真アゲハ ~第57話 雲野 顕1~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



患者「…ぐっ……あぁっ……!」

深夜の名古屋市総合病院
病室で、患者が苦しみ出す
その患者には、点滴の管が腕に通されているが、苦しそうだ
むくんだ手の指先の色が紫色に変わり、爪の間からは血が流れてきている

患者「…た…す……けっ……て………っ…!」

ゲホッ…!と吐血をすると、ガラガラ…と深夜なのに病室の扉が開かれる
そこに1つの影が入ってきた

?「……おやおや、勝手に吐き出したりして……。まぁ良いか」

その影は、患者の横に入ると、あるものを取り出す
先端に管が付いた注射器だ
左腕にそれを差し込むと、管を通して、血が注射器にゆっくりと入っていく
ある一定の量になると、注射器を引き抜いた
腕に絆創膏を貼る

患者「……ぜ………ん………ぜぇ………!」

患者は影に向けて腕を伸ばすが、痺れているのか動けない

?「……また明日採血の時間にお会いしましょう。それまで、意識があればですが……」





10月中旬、ハロウィーンまであと1週間となった
名古屋の街もハロウィーンの広告や色鮮やかな装飾で飾られている
輝人達もハロウィーンの準備をしていたのだが、そこに依頼人が現れた

ー名古屋市総合病院 看護師
 橋川 昌人(25)ー

橋川「橋川と言います。名古屋市総合病院で、看護師をしています」

輝人「看護師?」

栗栖(ん?どこかで見たことある名前だな…)

航平「粗茶です」

今回シフトに入っている航平は、橋川にお茶を出す
「ありがとうございます」と小さく礼をする橋川は、話をする

橋川「実は…探偵さんにお願いがあります」

輝人「はい、なんですか?」

橋川「…調べてほしいんです。“患者殺しの医者”を」

輝人「患者殺し?」

橋川から聞いた名前に、反応する
随分対称的な名前だと思ったからだ

橋川「僕が務めている病院に、最近怖いことがありまして…患者が、謎の死を遂げるんです」

輝人「謎の死って?」

橋川「それは…えっと…っ」

言おうとするが、思い出したくない物を思い出しているのか、顔が真っ青になる
それほど思い出したくない物なのだろうか?

栗栖「…看護師でも、事細かに言わないと行けないよ?震えないで、落ち着いて答えて?」

橋川「!」

橋川の様子を見て、黙っていられなくなったのか声をかける
一旦深呼吸をして、話し出す

橋川「えっと…謎の死って言うのは、全身が血まみれで、眼や口、指先から血が流れてて、手足が腫れていて、死んでいるんです。でも、周りには何もなくて、左腕に注射器を抜いた痕があったので、誰かに殺されたんだと思います…!」

栗栖「なるほど…」

輝人「それって…死因は何なんだ?」

橋川「…調べてみたら、爬虫類の猛毒が身体から検出されたんです」

航平「え?爬虫類!?」

患者の身体から爬虫類の猛毒が検出されたと聞いて、驚く
一番驚いたのは栗栖だ

栗栖「それは…本当かい?」

橋川「は、はい…!間違いないです…!それも1つの爬虫類じゃなくて、他にも様々な猛毒が検出されて…!」

輝人「…つまり死因は、毒による死か」

航平「じゃあ、患者殺しの医者って言うのは…犯人はお医者さんってこと?」

橋川「そう…だと思うんです」

輝人「思うって?」

橋川「…実は、犯人だと思う人とばったり会ったんじゃないかなって思いまして…」

輝人「え?」

犯人だと思われる人物と会ったと聞いて、さらに詳しく聞く

橋川「遅番の時に、深夜の病院を回っていた事があったんですが…その時、ある患者さんが『先生…!先生…!』って苦しみながら訴えていたんです…。隠れて見ていたんですが、そしたら、誰かが病室から出てきて…!多分あの人が犯人だと思ったんですが、怖くて…!」

輝人「警察とかに連絡は?」

橋川「いや…しようとしたんですが、誰が犯人か分からないですし、相談しようとしても、もし犯人に聞かれてしまったらと思うと…!」

報復が怖くなり、橋川は誰にも相談出来なかったと言う
だから誰にも言わず、探偵に依頼をしたと言う訳だ
話を聞いていた栗栖は、考えると、橋川に質問をした

栗栖「左腕に注射器を抜いた痕…。その患者の資料って持っています?」

橋川「え、あ、いえ…それは持ってなくて…」

輝人「…気になるのか?」

栗栖「あぁ」

航平「さすが元お医者さんだ…」

橋川「え?医者?…あなた、お医者さんなんですか?」

栗栖「!えぇ…と言っても、あなたが今務めている病院を3年前に辞めていますがね」

橋川「え?もしかして…栗栖千翔也先生ですか!?」

栗栖「はい、すいません今名刺を…」

橋川「わぁ!こんなところで再会出来るなんて!ぼ、僕です!橋川昌人です!」

栗栖だと分かった途端、橋川が笑顔になり、栗栖の両手を握る

栗栖「え?えっと…橋川…」

橋川「えっと…じゅ、10年前に白血病になって、助からないって言われていた…!」

栗栖「…あ!昌人くん!?あの時の昌人くんか!」