中島みゆきの「ファイト」という歌。『あいつは海になりました』というフレーズは結構解釈があるようだ。私の解釈は、詩そのまんま。実に素直な意味だと思っている。持論の根拠となるのは回帰魚、サケの人生だ。簡単に書いてしまうと。

 

 サケは大きくなりたい。そして子供も沢山残したい。この本能で旅をするのだ。母川回帰性とは、サケが生まれた川に戻り産卵すること。サケは大洋に出ても、何年たっても母なる川を覚えている。
 

 サケは淡水魚だ。秋、体長5cm程に成長した稚魚には既に海水耐性ができていて、春には群れで移動し降海する。稚魚は海に出るのだ。シロザケの当年魚は北海道沿岸を離れ千島列島沿岸やオホーツク海で生活し、水温が下がると北西太平洋に移動し越冬をする。その後は、アリューシャン列島やベーリング海に分布し、秋には体長37cm程度までに成長する。冬期はアラスカ湾に移り、夏はオホーツク海から北部太平洋を回遊する生活を繰り返す。

 

 海洋で生活した個体は母川に向け回帰する。成魚の全長は平均で70 - 80cmだ。親魚は川を上っている間、餌を食べない。産卵・放精後の親魚には、1か月以上生きて産卵床を守るメスの個体もあるが、大半は数日以内に寿命が尽きる。また、産卵期になると免疫力が低下し水カビ病にも感染するし、上皮が白く変色する。その白き体はサケの最期の姿なのだ。

 

 サケが母川に帰る遡上の風景。鱗は剥げ、皮もボロボロ、血まみれの奴もいる。それでも川へ帰って子を産む。ではそもそも何故、海に出たのだ? 海では大きくなるための栄養分が豊富だからだ。では何故、母川に戻って来るのだ? それは川には子供を産み育てる危険な場所が少ないからだ。ではどうやって、子供は栄養の少ない川で育っていくのだ? それは親の死骸から出た養分で栄養を賄うことができるからだ。

 

 全て理に適っているが、では何故、サケは大きくなりたいのだ? それはー、理想への戦いなんだろう、と人間の自分は思う。戦いへの挑戦、そのためのチケットを握りしめて、多くの仲間は海の藻屑になるのだ。サケの母川回帰率は養殖物もので3%だ。

 

 勝つか負けるかそれはわからない

 それでもとにかく闘いの出場通知を抱きしめて

 あいつは海になりました 

 

 学歴の無い子、虐めを看過した子、凌辱された子、老いた目をした子、そして海になった子ーー。全ての子にとって、人生の中で出くわす屈辱と口惜しさは尽きることはない。いろんな思いを持ちながら、しかし自分の人生が最高だったと、全うできたと納得できる人間は、やはり3%位なのかもしれない。

(2016/3/15 Hatena Brog )

 

※2019年7月、はてなダイアリーが終了。その後、はてなブログへ自動移行したのを知らずに、このブログを止めたのです。そこで2025年9月にアメプロに再掲載することになりました。