人「…」