真アゲハ ~第53話 松房 浩司12~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



ボルケーノ『ギャアァァアーーーーーッ!』

ボルケーノの“核(コア)”を見事に破壊し、暴走を止めた
ボルケーノから黒い液体が蒸発し、元の松房の姿に戻る
だが顔は真っ青で、血管が浮き上がっていた

輝人「…ふぅ、終わったか」

松房「…た、助けてくれ…!し、死にたく…ない…」

炎「…その前に1つ聞きたいことがある」

苦しんで助けを求める松房に、炎は質問する

炎「さっきの生物は一体なんだ?誰かにやられたのか?答えろ」

松房「…し、知らない…男だ…!前髪が長くて、顔を隠していて…!俺に手を貸した、奴の仲間だって…!」

輝人「!…手を貸した奴?」

松房「そ、そいつの仲…」

ドサァァアッ…!
最後まで話そうとしていた松房は、灰になってしまった
炎は灰が風に運ばれる前に、カプセルに少量を入れる

炎「…“溶岩”か…」

輝人「こいつ、俺の格好してたって聞いていたが…もしかして黒幕がいると言うのか?」

栗栖「だとしたら…放火事件の目撃者もそいつかもしれない」

輝人「え?」

栗栖「実は、目撃者が存在しなかったんだよ」

昼間に始と航平が目撃者の件で調べてくれたが、消防隊員に証言した住人が存在しない事に気付いたのだ
そしてその人物が、輝人が犯人だと誘導し、松房に復讐を焚き付けた黒幕だ



?「あ~らら、もう終わっちゃったんだ」

トンネルの現場を遠くの建物から目撃していた男がいた
輝人の実兄・斑目アサギだ
その近くには、アサギには似合わなそうな、年配者の服が散らばっていた

アサギ「結構有力なネクロかなと思ったけど、“溶岩”が“火”に負けちゃダメでしょ。折角“目撃者の老人に化けて、きらちゃんの特徴を情報操作した”のにさ。きらちゃんが逮捕された後も、犯行をまた繰り返したからもう助けようが無いね」

アサギの口調から、もうお気付きであろう
今回の事件の黒幕はこの男だった
さらに、その近くにトンネルの中に現れたローブ姿の男も現れた

?「…あれで良かったのか?」

アサギ「うん、あまり長すぎると俺らの名前を話しちゃいそうだったからね。助かったよ」

ローブ姿の男も、アサギが向かわせたのだ
おかげでアサギの名前も出ずに、黒幕は謎のままに終わった



犬渕「…すまなかったな輝人、今ここでお前を釈放する」

輝人「ふぅ、これで牢屋での生活とはおさらばだな」

亜季「フンッ、だがいい気になるなよ?貴様が次に人を死に陥れる様な事をしたら、すぐに手錠を持って駆けつけるからな」

今回の件は、愛知県警の誤認逮捕だ
その事を謝罪し、輝人をその場で釈放する
その時だった

ペンギン「人を陥れる様な事なら、既にやっておりますわ!」

輝人「!」

ペンギンが輝人の隙を見て、輝人の喉を狙い、近代鉈を突き付けた
輝人はすぐに避けるが、まだ攻撃を仕掛けてくる

ペンギン「はぁっ!」

輝人「うおっ!何なんだよお前!止めろって!」

炎「おい!何してんだ!」

犬渕「止めるんだ!」

ペンギン「私は貴方を絶対に許しませんわ!」

輝人「はぁ!?何の事だ!」

日奈子「止めて!」

日奈子はペンギンの前に出る
輝人を守るように、両手をいっぱいに広げる

ペンギン「!邪魔をする気ですの!?」

日奈子「どうして輝人の事を殺そうとするの!?」

ペンギン「貴方には関係ありませんわ!」

日奈子「関係あるよ!声聞いて…まさかかと思ったけど…!貴方、財前さん?」

ペンギン「!」

茜「え?財前さんって…!」

立て続けに輝人の前に現れ、輝人を襲い続けて、日奈子は正体に感づいた
目の前にいるペンギンの正体は、財前彩耶華では無いかと予想する
ドンピシャに当てられたペンギンは、近代鉈を鞘にしまうと、背中を向ける

ペンギン「財前?誰ですの?人違いですわ!」

そう言って、ペンギンはその場を立ち去った

輝人「ふぅ、何なんだよあいつは…。炎、あいつ一体…」

炎「悪いが、俺もノーコメントだ」

そう言うと炎も走り去った
残ったのは輝人達と、犬渕と烏丸だけだ

栗栖「なんだったんだ?」

ゆに「てかなんで輝人さん、狙ってたの?」

始「さぁ?」

航平「お知り合い…ではない感じだった」

カンナ「日奈子さん、知ってる人なんですか?」

日奈子「う、うん…でも…」

立ち去ったペンギンが気になったのか、日奈子は心配をするのであった



彩耶華(…まさか、彼女に正体がバレるとは…)

その後彩耶華はペンギンの服を脱ぎ、ブラウスとチェック柄のスカートに着替えた
着替えるとすぐ地下鉄に乗り、現場を離れる

彩耶華(咄嗟の事でしたので、すぐに終らせることが出来ませんでした…。それに、あのネクロだって斑目輝人に…!)

ネクロを倒せなかった事、輝人に助けられた事、そして戦闘の途中で、昔を思い出してしまった事を反省した
地下鉄を降りると、そこからさらに歩き出す
暗い夜道を歩き、駅から徒歩で30分離れた所にある小さなアパートに到着する
そのアパートは、新築とは程遠い見た目で、ボロボロだった
皮が剥がれかけている扉に鍵を差し込むと、彩耶華は中へと入る
ここが彼女の家だ

彩耶華「……ただいま。お父様、お母様…っ」

小さなシューズケースの上に飾ってある写真を見て、悲しい表情を浮かばせたのだった


ー松房 浩司ー
アビリティを使用するも、何者かに埋め込まれた生物に呑まれ、オーバーネクロになってしまい死亡。
29歳。







○NEXT●

→輝人が過去に人を殺した!?
 日奈子を人質に彩耶華は勝負を挑む!
 一方中国のマフィア“羅刹天ーラクシャーサー”の劉は回復していく中で、張の紹介でとある人物と交流があり…!?