宇宙を駆けるよだか 全6話 | 一言難盡

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Ture courage is about knowing not when to take a life,but when to spare one.

 

『宇宙を駆けるよだか』

2018年 日本 全6話 Netflixオリジナル

 

原作 「宇宙を駆けるよだか」全3巻 川端志季 

 

出演

小日向あゆみ(清原果耶)

海根然子(富田望生)

火賀俊平(重岡大毅)

水本公史郎・しろちゃん(神山智洋)

 

 

Netflix配信サービスが始まってから、国内のオリジナルドラマでは割と初期の頃に登場した作品だったと記憶しているが、観るタイミングもなくスルーしていた。

いやぁ、、、良かった。

 

ネタバレあり

キャッチコピーが「愛されるべきは外見か中身か」と謳っているように、昨今流行りのルッキズムがテーマとなっている。

現代の言葉で言えば、容姿ガチャに外れたなど表現されるのだろうが、そりゃ外見がいいのに越したことはないに決まっている。

人は、第一印象で割と相手を決めてしまうものだし、好き嫌いの度合いも外見で決まってしまうところがあるのは否めない。

もちろん、それだけではないのは皆分かっているが、その他人に決められた価値観により、外見だけで虐げられるということもあるだろう。ただこれは、容姿の良い人間は体験することがないのだから、容姿の良くない人間の気持ちは一生分からない。

 

虐げ続けられると、自己肯定感も低くなり、つまりはこれに登場する然子のようになってしまうのだ。

然子の場合、父親は出て行き、母親にも邪険にされるという家庭環境が拍車をかけていたのもある。

 

一方あゆみの方は、クラス一可愛いと評判で、家族仲良く友達にも恵まれて、素直で優しい子に育つ。そのため、然子にとっては、喉から手が出るほどに欲していた人間そのものだったのである。

そのあゆみと身体を入れ替えることが出来る伝説があるのを知った然子は、命を懸けて入れ替わることに成功する。

この入れ替わりの方法が、すんごくメルヘンチック(命懸け)なんだけど、ファンタジーだからそこはよしである笑

 

突然、ぷす(ぶすだと言葉が酷いのでぷすにします笑)な然子の身体で目を覚ましたあゆみは、自分はあゆみだと誰に訴えてみても一人も信じてくれる人はいない。おそらく、ぷすの言う事だから、と相手にされないという意図も含まれている。

これにいち早く気付いたのは、幼馴染の火賀くんである。いや、気付くの早いよなぁと思ったのも束の間、この火賀くんがもう最高なのである。

演じてらっしゃる重岡大毅は、ジャニーズの方だというのを途中で知ったのだが、いわゆる若手のアイドルというものを打ち破る芝居に胸を貫かれる。

 

これまで、ある意味チヤホヤされてきたあゆみは、ぷすだとこんなに世界が変わるのか、と初めて外見で判断される世界を体感することになる。

あゆみが性根のいい子だったから、然子の気持ちを汲むことが出来たが、性根の悪い子だとこう上手くはいかないだろうね笑

中身があゆみだと気付いた火賀は、外見など気にせず然子と行動を共にするようになるが、このドラマは、でもこれって元々可愛くて好きだった子だし、そもそも、あゆみがこの顔だったら好きになってないでしょ?などというこちらの疑問に全て答えをくれる。

「そしたらお前の良さにもっと早く気付けてたかもな!」とかそんな爽やかに言う?笑

 

ここで注目すべきは、例え中身が変わっていようがいまいが、火賀の然子への態度は全く変わっていないこと。ただ受け取る側が然子のように卑屈になっていれば、その態度もどこか偏って見えて、手を差し伸べられても自ら拒否してしまうのである。

ひょっとしたら過去には、この優しさを信じて裏切られた、という経験もあったのかもしれない火賀のような人間ばかりではない世界では、虐げられてきた彼女がそう思ってもまあ仕方がないのかもしれない。

 

自分の望む外見、友達、彼氏(しろちゃん)全てを手に入れた然子は、ひととき幸せな気分を味わうこととなるが、元々虐げられてきた長年の傷がそんなものでは回復せず、然子の容姿となったあゆみがクラスの皆と段々溶け込んでいく様子に、羨んで、嫉妬する思いを募らせる。

結局、こうやって皆が自分を気に掛けてくれるのも、あゆみの外見だからだと自分を追い込み、外見が変わっても中身はあの頃のまま、何も変われない自分に絶望していく。

 

然子の母親は、一見毒親だと見受けられるものの、実はそうではないのは劇中で視聴者にも何となく伝わっていた。

もはや、これを救えるのは唯一然子側だと言える母親しかないと思い、母親の出番はまだかと心待ちにしていたが、満を持して母の登場である。

自分を肯定してくれる人がたった一人いるだけでいい、というような表現がどこかであったが、それがあゆみにとっては火賀であり、然子にとっては母親だったのである。

結局、周りが何を言っても、どうせ私ではなくてあゆみのためだろう、と全ての言葉をそう受け取る然子の前では、母親だけが偽りなく唯一自分の味方であることが本能では分かっていたのである。

然子はこれが一番知りたくて、一番求めていたことなのかもしれないね、、、最後のおにぎり、、、

 

元に戻る方法も、相変わらずメルヘンチック(再三の命懸け)だったが、最後はじんわりしてしまった。

火賀ではなく、やはりしろちゃんを選んだあゆみを、視聴者的にはなぜなのかと思ってしまうが、分かりやすく味方だった火賀と、分かりづらくとも同じ味方のしろちゃんとの比重は変わることはなく、幼き頃に助けてくれたしろちゃんにずっと恋をしていた歴史を火賀には越えられなかったのかも。

最後まで漢だったね火賀くん。

 

しかし個人的には、あゆみの容姿になった途端、性格も劇的に変わりそうなもんではあるけど、そういうのがテーマではないからね笑

ぷすでも、家族はもちろん、周りの人間の愛を見逃さずに生きられれば、容姿のことは割と忘れてしまえるのかもしれない。みんな最後は同じになるんだし。

とはいえ、やはり一般的には容姿がいいのが最強なのは事実である笑