翌日から、私に対する店長の態度が
急変した。
風当たりが強くなり、
それはまるで、パートの彼女に対する態度と、
同じような感じになっていた。
次から次へと無理難題をふっかけてくる。
それをこなすと、また更にハードルをあげてきて。
ちょっとでもミスしようものなら、
ここぞとばかりに攻撃をしかけてくる。
・・・みたいな。
パートの彼女をはじめ。。。
お店の子の多くはだいたい、そんな店長からの
プレッシャーに飲まれてしまって。
だから、オロオロしてしまったり。。。
手が震えて、カップを割ってしまったり。
それで店長に厳しく叱られて。
パートの彼女は、よく泣いていた。。。
「どうしてみんな、あんなにカップを
割ってばかりいるんだろう?」
・・・と、店長は不思議そうな顔をして、
ブツブツ言っていたけど。
「それは、お前のせいだ~~!!」
・・・と、私はいつも、、、
心の中で叫んでいた(苦笑)
だって。
彼がお休みの日には、誰もカップを
割らないのだから。。。
そうやって、みんながオロオロする中。
私だけは、闘志に燃えていた。
・・・というか。
こういう厳しさには、慣れていた。。。
バレエの世界で。
だから。
店長の風当たりが強くなればなるほど。
私は、仕事のスピードがあがり。
出来る人(笑)に、なっていった。。。
バレエの先生たちも。。。
それはそれは、恐かったけど。
でも、彼らの根底には「愛」があった。
店長の厳しさの根底に、そういう「愛」が
あったかどうかと言えば。
あの頃の私は完全に、、、
それはないだろうと。
そう思っていた。。。
あれは単に、八つ当たり。
ストレス発散。。。なのだと。
当時の私には、映っていた。。。
ただ彼も。。。
役者の世界にずっと身を置いてきて。
結局、ああいう世界もバレエと同じように、
ある意味、体育会系というか。
スパルタ的な世界だったのだろうから。
そういうやり方についてこれない人が、
彼にとっては、「弱い人」に見えていたのは。
確かなのだろうな。。。なんて思う。
そして。
彼は本当に、私によく似ているのだなと。
そう思った。。。
「なんで、こんな簡単なことが
みんな出来ないんだ?
本当に、バカばっかりだ」
・・・と。
そう言う彼を見ながら。。。
彼がイライラして。
周りに相当なプレッシャーをかけて。
みんなが、オドオドしながら。
店長の機嫌を伺いながら。。。
そうやって。
お店の空気が悪くなるのを感じながら。。。
私も家で。。。
夫に似たような仕打ちをしていなかったっけ?
・・・と(苦笑)
なんだか色々。
反省させられたりもした。。。
だから店長はまるで。。。
私の中にある欠点を。。。
強調して見せてくれている人に感じたりもした。。。
*******
そうやって暴走する店長を見ながら。
このお店で、一番癒されないといけない人は、
実は、この人なのだろうな。と。
そう思っていた。
彼の深いところに。
何か、満たされない思いが。
きっと、あるのだろう。。。と。
ずっと昔に、隣の伯母が言っていた。。。
「この世の中、悪い人なんていないのよ。
善い人もいないけどね」
・・・と。
私もそう思ったし。
今も、そう思ってる。
だから、誰かのことを。
「この人は悪い人だ・良い人だ」
・・・と、簡単に判断することって。
なんだか、虚しく感じる。
そして私は。。。
19歳でああいう体験をしたから。
すべての人の根底にある本質は、
たったひとつしかない。。。とも思ってる。
そして、その本質のままに生きられたら、
すごくラクなのだけど。。。
そういう人は、滅多にいない。。。
みんな。。。
この地上で、様々な経験を繰り返すうちに、
「個性」というフィルターを創り上げて、
それを纏い。。。
その「フィルター」を、自分だと思って、
私達は、ここで生きている。。。
それが、人間を生きる。。。ということで、
それはそれ。なのだけど。
でもやっぱり。
店長みたいな人を見ていると、、、
「あぁ。。。もっと、ラクに生きたらいいのに」
・・・と。
そういう、余計なおせっかい。
みたいな気持ちが湧いて来たりするもので(苦笑)
そうやって、あの頃の私は。
余計な荷物を背負いまくりだったのだけど(笑)
あの店長が、、、
自分の中にある「美」を。
その本質を。
どうやったら、もっとスムーズに
表現できるようになるのだろうと。
そのためには。
私は、どう在ればいいんだろう?と。
そんなことを考えながら、、、
お店で試行錯誤する日々が、
しばらく続いていった。
*******
けれども。。。
彼は、ものすごく手ごわかった(苦笑)
いつまで経っても一向に。
その、分厚い扉の向こう側の、
「本音」を漏らしてくれることは。
決してなかった。。。
ヒーラー修行。。。という観点から見たら、
彼は本当に、ハイ・レベルな修行を
させてくれた人だったと思う。。。
だからやっぱり。
何かの縁があるのだろうし。
深いところでは、感謝していた。。。
でもある時、、、
私はとうとう、疲れ果て。。。
そして、葛藤した。。。
一度自分でやる。。。と決めたことを、
途中で投げ出すのは。。。
自分のプライドが許さない。。。というか。
自分自身に負けた気がして、
なんだか、イヤだった。。。
けれども。。。
この先、意地になって続けたとしても、、、
自分がボロボロになるだけのような気もした。。。
なぜなら。
「意地っ張り」
・・・という点では。
私よりも、店長のほうがかなり
上を行っているような気がしたから(苦笑)
負けを認める。。。
・・・ということも、必要なのでは。。。と。
その時、思った。
そして同時に、自分の傲慢さを知った。
お店の他の人達からいつも。
「Lyricaさんのおかげで癒されました」
・・・と言われ。
私も少し、調子に乗っていたのだ。。。
自分になら出来る。。。と。
きっとどこかで、
そう思っていたのだ。。。
あの時。。。
あぁ、、、
もっと、謙虚にならないとな。と。
心の底から、そう思った。。。
ここはちゃんと、自分の器の大きさを知り。。。
まだまだ出来ない自分。というものを、
ちゃんと認めなくては。。。と。
そう思った。。。
・・・と同時に。
分を超えて、頑張りすぎて。
実はかなり疲労していた自分を。
少し、労わらなくてはな。。。と思った。
それに気づいた時。
自分の周りのエネルギーが、何か
変わったのを、なんとなく感じた。
パズルが解けたような感覚がして。。。
腑に落ちた。。。というか。
あれは多分。。。
「自我」が、「魂」からのメッセージに、
気づいた瞬間だったのだろうな。と。
そう思う。
*******
その翌日。。。
早速、店長に申し出た。。。
「お店を辞めさせてください」
・・・と。
すると店長は、、、
すごいびっくりした顔をして。
「え?」
・・・と言った。
その時少しだけ、彼の素顔が見えた。
適当に作った理由を伝えて。
「・・・というわけで、申し訳ありませんが、
辞めさせてください」
・・・と言うと。
「そうですか。。。解りました」
・・・と、またすぐに。
いつもの彼に戻っていた。
ただ。
辞めるといっても、大人の常識として。
あと一ヶ月はそこに残ることは
約束した。
今まで、すごく熱心だったことが、、、
次の日にはもう、どうでもよくなっていることが、
私にはよくある。。。
エネルギーが、変わってしまうから。。。
あの時も。
自分の中のエネルギーがもう、
すでに変わってしまっているのに。
あと一ヶ月も、ここに留まるのは、
ちょっと、キツイな。。。
・・・なんて思っていたけど。
でも。
ここで人間として生きていく限り。
あまりに自由人すぎるのは、
人に迷惑をかけてしまうから。
そのあたりのバランスもまた。
大事だよなぁ。。。と、自分に言い聞かせていた。
「お店を辞めます」と、店長に伝えた日の夜。。。
もしかすると、次の日の夜だったかな?
突然、お店の女の子から、
電話がかかってきた。
それは、あまりに珍しいことだったので、
どうしたのだろう?と思ったのだけど。
その電話の内容が、、、
あまりに予想外過ぎて。。。
衝撃的すぎて。
私はしばらくの間。
呆然となってしまったのだった。。。
*******
つづく