そのパーティーは、立食パーティーで、
風の彼女と私は、メアリー先生にお祝いの
花束を渡すと、そのあとはふたりで、会場内の、
美味しそうなお料理を物色していた(笑)
何がどうなってだったか。。。
キッカケは忘れてしまったのだけど、
気づくと私たちは、知らないおじさん達と
話していた。
そのおじさんは、とっても紳士な感じで、
芸術のことにも造詣が深く。
そのお話が面白かったので、
おしゃべりも盛り上がり。
そして、話の流れの中、、、
そのおじさんの一人が。
「ベジャールとは知り合いでね。。。
この間も会って。。。」
・・・みたいなことを言いだした時は、、、
私は一瞬。。。
今、自分はどこにいるんだろう?
一体、誰と話しているんだろう???
・・・みたいな気持ちになった(笑)
「ベジャールって、あのベジャールですか?」
・・・と訊くと、おじさんは。
「うん、そうだよ」
・・・と、答えた。
*******
ベジャール。。。
モーリス・ベジャールというのは、
バレエ界では知らない人は
いないくらいの大御所。
振付家。
彼の『ボレロ』は超有名で、、、
元オペラ座エトワールのギエムが数年前、
その引退を、、、
最後の舞台を、この『ボレロ』で飾った。。。
しかも、この日本で。
あの時のジルベスタのカウント・ダウンは、、、
本当に、最高だった。。。
今観ても、感動で泣きそうになる。
この『ボレロ』の振付家。。。
そんなベジャールと知り合いの人が、、、
なぜ、ここにいる???
なんで私は、
そんな人と、普通に話しているんだろう?
・・・みたいな、変な感覚になったのだった。
こういう感覚は、昔も経験したことがあって。
それは、翔子ちゃんや、翔子ママと一緒に
食事をしていた時のこと。。。
本来なら、交わるはずのない世界と、
なぜか、身近に交わってしまったみたいな、
そんな、変な感覚。。。
遠いはずなのに、なぜか近い。。。
・・・みたいな。
メアリー先生のパーティーで、
あのおじさんとベジャールの話をしたのは、
このギエムの引退よりも何年も前のことで。。。
あの頃はまだ、ベジャールも生きていた。。。
ベジャールと言うと、私はなぜか、
ゲーテの『ファウスト』の中に出てくる、
メフィストフェレスが浮かぶ(笑)
顔のイメージのせいかな?(笑)
そんな話も、、、
あのおじさんとしたような気がする。。。
そして。。。
メフィストフェレスが、、、みたいな話を、
普通に出来てしまうことが。
なんだかとても、嬉しかったのを覚えてる。
*******
ふと見ると、近くに火の彼女がいたので、
声をかけた。。。
「今日はお疲れさまでした。
とっても素敵だったよ」
・・・と。
すると、彼女の顔がパァッと明るくなり、、、
そして不思議なことに、その瞬間からいきなり、
彼女との距離が縮まったような感じがした。
「ありがとうございます!!!
あの、あなたのこと、アンナマリアって
呼んでもいいですかっ?」
・・・と、彼女は唐突にそう言った。
初めてスタジオに行った時に、
挨拶をして以来。
彼女とは、まともに話したことはなかった。
風の彼女とはあれ以降も、よく、
いろんな話をしていたけれども。
火の彼女とは、少し遠いところにいた。
そして今日、やっとまともに会話したと思ったら、
いきなり、それ???
しかも、「アンナマリア」って何????
・・・と(笑)
「えーと。。。
なんで、アンナマリアなの?」
・・・と訊いてみると。
「うーん。わかんないけど。とにかくあなたは、
アンナマリアって感じなんです!!!」
・・・という返事が返ってきた。
そして、、、
「ね?先生。彼女はアンナマリアですよね!」
・・・と、メアリー先生まで巻き込み。
「あ、、、あぁ、、、そうね」
・・・と。
多分、メアリー先生は適当に話を
合わせたのだと思うのだけど(笑)
「ほらね~~、じゃあ、決まり!
今日から、アンナマリアって呼ぶ。
アンナマリア、こっちで一緒に食べよ~~」
と、火の彼女はそう言うと。。。
私は彼女の勢いに、
そのまま、流されていった。
アンナマリア云々はよく解らないけど。。。
でも私は、なんだかんだ言って、
キリスト教とはご縁があったし。。。
彼女はそういうの、匂いで察知したのかしら?
・・・と、そんな風に思ったりもした。
なんというか。。。
彼女はさすが、劇団員というか。。。
「感覚」で物を捉える人なんだろうな。と。
そんな感じがした。。。
*******
火の彼女の周りには、人がたくさん
集まっていて。
メアリー先生もそこにいて。
他の生徒さん達もほとんどが、
その輪の中にいた。
風の彼女と私だけが、放浪して、
全然違うところで話していたんだ。と。
その時初めて気がついた。
隣に座っていた生徒さんのひとりが、、、
「さっき、あなたと話していた人。
メアリー先生のパートナーさんだよ」
・・・と、教えてくれた。
メアリー先生の交友関係には、、、
さっきの五木寛之さんといい、
ベジャールといい。
なんだか、有名人が多そうなのに。
メアリー先生は、そんなことには、
一言も触れたりはしなかった。
西洋は、個人主義だからなのだろうけど。
誰かの手柄は、誰かの手柄でしかなく。
その人と知り合いだ。。。ということは、
特に、自慢にもならない。
まぁ、当たり前のことなのだけど。
日本では、全体主義の意識が強いせいか。
そういうの、、、
ちょっと、違った捉え方をするところが
あるような気もしないでもない。
そう言えば。
以前、英会話の先生も言っていたな。
日本人に、自分はリバプール出身だというと、
いつもだいたい。
「あ、ビートルズと同じなんだ。
すごいな~」
・・・とか言われるんだけど。
自分は自分であって、
ビートルズではないのだから、
関係ないんだけどね。
・・・と。
*******
気づけばその輪の中で、、、
あれこれ、話が盛り上がっていた。
私も楽しくて、
ついつい、はしゃぎ気味になっていた。
ふと気づくと、風の彼女がいない。。。
「あれ?あの子は?」
・・・と訊くと、火の彼女が、
「あぁ、帰ったみたいよ」
・・・と言ったのだけど。。。
彼女のその表情から、、、
なにやら、不穏な空気を感じ。。。
なんとなく、イヤな予感はしたのだけど。
そこから、、、
予想通りの展開が始まっていった。
*******
つづく