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55、とびきり特別な想い
彩と会った翌日の夜、約束した通り四人でゲームをした。
なるも彩も美羽さんも、いつもと変わらずに。
けれど俺だけが何故か、胸騒ぎに似たざわざわした感覚がある。
今日この日から、何かが変わってしまうかもという根拠のない不安。
分岐点のような得体の知れない何かが沸々と湧き上がる。
その要因は、メシアスさんが美羽さんだったと知ったのもある。
けれどそれだけではない。
彼女が素性を明かしたとき、なるがどう変わるのか。
彩が言っていた四人恋愛の本当の意味も。
できればこのまま楽しく平穏に、
笑い合える関係をずっと続けていければ。
そう密かに願う俺の欲目と小心と、
理想の併存があるのかもしれない。
彩 「みんな、お疲れ様ー!」
月 「おつかれー!
いやー、まいったよ。
久しぶりだったからさ、ボス戦ヤバかったよ」
彩 「でもすごかったわよ。
しっかり最後までもち堪えたじゃない。
メッシーのヒールもすごく良かったしね」
星之「そうだな。ナイスフォローだった」
彩 「でもまさかゾネが、星之が弓騎士で立ち回るなんてねー」
星之「ふっ。
これでも俺もなるも、一応オールラウンダーなんでね」
彩 「そっか。
二人も全ジョブカンストしてるんだね」
星之「そういうこと」
なるはボイスチャットをしていないメシアスさんに、
ボードでメッセージを送った。
『メシアスさん、お疲れでした。さっきはナイスフローでした』と。
するとすぐに彼女から返事が返ってきたのだが、
意外な文章を見て、俺たちは一瞬フリーズする。
『皆さん、お疲れ様でした。
すごくいい戦いでした。
もしよかったら、
今から私もボイスチャットに参加していいですか?』
月 「……えっ」
星之「彩。いいのか?」
彩 「うん。本人がいいんならいいんじゃない?
まぁ、正直に暴露すると、
メッシーはレインボーダンジョン攻略の時も聞き専してたし」
星之「そ、そうか」
月 「ちょっと待って。
まずは深呼吸深呼吸。心の準備が」
星之「俺はいつでもオッケーだぞ」
月 「……うん。僕もいいよ」
彩 「そう。ということよ。
メッシー、入っておいで」
俺は、リビングのローテーブルを挟んで正面に座るなるを見る。
メシアスさんの正体を知らない彼は、
祈るように手を組んで、緊張しているのかごくんと生唾を飲んだ。
パソコンのスピーカーから聞き覚えのある声が聞こえてくると、
彼の表情は一変、パソコン画面から視線を外し、
どういうことだと言わんばかりの露骨な表情で俺を凝視する。
星之「(これはまずい。困惑……それとも、ご立腹か!?)」
美羽「ボイスでは……初めまして、です。
改めまして、メシアスと申します。
よろしくお願いいたします」
星之「こちらこそ、よろしくお願いしますね」
彩 「うん。よろしくー。メッシー!」
月 「……この声って……彩さん。まさか、メシアスさんは」
彩 「うん。そう、そのまさかよ」
月 「美羽さん……ゲームやってたんだ」
美羽「は、はい。
アモールに居る時に涼火さんから教わって、
それから彩さんからこのゲームを教えてもらって、
毎日少しずつ練習を」
月 「そう……涼火に」
美羽「あ、あの、私は元々トークは得意ではないし、
ボードチャットのほうが自然に話せるから。
それに……私がメシアスだと、皆さんが知ってしまったら、
きっと楽しめないんじゃないかと、思って」
月 「……」
星之「そんなことはないよ。
変な気を遣いすぎだな。
美羽さんもれっきとしたとした俺たちの仲間なんだから大歓迎だよ」
彩 「うん……私はもちろん大歓迎!」
美羽「ありがとうございます!
でも。るなさんは……」
月 「……」
星之「おい、なる。
美羽さんが困っているだろ。
おまえも何か話せよ」
彩 「そうよ。いつも通りにね」
月 「美羽さん。
以前、僕と一緒に居た時も涼火、だったよね」
美羽「えっ」
星之「おい、なる!」
月 「僕に言えないことも涼火には話すんだ」
彩 「るなさん、それとこれとは違うでしょ」
月 「何も違わないさ。
どうしてそうやって、いつも大切なことを隠そうとする」
美羽「大切なこと……」
月 「このゲームに参加した日に『自分もやってます』って、
素直に話してくれればよかっただろう。
それなのにコソコソと聞き専までしていたなんて」
美羽「……ごめんなさい」
星之「なる!この場に及んでもまだ美羽さんを責めるのか!」
彩 「るなさん!そういう言い方って酷い!」
星之「だいたいダブルデートした日におまえが、
『一緒にいても楽しめない』と美羽さんに言ったからだろ」
彩 「そうよ!
好意を抱いている人にそんなこと言われたら、
美羽さんでなくても、私だって萎えちゃうわよ」
月 「僕が言いたかったのはそういうことじゃない。
美羽さんを嫌いだからじゃない。
関わりたくないと思っていたからじゃないんだ」
美羽「るなさん」
月 「僕が楽しめないと言ったのは、
心の中にとても大切な人が、
自分の全てを掛けるほど愛している人が存在しているからだ。
そんな気持ちで形だけで恋愛ごっこしても心は弾まない。
だから楽しめないって言ったんだ。
四人恋愛をするにしても、
自分が納得して心から望まなければ幸せじゃない。
だからあの時もそう君に話したんだ」
美羽「……」
月 「君は、僕に好意があると言いながら、
知ろうともしないで涼火を呼んだ。
それをどうしても、僕は理解できないんだよ」
美羽「……それでは。
私はるなさんにあの時どう言えば、
どう向き合えばよかったのですか?」
月 「どう、って」
美羽「どう接していれば一緒に居られたのですか?
どう関われば知ることができたのですか?
私は一度、貴方にフラれた女です。
嫌われているからフラれたのだと思っていました。
それに私は長年患っていたし、普通の女性とは違うから、
まともな恋愛だってできないと自覚もしています」
彩 「普通って何。
美羽さんは私にとって特別だよ。
そんなに自分を卑下なんてしないで」
美羽「でも世間の目はそうなんです」
彩 「……」
美羽「私にも、るなさんのように、心に抱えるものがあります。
大切で愛おしくて、とびきり特別な想いが」
彩 「特別な想いって何」
美羽「カオルにレイ、タカトにわかな、皆に託された想い。
彼らは長年私を守り、支えてくれた仲間でした。
そしてタクに託された彩さんへの特別な想いも、
マナに託された、せのさんへ特別な想いも」
茉の名前が彼女の口から出た瞬間、
驚きのあまり声を漏らし、同時にこわばった顔でなるは俺を見た。
彩もその事実を知らなかったようで、
人前ではいつも冷静な彼女がひどく動揺している。
月 「……」
星之「えっ」
彩 「茉さんに託された、特別な想いって何……どういうこと?」
美羽「みんなとの約束だったからずっと言えなかったんです。
だから私は、私の中に居たみんなに託された想いや願いを全て終えるまで、
自分のハートにある、るなさんへの想いを出せなかった」
星之「涼火は、その事実を知っているの?」
美羽「はい。華月先生と玉貴先生ももちろん知っています。
マナは統合治療の前に涼火さんを呼んで話しをしています」
星之「統合治療の前」
美羽「せのさんは大切に想う唯一特別な人だから、
私が居なくなった後、彼と仲良くしてほしいと」
彩 「唯一特別な……」
美羽「そして……マナは私にもこう言いました。
私がるなさんを好きなのは知っているけど、
せのさんからるなさんを奪わないでほしいって。
自分のぶんまで、二人の愛を傍で見守ってほしいって……」
星之「……」
月 「……」
美羽「本当の気持ちを隠して平静を振舞うのは、
とびきり特別な願いを叶えるというのは、
こんなに大変で、こんなに辛くて、こんなにも悲しいのですね……」
パソコンスピーカーの向こうに居る美羽さんの声は、
頼りなく震えていて、静かなリビングに悲しく響いている。
茉の器の大きさを、失った後に知ることになるなんて。
そして俺となるのことまで考えていて、
それを美羽さんと涼火に託していたなんて、微塵も想像していなかった。
統合治療の時、茉が生き残ればいいと一瞬でも思った自分が、
なんて軽薄で身勝手な奴なのだと、言い知れぬ羞恥の情に駆られたのだ。
その後、なるは事実を話した美羽さんに謝罪し続けた。
俺はたまらず、美羽さんと二人きりで話したいと申し出る。
しかし彼女は、彩となるが一緒ならいいと答えた。
(続く)
この物語はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。
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