先日投稿した、トマトなしのトマトソースで使ったビーツの残りでスープを作りました。

「フィジカ」には、ビーツについての記述はありません。ビーツが北ヨーロッパに広く普及するのは、14~15世紀以降だそうです。ヒルデガルトが生きていた12世紀の中世ドイツには、まだビーツは存在していなかったようで、そうなるとヒルデガルトはビーツという根菜を知らなかった可能性が高いです。だから「フィジカ」にはビーツの記述がないのですね。

ですが現代のヒルデガルトの食事療法では、ビーツにはあらゆる肌のトラブルに有用であるとして、ビーツを勧められる野菜に加えています。では何故、ビーツが勧められる野菜に加えられたのか?それにはいくつか理由があるのですが、それについてお話しすると長くなってしまうので別の機会に。


ビンゲン市街地からロフスベルクの丘を登って行きヒルデガルト・フォーラムはもうすぐという道路わきにある石碑です。

これはヒルデガルトが盲目の少年の目を癒したという、この地域で昔から伝承されてきたヒルデガルトの癒しの奇跡として広く知られたお話を描いたものです。このお話は、聖ヒルデガルト修道院の教会のアーチ形の壁画に描かれてたヒルデガルトの生涯のエピソードの中でも描かれています。聖ヒルデガルト修道院の教会を訪れる機会があったなら、このお話がどのように壁画で描かれているのか探してみてください。

同じようにこの地域伝承として昔から伝えられてきた有名なお話が、神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ一世(バルバロッサ)への預言です。バルバロッサが婚礼の前日にヒルデガルトに助言を求めた際に、彼女は「水のあるところに気をつけよ」と警告したと伝えられているそうです。後にバルバロッサは溺死したのです。これらの話を結び付けて、ヒルデガルトは、バルバロッサの死を予言していたという「水の預言」の物語が生まれ、地域で伝承されてきたようです。

興味深いのは、ヒルデガルトの伝記として最も信頼性が高いとされる『Vita Sanctae Hildegardis(聖ヒルデガルト伝)』には、ヒルデガルトの癒しの奇跡が複数記録されているそうですが、上記の2つは記されていないそうです。学術的には、上記のお話は後世の信仰的伝承として、史料に基づく歴史的事実とは区別されているそうです。


トマトソースに見えると思いますが、トマトを使わず玉ねぎ、ニンジン,やビーツを使って作る、トマトなしのトマトソース(Tomatensauce ohne Tomaten)のスパゲッティ ヒルデガルト風です。

ドイツのヒルデガルトの料理本で、レシピが紹介されていました。ビーツ、玉ねぎやニンジンなどの根菜類の優しい甘さに、ワインビネガーの酸味が感じられて、これはこれでなかなか美味しかったでした。

何故、トマトを使わないトマトソースがあるのかと言うと、現代のヒルデガルトの食事療法では、トマト、ナス、ジャガイモやピーマンなどのナス科の野菜は、避けるべき食べ物とされているからです。でもやっぱりトマトソースが食べたいということで考え出されたのでしょうか?

ドイツ語ですが、このソースのレシピは↓のウェブサイトでも紹介されています。