真アゲハ ~第53話 松房 浩司3~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



炎「…おい、鳥居の掃除終わったぞ?」

熱田神宮にいる炎(イェン)は、中にいるであろうツバサに声をかける
だが返事がない

炎(…?帰ってきたところを見かけたんだが、また出掛けたのか?)

返事がないので、聞こえていないのか、炎は中に入り声をかける
すると、奥から声が聞こえた

東郷「ハァッ!?輝人が逮捕されたぁ!?」

炎「…!」

それは東郷の声だった
ツバサから話を聞いたみたいだ
一緒に話を聞いた薫子も驚く

薫子「輝人くんがそんな…!」

東郷「しかも逮捕したのは犬渕警部より上の立場の人間とは…」

ツバサ「輝人が火を放ったなんて…そんなことしないわ。あの子は口は悪い時はあるけど、人を陥れる様な真似はしない。アサギとは大違いよ」

薫子「そ、そうですよね…!だってルチアちゃんと一緒にいましたし…そこはちゃんと学んでいるハズですし!」

東郷「しかし目撃証言があるとなると、状況は最悪だな…」

炎「なぁ、それ本当に輝人がやったのか?」

炎も気になり、前に出た

ツバサ「!…炎、どこから聞いていたの?」

炎「逮捕されたって、東郷が驚いたところから」

東郷「…全部だな」

炎「だが奴もやってないならすぐ逃げ出せばいいだろう、何故アビリティを使わなかった?」

ツバサ「人間相手にアビリティを使うわけないでしょ。それに使いたくても使えなかったのよ、特殊な手錠をかけられてね」

薫子「特殊な手錠?」

ツバサ「えぇ、実は…」

ツバサはアビリティを封じる特殊な素材で出来た手錠の事を話す
炎は輝人の事を少し考える

炎(…これまであいつを観察して来たが、ツバサの言う通り、他人を殺すような真似はしないハズだ。となると…別の誰かの仕業なのか?)

炎も、輝人がやったとは信じられなかった





愛知県警察署
ここに輝人は連行され、心配になった栗栖達は駆けつけた
ところが

栗栖「…え!?輝人が犯人じゃないって証明されるまで、釈放出来ない!?」

茉莉花「ごめんなさい、それしか言えないの」

屍人対策課の茉莉花から、そう伝えられた

日奈子「何でですか?輝人は本当に何もやってない…ハズです」

茜「何故自信無さげに言うんですか」

茉莉花「私だって信じられないわ、斑目くんがそんなことをするなんて…」

ゆに「新しい警視さんもチョー怖かったし、何なんですあの人」

茉莉花「烏丸亜季さん、15年くらい前に警察に入ったみたいだけど…何故かアメリカに行くことになってね」

航平「何故かって?」

茉莉花「それは分からない。本人も教えてくれないのよ。アメリカにいる間、何してたんですか?って聞いてみても、何も答えてくれなくてね」

始「あのアザって…警察になった時にもあったんですか?」

茉莉花「私が知る訳ないでしょ?」

カンナ「あの…それより、輝人さんが犯人だって言う事件の資料とかってありますか?」

烏丸の事で話が反れてしまったが、ここに来たのは事件の事を調べるためだ
輝人が犯人じゃない証拠が見つかるかもしれない

茉莉花「…本来なら貴方達に見せるものじゃないけど、斑目くんにはお世話になってるからね」

日奈子「茉莉花さん…」

以前は輝人を含めたネクロが嫌いだった茉莉花だが、輝人達と関わって来たことで、少し表情が柔らかくなってきた
それを日奈子は感じ取った

茉莉花は早速、日奈子達に資料を渡そうとした
しかし

亜季「鬼頭、余計なことはするな」

茉莉花「!」

そこに烏丸が現れたのだ

栗栖「あ、か、烏丸さん…」

亜季「一般人に資料を簡単に見せるな」

茉莉花「…ですが、彼らは斑目くんの事を信じているんです。彼のためにも、事件の詳細を」

亜季「必要ない、それより準備をしろ」

茉莉花「え?じゅ、準備?」

烏丸は資料を取り上げ、茉莉花に出動の準備をするよう話す
すると、署内にアナウンスが響く

『…中区の○○トンネルで、災害事故発生!建物が崩れ、道路が閉鎖!近隣付近を巡回中の者及び担当の者は直ちに現場へ急行せよ!繰り返す!直ちに現場に急行せよ!』

栗栖「なんだ…?災害?」

カンナ「建物が崩れたって…地震でもあったんでしょうか?」

始「でも揺れなかったよ?」

亜季「地震だけが災害ではない、行くぞ」

茉莉花「は、はい…!」

日奈子「…」