ずっと土下座したまま、
泣いている店長。
その姿をシラケた目で眺めながら、
何も言わない従業員達。
あの時。。。
私達は、彼を赦す気もなかったけれども、
責める気もなかったのだと思う。
彼に対して、もう、なんの感情も起こらない。
そういう感情が、もう既に死んでしまっていた。。。
つまり。。。
みんながみんな。
店長のことを、見捨てていたのだ。。。
シーンとしたままの数分間が過ぎ。
さすがに、気まずさを感じたのか。
進行役のおじさんが、
口を開いた。
「〇〇君(←店長)のやったことは本当に、、、
赦されることではないのは解ります。
ただ、彼はまだ若くて、家庭もあり。
今後の彼の将来のことを考えると、、、
一度の失敗で、すべてを奪ってしまうのは、
どうなのか。。。と。
なので、話し合いの結果私達(重役たち)は、
彼をこのまま、会社に残すことにしました。
しばらく自宅待機はしてもらいますが、
その後は、復帰してもらうことになりました。
今後、彼がこのお店の方々と接触するような
ことは、我々が決してさせません。
みなさんが、彼と顔を合わせるようなことは、
今後絶対に、起こらないようにします。
明日から、他の人にこのお店の
店長をやってもらいますから。。。
だからみなさん。
彼も心から反省しているようなので、
どうか、赦してやってください」
おじさんはそう言うと。
私達に頭を下げた。。。
そんな「模範的」な言葉を。。。
なんて美しい言葉なんだ。。。
・・・と、「部外者」の人は
感じるのかもしれないような。。。
そんな、一見感動的な話を、
おじさんは語っていた。
もちろんこれは。
おじさんの本心なのだとも思った。
「な?これから君も頑張らないとな」
・・・と言って、おじさんは店長の肩をたたき、
彼を立ち上がらせた。
うつ向いたまま、「はい」と。
店長は、力なく頷いた。。。
その時の店長の表情。。。
目をうるませて。。。
思いきり反省している顔をしている
はずなのに。。。
私には、その顔が、、、
ずる賢そうに、ニヤリと笑っているように
見えていた。。。
そして。
「あーあ。おじさん達、
すっかり店長に騙されちゃって」
・・・と、思っていた(苦笑)
*******
店長のあの時の表情が。。。
重役のおじさん達には、本当に反省している
ように見えていたのかもしれない。。。
私達、従業員にはそれは、
歪んで見えていたけれども。。。
どちらの見え方が正しかったか。
なんてことは、解らない。
人はみんな。。。
自分の心を相手に投影して、、、
そうして、そこに映し出された像に反応する。。。
私は。。。
長い間、店長と接していくうちに。
ああいう店長をそこに映し出すような心を。
自分の中に育てていたのだと思う。
だから。
店長の本心など解らないけれども。
私の中の店長は。。。
ああいう人になっていて。
そこまでは、特に問題はない。。。
だって。
それが、人間ドラマの基本だから。
ただ。
その「像」に対して。
自分がどう反応するのか。。。
・・・という部分は、自分に責任がある。
ただ無意識に反応するだけでは。
ひとつのドラマを、完全に堪能しきれずに。
何度も何度も、
同じことを繰り返していくだろう。。。
重役のおじさん達の前で、、、
日頃店長が、どういう自分を見せていたのか
までは解らないから。
なんとも言えないけど。
もし、おじさん達が本気で、
店長が反省していると感じたのなら。
それはそれだ。。。
ただ、おじさん達も実は、心の底では。
「彼は嘘をついているな」
・・・と解っていたとして。
そのうえでなお、彼を赦し。
彼の将来を本気で案じて、舞台から
追放しないことを選択したのなら。
それもそれ。
そして私達従業員が。。。
毎日毎日、店長と共に過ごしてきた
私達が。
「今彼を、赦してはいけない」
・・・という結論に至ったのも。
それはそれだ。。。
結局。。。
自分が選択したことに、
自分がしっかりと責任を負うことを
自覚していれば。
その選択は。。。
どれも間違っていないのだと思っている。
そして出来れば。。。
その選択は、「愛」に基づいていたい。。。と。
私は、そう思ってる。。。
それは、人としての情の上での
愛ではなくて。。。
それは。。。
「すべての人が自分である」という
「感覚」としての愛。
そして、あの時は。。。
厳しい態度で彼を突き放すことが。。。
私の、愛の表現だった。。。
*******
そうやって、あの店長は。。。
私の物語の舞台から消えていき。。。
あの話し合いの翌日から。
お店の中が、いろいろ変わっていくことになる。。。
面白いものだ。。。と思った。
私がこのお店に来たのは、、、
「こっそりヒーラーの修行」が目的で。
たまたま働きだした、、、
「独裁店長と愉快な仲間たち」がいた
このお店は。。。
そんな修行に、なんてぴったりな場所なんだ。
・・・と。
当初は、そう思っていた。
思いが現実になる。。。って。
こういうことか。と。
そんな風に思っていた。。。
でも最後には、疲れてしまって。
今の自分の器を認めることになった。
それは、「人間Lyrica」には、
一見、挫折。。。のようにも見えた。。。
自分の身の丈を、しっかりと見据えることは。
私の自我にとっては結構、
屈辱的なことでもあった。。。
でも。
一度認めてしまうと、それまでの葛藤が
まるで嘘だったかのように。
すごく、ラクになった。。。
サレンダー。。。
自我がその状態になった瞬間。。。
あの店長は、私の前から消えていった。
そして私はあの時、確信した。。。
あぁ、、、そういうことだったのか。と。
自分の現実の流れを創っているのは、、、
思考ではなくて、魂なんだな。。。と。
思考はせいぜい。
それに、表面的な飾りつけを
しているくらいだ。。。と。
私の頭は、「ヒーラー修行」を目的として。。。
一見、それが叶ったように見えていたけど。
この現実を生み出した、「魂」の目的は、
実は全然、違うところにあり。
その魂の目的とは。
「己を知ること」
・・・だったのだ。。。と。
ヒーラー修行というのは、、、
表面的な装飾。。。
今の自分の身の丈を知り。。。
私の自我がサレンダーして。
背負っていた荷物をひとつ、降ろした瞬間。
そこに気づくために必要だった「現実」は。
私の目の前から、消えていった。。。
あのお店での一連の流れで。。。
この世って、、、
そういう風に出来ているんだということを。
私は、、、心から実感した。。。
*******
つづく