最近は電動パワステが一般的になってきたので、油圧式のパワステはあまり見なくなりました。
今日は「ハンドル(ステアリング)に違和感が伝わってくるから見てほしい」と言う内容です。
まぁ普通に考えればタイヤや足回りを疑うでしょうね。
しかしそのお客さん(今回が初)は既にディーラーでタイヤ等も新品に交換されているとのこと…
ちなみに車種は30ハリアーです。2代目?って事になるのかな。
2AZエンジンのオイル消費対策だけ怠らなければ非常に良い車です。
おまけに、車検にはじまり毎年の点検まで近くのトヨタディーラーできっちり欠かさず行われてきたと言う、非常にお客さんの愛着を感じる車両です。
が❗️ どうしても何をしてもステアリングの違和感が消えないので紹介でうちに入庫してきたわけです。
私が思ったのもやっぱり「タイヤか?」って事。
小さな路面の轍(凹凸)に対して軽いキックバックを受ける印象です。
ただ、ある一定角度(もしくは一定の負荷)でキックバックが断続しているような気もします。
念のため、駆動輪である前輪の2本のタイヤ(ホイール付)をタイヤバランサーにかけてみましたが、目視による振れや数値による重量の偏りはみられませんでした。
サイドスリップ(トー調整)も問題なし。
ベアリングも異常なし。ローターは若干の振れがありますが、ジャダーは出るものの今回の症状とは似ているけど無関係です。
で、もしタイヤだったならば、左か右のどちらかの車輪に違和感を感じるはずですが、それが無い。
って事で「パワステか?」と言う目算を立てました。
量は正常値(に見えた)なので、
「パワステでも無いのか? でも真っ黒だしちょっと循環させながらの交換しておくか」
と、思いバキュームで吸おうとしたその時❗️
あれ?? 何も出てこねぇ…
バキュームのノズルが詰まったか?
タンクにはMAXまでフルードが入ってるのになぜ吸えない??
恐る恐るタンクを覗き込むと…
何じゃこりゃー❗️
黒いヘドロがタンクの壁にへばり付いているだけでタンクの中は空っぽじゃねぇか❗️
そりゃ吸えるわけねぇ(笑)
急いでタンクを取り外します。
タンクを外した時に、わずかでもパイプから液体が垂れてきたら復活の可能性はあります。
おぉ… 辛うじて50ccほど出てきました…
今回の違和感の原因かどうか断言はできないけど、このままなら間違いなくパワステが焼き付くってお客さんに伝えると「任せるのでやれるだけやって欲しい」とのこと。
本当はパワステポンプまで外して交換する方がいいのでしょうが、そうなるとどうしてもお金がかかってしまいます。
なのでなんとか洗浄で復活を試みます。
とりあえずタンクを外して灯油にドボ漬けします。
しかし、ヘドロ化したパワステフルード(オイル)はコッテコテで灯油では歯が立ちません。
もちろん、パーツクリーナーでもダメ
仕方がないので、エンジンコンディショナーの泡を満タンまで満たしてを何回か繰り返します。
タンクの樹脂がダメージを負いますが、このままでは使えないので交換覚悟で洗浄します。
結局、まる1時間ほどかかってタンクを洗浄…
後はパワステフルードを注入してまた抜いてを何度か繰り返します。
戦場に使用するのはもったいないですが、ASHのFS-ATFを使います。
GRP(添加剤)も30ccほど投入
何回か出し入れを繰り返し、合計1Lくらい入れ替わったでしょうか。
試乗に行きます。
まぁ… 完治ではないですが、ステアリングの違和感が半分かそれ以下に小さくなっているとの事で一安心です。
しばらくは、例えばエンジンオイルの交換タイミングなどに合わせてパワステフルードの交換を何回か行うと徐々に違和感は消えていくと思います。
私はほっと一息なので、すっかり解放された気分でお客さんとコーヒーを飲んでいると、「ディーラーでは変えてくれない(パワステフルードを)ものなんですか?」とお客さんの素朴な疑問。
そう… そもそも定期的にパワステフルードを交換していれば今回のような事態にはならない。
車検や一年点検の時には、お金を払って点検を依頼しているわけである。
しかも10年以上。
言わずもがな、パワステフルードは今まで一度も交換された事はないでしょう。
私がとやかく言うつもりはありませんが、お客さんは非常に「がっかり」されていました。
まぁ… 「お察しします」としか…
と、パワステの修理(?)も安く済んだ事なので、2AZエンジンのメンテナンスをオススメしました。
絶対やっておくとエンジンの寿命も伸びるし、お客さんも「意味のある整備にお金をかけていきたい」と即決。
実は試乗の際に、直噴特有のコールドノック音がしていたので気になってたんですよね。
直噴エンジンは燃焼室の洗浄だけでは不十分で、吸気ポートに薬剤を当ててやる必要があります。
なので燃焼室はNC900RCRを使用し、吸気ポートはNC901(もしくはカーボンメルティングバーン)を使用して洗浄します。2箇所からそれぞれ施工する必要があるのでちょっと面倒ですが、これを怠るならやる意味がありません。
燃焼室を洗浄するのは、直噴エンジンはほぼ例外なく種々の汚れがピストンリングを固着させるからです。これがオイル消費の主な原因になります。
結果は… みなさんのご想像にお任せします(笑)
次はオートマをお願いします❗️と非常に喜んで帰っていかれました。
私はディーラーを責めるつもりはありません。
ただ、みなさんにはやはり一度「取扱説明書」を読んでいただきたい❗️
特に「日常点検」の項目 イラスト付きでよく出来ています。
自分の安全は自分で守りましょう。お出かけ前とかね
大切な家族を乗せるんだから