クチャクチャッ!
ガツガツ…!
姉「ど、どうしたの…?」
父親「止めなさい!フェリックス!」
ダニエル「…!」
鹿肉のステーキを食べてから数日、フェリックスは肉ばかりを食べた
肉を食べても、全く旨さが感じられなくなったからだ
野菜や魚、果物や調味料などの味は大丈夫だ
だが肉だけは旨さを感じられない
鹿肉だけじゃない
いつも食べていた牛、豚、鶏はもちろん、鳩、鹿、ウサギ、熊などのジビエ肉も旨さを感じられない
食べる事が出来たものが、突然食べられなくなっていた
フェリックス「肉が…肉だけが食べられないなんて…」
心当たりがあると言ったら、あれしかない
もしかしたら、ゾディアックの人体実験で舌がおかしくなったのかもしれない
フェリックスは舌に関係する病院へと行った
だが、フランスのパリの大病院の方まで出てきても、原因が分からなかった
薬も出されたが、何も変わらなかった
フェリックス(…もう、肉を食べることが出来ないのか…?)
食べられたものが食べられなくなって、フェリックスは心が折れそうだった
アレルギーでも病気でも苦手でもない
それなのに、肉だけが食べられなくなってしまった
さらに重なる悲しい出来事が起きてしまった
祖父のダニエルが、亡くなったのだ
フェリックスが肉を食べられなくなった事が、自身もショックだったのかもしれない
フェリックス「……じいちゃん……ごめんっ…!俺、食べられなくなって…!」
自分のせいで祖父が亡くなったと感じた
棺に向けて大きく泣き、謝った
そのフェリックスの姿を見て、家族はフェリックスを優しく支えるようにした
フェリックスは祖父が亡くなってショックは大きかったものの、日が経つに連れて、回復していった
だが舌は未だに治らない
何肉を食べても、旨さを感じられない
それに気付いてから、早くも5年が経とうとしていた
フェリックスは高校3年生
これからの進路を決めなくてはいけない時期だったが、フェリックスは決めていなかった
フェリックス(参ったな……結局高校も普通科のところを進学しちったし、かと言って将来困らないような職業がいいが…)
ヘレナ「フェリックス、どうするの?」
ー同級生
ヘレナ(当時17)ー
フェリックス「ヘレナ」
ヘレナ「フェリックスは料理が上手だから、シェフになったら?」
フェリックス「シェフ…か」
この頃、フェリックスの料理の腕は上がっていた
ダニエルから少し料理を教えてもらった事もあり、それから料理を何度もし、腕をあげていた
友達にも手作りの菓子や簡単な料理を振る舞い、評判が良い
ヘレナ「この前の手作りフランスパンも美味しかったし、なってみたら?」
フェリックス「……いや、いい」
ヘレナ「え?なんでよ」
フェリックス「……」
フェリックスは口元に手を近付ける
皆は「シェフに向いている」「将来店を持ちそう」と言ってるが、シェフになれるはずがない
肉の旨味も分からなくなった人間にシェフになれと?
そんなのは無理だ
シェフにならない、そう決めた
ヘレナ「今度の修学旅行楽しみだね!山を渡って隣の国に行くなんて、自然の中を進んでいくの楽しみ!」
フェリックス「…そうだな」
次の週で、飛行機を使わずにバスで隣の国に行くのだ
山の中を進む予定らしい
最後の修学旅行でもあるため、フェリックスは楽しみにしていた
……まさかあんな事件が起きるなんて、この時はまだ分からなかった
「わぁぁぁぁぁぁあっ!」
……グシャッ!