真アゲハ ~第12話 右代 政宗12~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



インフェルノ『グオオオオオオオッ!』

水を当てられたインフェルノは、怒りで爆発した
炎が最初より強くなる
インフェルノは口だけじゃなく、手からも炎を出しだす

ゆに「きゃあぁっ!」

栗栖「あつっ…!」

火力は強くなり、炎の攻撃も広範囲になる
柱や壁も炎で溶けて、そろそろ地下の広場が限界だ

茜「危ない!」

日奈子「きゃあ!」

日奈子の真上に天井の部品が落ちてくることに気が付いた茜は日奈子を庇うように飛び込む

茜「大丈夫ですか…!?」

日奈子「う、うん…茜さん、ありが…」

ふと茜の足を見ると、ガラスの大屋根の破片が刺さっていた
大きい物ではないが、血が流れている

日奈子「茜さっ…!」

茜「いえ…平気です。日奈子様を守れたなら…!」

航平「うわあぁぁっ!熱い!熱いぃぃっ!」

カンナ「輝人さん!止めてください!」

インフェルノ『グオオオオーーーーーーッ!』

航平とカンナが訴えるが、全く聞こえていない
敵意を剥き出しにして、炎を向ける

始「栗栖さん…!」

栗栖「輝人!止めるんだ!」

インフェルノ『グオオオオオオオッ!』

日奈子「輝人…っ!」

制御が効かず、暴れるインフェルノ
その姿を見て、日奈子は立ち上がる
そして、前に出た

日奈子「輝人!いい加減にしなさいよ!」

茜「日奈子様!?」

栗栖「日奈子ちゃん…!?」

インフェルノ『グルル…!』

インフェルノが日奈子の方を見る
見た目の熱さと恐怖に押し潰されそうになる日奈子だが、口を開いた

日奈子「“辻斬り”倒すって言ってたくせに…子供みたいに暴れてどうするのよ!今皆の迷惑になってるって事、分かってんの!?」

ゆに「うおお…ひなっちヤバ…!」

始「出てきちゃダメだ、日奈ちゃん!」

日奈子「あんたはいつも毒舌で、その上性格最悪なのに、さらにオーバーネクロになって暴れるとか勘弁して欲しいんだけど!」

インフェルノ『グオオッ!』

日奈子「!」

インフェルノが日奈子に向けて火を放つ
日奈子は避けるが、同時にインフェルノの元へと進み出した

航平「日奈子ちゃん!」

カンナ「危ないです!離れてください!」

日奈子「離れない!この際だからちゃんと言わせて!」

茜「いけません日奈子様!それ以上は…!」

日奈子「てか、あんたはそんな人間なの!?“辻斬り”倒すとか言ってたのに、簡単にオーバーネクロになっちゃう情けない人間だったの!?普段のあんたに幻滅してるってのに、さらに幻滅したんだけど!」

インフェルノ『グオオオッ!』

日奈子「…ルチアさんはあんたがオーバーネクロになってまで復讐とか望んでないと思うけど!なのに言うこと聞かずに何してんのよ!栗栖さんの注意だって聞かないで…!勝手なことばかりしないでよ!1人で戦ったりしないでっ…!私達をもっと頼りなさいよぉっ…!」

日奈子の声が鼻声になる
眼に涙を浮かばせながら、必死に伝える
インフェルノが、日奈子に近付く

栗栖「日奈子ちゃん!」

茜「日奈子様!逃げてください!」

日奈子「あんたばっかり辛い思いアピールとか…!ムカつくんだよねっ!1人で戦うとか…かっこよくてもダサいのよっ!あんたの大事な師匠は、私達にとって先輩なのよ!先輩の仇を取るのは、あんただけの特権じゃないっ!あんたばっかりずるいのよ!独り占めしないでよっ!」

インフェルノ『グオオーーーーーーッ!』

日奈子「…!」

インフェルノの日奈子の目の前に現れた
日奈子は焼けるような熱さに襲われる

カンナ「あぁっ…!」

始「日奈子ちゃん、逃げろぉっ!」

日奈子「っ…!早く目を覚ましなさないよっ!このままオーバーネクロのままでいいの!?え!?どうなのよ!斑目輝人ぉっ!」

インフェルノ『グオオオオーーーーーーッ!』

茜「日奈子様ァァーーーーッ!」

インフェルノが日奈子に向けて炎を放とうとした
日奈子はギュッ!と目を瞑る

その時だった

?『…止めろ!輝人!』

インフェルノ『…!』

インフェルノの頭に、ある人物の声が聞こえた
同時に日奈子の姿が、別の人物に変わりだす

その人物は、輝人がよく知る人物だった

?『…止めてくれ輝人…!私のために、君の街を壊すな…!』

インフェルノ『…っ!』

日奈子「…?」

攻撃されるのかと思ったが、インフェルノが何も仕掛けてこない
それどころか、止まったのだ

栗栖「輝人…?」

インフェルノ『…』

?『……本当の、君に戻ってくれ……っ』

その人物は、インフェルノに抱きつく
燃えていても、その人物の温もりが伝わってくる

インフェルノ(………師匠……っ)

…シュウゥゥゥ……ッ

日奈子「…!」

インフェルノの身体の炎が弱まり、左目の“核(コア)”の色が赤色から青色に変わりだす
炎が消えると同時に、ジュワッ…!と黒い液体が蒸発する
目の前に、現れた人物と共に、それは天高く昇る

インフェルノの炎が全て消え、日奈子の目の前に、ボロボロの輝人が帰ってきたのだ

日奈子「…!」

栗栖「…輝人…!」

輝人「……ひ、なこ……っ」

輝人の右目から、涙が流れた
それと同時に、力尽きたのか輝人は前に倒れる
日奈子はすぐ抱えた

日奈子「輝人!」

茜「斑目様っ…!」

ゆに「…嘘っ…!」

始「輝人さんがっ…!」

航平「帰って、きたんだ…!」

カンナ「灰にならない…っ!良かった…!」

オーバーネクロになった後だが、輝人は灰にならない
“核(コア)”を破壊せずに、元の人間の姿に戻せたのだ
インフェルノが消えたことで、周りの炎も完全に消えた

日奈子「…良かった…っ!良かったよ輝人…っ!」

輝人「……」