そのコーヒーショップの本社は都内にあり。。。
私が学生時代にバイトをしていた店舗は、
本社直営店の中でも、古いほうのお店だった。
結婚後、子育てが一段落した頃、
学生時代に働いていたところと同じ店舗で、
再び働き始めたわけだけど、
その店舗は、その頃に閉店になった。
閉店になった理由は、その店舗の近くにある
駅の中に、同じ系列のコーヒーショップが
出来てしまったことによる、経営不振だった。
駅ナカに出来たそのお店というのは、
本社の直営店ではなく、本社とフランチャイズ
契約をした会社が経営するお店だったりした。
あのお店が閉店になった時、、、
私はそれを機に仕事を辞めたのだけど。
もし継続して働くことを希望すれば、
その駅ナカのお店が雇ってくれるという
救済処置があったので、閉店後、お店に移動した人も、
たしか、数人いたのだったと思う。。。
あれから、何年か経ってまた、、、
私は同じ系列のコーヒーショップで働くことに
なったのだけど。。。
そのお店に入ってしばらくたった頃、、、
今現在、自分が働いている店舗を経営している
フランチャイズ会社が、以前のあの、駅ナカの
お店を経営している会社と同じだったと知った時。
なんだか、、、
因縁めいたものを感じたりもした。
因縁。。。というか、、、
世間は狭いな。。。と。
そんな風に思った。。。
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美大の彼女やギターの彼。
そして、パートの彼女とともに、
オープニング・スタッフとして働いていた
大学生の男の子がいたのだそうだ。。。
その男の子は、私が入った時には
既にもう、そこにはいなかったのだけど、
話によると、店長にスカウトされて、
その、フランチャイズ経営をしている
会社の社員になったのだとか。。。
大学も途中で辞めて。。。
そして今は、違う店舗で、副店長を
やっているのだと。。。
みんなの話によると、その男の子は、、、
あの店長と仲が良かったらしく。。。
ギターの彼以上に、店長はその男の子に
心を開いていたらしい。。。
そして店長は。
もし、その気があるのなら、
いつでも会社に紹介するよ。。。と。
ギターの彼にも言っていたのだそう。。。
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ギターの彼が、
そんな話をしてくれていた時だった。。。
「でも、ひとつだけ問題があるんですよ」
・・・と、彼が言うので、問題って何?と
訊いてみたら、想像もしていなかった答えが、
彼から返ってきた。。。
「実は俺、在日なんですよ」
・・・と、彼は言った。
ギターの彼は、自分が在日韓国人であることを、
教えてくれた。
韓国人。。。と言われても、
見た目ではまったく解らないし。
おじいちゃんやおばあちゃんの時代に
こっちに渡ってきたようだったから、
彼自身は、生まれも育ちも日本。。。
だから。。。
「一体、何が違うの?」
・・・というくらい、そこに日本人との違い。。。
みたいなものは、まったく感じなかった。
ただ、彼が言うには、、、
その、フランチャイズ経営の会社が、
そういう「国籍」を気にするらしいとかなんとかで。
店長自身は、そういうのは馬鹿馬鹿しいと
思っていたらしいのだけど。
もし、会社の方針がそうだったとしたら、
嘘をつくわけにもいかないし。。。
だから、店長はああ言ってくれていたけど、
実際には多分、無理だろう。。。と。
そんな風に言っていた。。。
私はこの話を聞いた時、、、
正直、驚いてしまった。。。
今どき、、、というか、未だに、
そんな古い考え方をする会社が、
まだあったんだ。。。
・・・と。。。
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高校生の頃。。。
当時よく、通学途中の駅や電車の中で、
韓国のチマチョゴリのような制服を着た、
同じ年頃の女の子を見かけることがあった。
中学を卒業したばかりで、まだ、
何も知らなかったあの頃の無邪気な私は、
そのことを、特に気にも留めていなかった。
ある日、学校で、何かの話の流れで、、、
「ちょっと、変わった感じの制服の学校が
あるよね。。。」
・・・と、何の気なしに言ったら、、、
ある友達の顔色が変わった。。。
そして、その子はこう言ったの。。。
「Lyricaちゃん、いい?
もし、駅とかでああいう子達と会っても、
絶対に目を合わせちゃダメだよ」
・・・と。
私は、その子の言っている意味が、
最初はまったく解らなかったのだけど、、、
その子は、、、
あの制服を着ている人達は、
朝鮮学校に通っている人達で。。。
彼らは、私達日本人のことを
目の敵にしているから、目が合っただけでも、
ケンカを吹っ掛けられる。。。
だから、気をつけて。
・・・と、そんなことを教えてくれた。
今思うと、、、
なんて、愚かだったのだろう。。。と
思うのだけれども。。。
私は、その子のそんな話を聞いたら、、、
途端に、恐くなってきた。。。
その、制服を着た人達が。。。
その子の他にも、そういう「噂」を
知っている人は、クラスにもたくさんいて。。。
時代も時代だったのだろうけど、、、
あの頃は、私の親でさえも、、、
その「噂」を、完全には否定しなかった。。。
そして私もそのうち。。。
その「噂」を、鵜呑みにして、、、
信じてしまうようになっていた。。。
自分でちゃんと、真実を確かめもせず。。。
ただ、そういう話を聞いただけだったのに。。。
自分自身が、そういう体験をしたわけでは
なかったのに。。。
思い込んでしまった。。。
あの制服を着た人達は、、、
恐い人たちなのだ。。。と。
だからその後は、、、
あの制服を着た子とすれ違ったりする時は、
いつも、ビクビクするようになっていた。。。
本当に。。。
子供だったなぁ。。。と思う。。。
子供は無邪気であるが故に、
「無知」でもあり。。。
無知。。。というものが、、、
そういう、「偏見」や「差別」を生むのだろうな。。。
・・・と思うと。。。
それって本当に、恐ろしいものだ。。。と。。。
今は、、、しみじみ思う。。。
それは、実際の子供に限らず。。。
大人でも。。。
いくら、年齢を重ねた人であっても。。。
意識が幼いままだったら、、、
無知なままだったら。。。
やっぱり、「噂」に惑わされてしまうの
だろうな。。。と。
そんな風に思う。。。
噂に惑わされて最初は恐怖が生まれて。。。
その恐怖が、そのうち、憎悪に変わる。。。
そういう憎悪を膨らませた人達が、、、
集団になった時は。。。
人って本当に恐い。。。
・・・と、そんな風に思う。。。
そして、こういうのもきっと。。。
人の「弱さ」なのだろうと思う。。。
テレビの情報。。。
マスコミの情報も、そういう「弱さ」が
基盤になっている気がしてね。。。
だから私は、テレビが好きではないし。。。
いまやネットも、「図書館」ではなく、
「マスコミ情報」で埋め尽くされて
しまっているので。。。
ほとんど見る気もしなくなった。。。
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自分が、在日韓国人である。。。と。
そんな話をあのギターの彼は、、、
いつものように、飄々と話していたな。。。
けど。
「この話は、若い子達にはしないで
おいてくれます?」
・・・とも、彼は言っていた。。。
このことを知っているのは、いわゆる
「大人組」の人達だけで。。。
店長や、パートの彼女や美大の彼女。
そして私だけだから。。。と。
そう言っていた。。。
彼のこんな言葉から。。。
こういう話はやっぱり、未だに、、、
どこか、デリケートなことだったり
するのかもしれないな。。。
・・・と、そんな気がした。。。
それにしても。。。
国籍だけでその人を判断することって、、、
こんなに、馬鹿馬鹿しいことはない。。。と。。。
私はこれまで、、、
いろんな国の人達と、個人的にあれこれ
話してきたからこそ、そう思うようになった。。。
そして。。。
実際に自分の目で見て、触れたもの以外は、
信じないようにしようと。。。
そう思うようになった。。。
「噂」にだけは。。。
惑わされないようにしよう。。。と。。。
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つづく