ただ、あの日以来。。。
私は、あの神社のことが、
無性に気になるようになった。
そして、散歩に出れば必ず、
そこに寄る。。。なんてことを、
結構繰り返していたのだけど。
でもなぜか。
なんとなく、怖くて。
神社の前までは行っても、
その鳥居をくぐることは、
躊躇していた。
調べてみるとその神社は、
大きな川が近くにあるせいか。
祀られているのは、
ミヅハノメという水神様で。
もしや。
水神様に呼ばれでも
しているのかしら?
・・・なんて思ったりもしたけど。
よく、解らなかった。
ある日、意を決して、
その神社の鳥居をくぐった。
なんてことない、小さく、
寂れた神社で。
でも、拝殿の中は、
綺麗に掃除されているのが、
外から見ても解った。
薄暗い拝殿の中に、
招き猫の置物があるのが見えて。。。
その置物の目が。。。
なんだかじっと、
こちらを見つめているような
異様な感じがして。
私はそこから目が離せなくなった。
でも、そのあと。
心臓が止まりそうになった。
招き猫の置物だと
思い込んでいたそれが、
いきなり動いたのだ。
それは、
なんと、本物の猫で。
しばらくお互い見つめ合ったあと、
あちらが、ピョンと。
その台から飛び降りた。。。
私はもう。
腰が抜けそうになった(苦笑)
それにしても。
拝殿の中に猫なんて。
一体、どこから入ったのやら。。。
・・・と。
そんなことはあったけど。
そこでは特に、何も感じず。
神様の気配みたいなものも、
ほとんど感じず。。。
私にとってはそこまで、
重要な神社ではないな。。。と。
そういう印象を持った。
*******
それなのに。。。
いつまで経っても、
毎日毎日。
その神社のことが、
忘れられないのだ。。。
気になって気になって、
仕方なかった。
ある時、とうとう。
こんなに気になるのなら、
素直に参拝に行けばいいのでは。
・・・という気持ちになり、
娘に言った。
「これから、あの神社への参拝を
日課にしようかと思うんだけど」
・・・と。
その時は娘は。
「ふーん。いいんじゃない?」
・・・としか、言わなかった。
ただ私も。
そうは言ったものの、
仕事などに追われて。
なかなかそれを、実行に
移すことが出来なかったのだけど。
それでも。
神社への思いは消えなかった。
*******
あの頃は。
ヒーラーという職業柄。
自分に対する日々の浄化も
結構、マメに行っていたのだけど。
ふと、なんとなく。
その日は、除霊でもしてみるか。
みたいな気分になった。
除霊と言っても。
ゼニスには、除霊セットがあるので、
私はただ、その手順を行えば
いいだけなのだけど。
すると、あの時は。
ルービックキューブのようなものが、
頭の中でガチャガチャと
動くような感覚がして。
それが、カチッとハマったと同時に、
何かがスッと。
身体から抜けた感じがした。
それが抜けたあとになって、
初めて、気がついた。
今までずっと、
自分の頭の中に、霞のような
ものがかかっていたことに。
しばらくの間はそれがずっと、
通常状態になっていたので、
まったく違和感なかったけど。
それが取れてみると、
ハッキリと解った。
あの、モヤの存在が。
・・・と同時に、「あれ?」となり。
今までの自分。。。
何をやっていたんだろう?
・・・と、思った。
あの神社のこと。
どうして今まで、あんなに必死に、
あそこに行かなければ。。。と。
そう思っていたのか。。。
強迫観念。。。とまでは
いかなくても。
なんだか、「そうしなければ」
みたいな思いが、自分の中で、
すごく強くなっていたこと。
それが、「異常」であったことに、
やっと、気づいた。
娘にそれを話すと、
彼女はこう言った。
「実は。今だから言うけどさ。
ママがね。
あのママがね。
あんなこと言いだすなんて、
一体どうしたんだろうと思っていたよ」
・・・と。
娘は私のことを、よく解っている。
だから、いつもの私が、
神社参拝を日課に。なんて。
そんな、信心深いことを
言い出す人ではない。
・・・ということもまた、
彼女は、重々解っていた。
そういう、身近な人から見て
私は、変だったのだから。
おそらく、本当に、
変だったのだろう。
けれども。
ゼニスの除霊をするまでは、
自分が自分でなくなっている自覚は、
全くなかった。
自分の中に浮かんできていた
感情や思考が。
自分以外のものであるなんて。
考えもしなかった。
そういうことは。
それが抜けた後に。
初めて気づけるのだ。。。
以前の、大通りで転んだあとの、
あの異常なイライラ感も。
あれもきっと。
そういうものだったのだろう。。。
あぁ。。。
憑依状態というのは。。。
こういう感覚なのだな。。。と。
「乗っ取られる」って。
こういう感じなんだな。と。
そういう経験を通して。。。
私はそれを、実感した。
*******
つづく