出産には二人の助産師がついていた。
私は陣痛がくるたびに、ボーと母の手をギュッと握って、
ありったけの力をふりしぼり、いきんだ。
それでも中々出て来ない赤ん坊。
「頭が下がったり引っ込んだりしている。」
と助産師の一人が言った。
「ちょっとやり方を変えてみましょう。
ろびまろ、このシーツを取って。
陣痛が来たらこのシーツを思いっきり引っ張ってね。
もう一人の助産師が反対側で引っ張るから。」
そう言われ、無我夢中でシーツを手に取った。
そして陣痛という闘いのゴングが鳴った瞬間、力の限りシーツを引っ張る私。
私と助産師のマンツーマンの綱引き対決が始まった。
何回引っ張ったかわからない。
それでも全然出て来ない赤ん坊。
こっちも早く出したくて必死になるので、疲れてはいるけれど引っ張る力は更に増していった(と思う)。
そんな私に反し、徐々に疲れが出てきた助産師は、
どんどん私の方に引っ張られていく。
終いには体ごと持ってかれてしまった。
「ははは!あなたの奥さん、とっても強いわね!」
とボーに笑いながら言っていたのであるが、
そんな彼女を見て、私は、
おい!まだ終わっとらんぞ!!
次の陣痛に備えぇぇぇい!!
こっちは必死なんじゃ!
お前さんも笑っとらんで本気ださんかい、こるぁああああああ!!
と心の中で叫んでいたのであった。
実際は陣痛が来るまでの間は、ゼーゼーしていてそんなこと言う力もなかったけれど
(前のブログで出したこんな絵の状態↓)
続く。