カービングを始めたばかりの頃は、
自分もひどかった。。。と。
そう言っていた出口さんが、
今、目の前で作っている薔薇の
彫刻を見ていたら。
私ももう少し、
頑張ってみようかな。と。
そういう気持ちになったりもした。
だから、その薔薇の花を、
自分が満足いく程度に
彫れるようになるまでは。
続けてみよう。。。と。
そう決めたらあとはもう、
練習あるのみ。
大量に石鹸を買い込み、
家で黙々と彫るようになった。
レッスンでは、色とりどりの、
カービング用の石鹸を
使って作品を作っていたけど。
家では、百均の白い石鹸で、
彫る練習をしていた。
カービングに使う石鹸は、
柔らかめのほうがいい。と。
出口さんは言っていて。
その言葉を聞いた時。
私の中に、突然。
やりたいことが浮かんだ。
*******
昔。
肌がボロボロになって、
市販のコスメがほとんど使えなく
なってしまった頃。
私は、石鹸さえも、
自分で作ったりしていて。
そのうち、オーガニック製品が、
市販でも出回るようになると。
だんだん、めんどくさくなってきて、
手作りはやめてしまったけど。
でも。
自分で作る石鹸は、
色も香りも、天然素材で、
自分の自由に作ることができる。
あの頃。
アロマの精油の、天然の香りに
鼻が馴染んでいた私には。
カービングの石鹸の、
合成香料の香りは、ちょっと
強くて。。。
だから、いつか。
もう少しまともな作品が
作れるようになったら。
自分で手作りした石鹸を使って、
彫刻出来たらいいな。。。と。
そう思ったらちょっと、
ワクワクしてきた。
・・・とは言っても。
出口さんのように、
「芸術」の域にまで達することは、
自分には課していなかった。
美しい。。。ではなく、
可愛らしい薔薇を目指した。
それが出来るようになったら、
自分の好みの色と香りで
作った石鹸で、小さな薔薇を作って。
綺麗なガラスのお皿の上に
それを乗せ。。。
そこに、ハーブとか
ポプリを添えて。
玄関やトイレに、
ちょこんと置いておきたい。と。
そんな妄想が、
一気に広がり(笑)
なので。
そのあたりを、
目標に。
あの頃は、意外と真面目に。
毎日、石鹸を彫っていたりした。
*******
だからあの頃は。。。
結構、忙しかった。
ヒーリングのセッションに、
夫の仕事の手伝い。
夜は、石鹸を彫りながら、
歌の練習もして。
ダンスの練習は、
レッスンの日以外は、
ほとんどしてなかったけど。
ストレッチや
チベット体操は日課だったし。
そう言えば。
翻訳もやっていたっけね。。。
おまけに、瞑想とか、
そういうのも。
ホント。
どうやって、時間配分して
いたんだっけ?
・・・と、自分でも解らない(苦笑)
なんであんなに、
忙しくしていたのだろう。。。と。
ああいう生活も。
あれはあれで、楽しかったけど。
でも、今の私は。
もう、イヤだな。
あんなに、「隙間」のない
生活は(苦笑)
あの時、
私の場合は。。。
その多くが、趣味だったけど。
あれがもし、
仕事ばかりだったらと思うと。
「自分は何のために
生きているんだろう?」
・・・って、なってしまうのも、
解るような気がする。。。
そう言えば、あの頃は。
用事で出かけ、夜の通勤の
満員電車なんかに乗ると。。。
サラリーマンのおじさん達に、
敬意を感じたりしていたな。
家族のために、
頑張るお父さんたちとか。
それに比べて。
今の私は随分と、
軟弱になってしまったものだ。と。
私も昔はこうやって、
毎日毎日、通勤していたけど。
今はもう。。。
考えただけで、倒れそうになる(苦笑)
弱くなったものだ。。。と。
そう思った。。。
*******
石鹸彫刻は、、、
レッスン毎に、少しずつ、
彫るもののレベルが上がっていき。
とうとう、薔薇の花。
・・・というところまで、
やってきた。
薔薇は。。。
昔から、大好きな花だった。。。
特別な花だった。
でもそう言えば。
数年前くらいから、
それが少し、変化した。。。
今は、椿とか、牡丹とか。
ああいう花が。
ものすごく、美しく見える。。。
昔は、「和」よりも、
「洋」に目が向くことが
多かったけれども。
いつの間にか、
変わったな。。。と思う。
薔薇の花の彫り方を、
出口さんに教えてもらい。
家で、何個も何個も、
薔薇を彫ったけど。
本当に、泣きたくなるくらい、
不器用だった(涙)
ひとつも。
満足できるものが
出来ないのだ。
たった、ひとつも。
そんな私を横で見ていた娘が、
ある時言った。
「私も、彫ってみたいな」
・・・と。
カービング・ナイフの
使い方と。
薔薇の彫り方を、
簡単に伝えたけど。
あとになって思えば、
教えなくても多分。
娘は、見よう見まねで
作れたのだろうな。と。
そう思う。
彼女も何気に。
そっちの素質が
あったりするのだ。。。
誰に似たんだろう?と
思ったけど。
今、思い出した。。。
そう言えば、夫は。。。
昔は、金具細工の
職人だったんだ。。。
夫のお父さんが、
そういう人だったのだけど。
なんかもう。。。
今の今まで、
すっかり忘れていた(苦笑)
*******
あの時。
娘は、初めてナイフを触って、
初めて石鹸を彫ったのにも
関わらず。
「え?なにそれ。
なんで、彫れちゃうの?」
・・・というくらい、ササッと、
薔薇を一個、彫り上げた。
それはもちろん。
出口さんが彫る薔薇には、
まったく及ばない。。。
初心者が彫るような、
平べったい薔薇だったけど。
でも。。。
私が作るものよりは、
数倍、綺麗で。
なんだかあの時は、
遠い目になった(苦笑)
モーツァルトのそばにいた
サリエリってきっと。
こういう気持ちだったんだろうな。
・・・みたいな(笑)
まぁ。
それは、大げさな
喩えだけど。
でもやっぱり。
もともとの素質というか。
向き、不向きというのは、
あるものだ。。。と。
それを、しみじみ
感じたりした。
昔。
娘がバレエで、
あるオーディションに落ちた時。
心配した先生が、
わざわざ電話をかけてきてくれて。
娘は全然元気で、
ケロッとしてますよ。と
伝えると。
先生は言っていた。
「そう。よかったわ。
こういうことで、ポッキリ
折れちゃう子もいるから」
・・・と。
私は実は。
ポッキリ折れるタイプ
だったりする。
だから。
サリエリのような
粘り強さは、もっていない。
だからあの時。
娘のそれを見た時。
「なんだか。
もう、いいかな」
・・・みたいな気持ちになった。
あの頃はちょうど。
ダンスを手放そうとしていた
時だったとも思う。。。
デバダシ・スタジオの、
年末ショーの頃。。。
*******
つづく