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環学連通信

各地の生物多様性に関心のある若者が中心となり環境保全学生連帯会議が発足しました。
日本中の水辺の再生を目指し日々活動中!


豊かな緑に覆われた清流。
河岸には植物が繁茂し、水中には多種の水草が生茂る。そこには豊かな生物相があります。しかし、かつてのこの川はまるで違いました。







両岸はコンクリートで固められ、植生もほとんどありません。まさしく都市型河川の典型的な形でした。

今から十数年前、コンクリート護岸を引き剥がし、多自然型河川改修が行われました。久留米市を流れるこの川は多自然型河川改修の素晴らしい一例です。






現在、この川には数多くの生き物が生息しています。写真のヨシノボリ類を始め、カワムツ、オヤニラミなどの数多くの魚類、ヒラタカゲロウやヒラタドロムシなどの水生昆虫、また多くの野鳥なども確認され、多様な生物相を示しています。






今年はコガタノゲンゴロウも確認されました。止水を好む本種がやって来たということは、流水だけでなく、ワンドのような様々な環境が形成されているのかも知れません。





また、数は少ないですがヤリタナゴも確認されました。二枚貝類に産卵するタナゴの仲間が生息しているということは、コンクリートから自然河床になったことで二枚貝が住める川底の環境が戻りつつあることを示しています。





九州の固有種であるアリアケギバチもこの川に帰ってきました。アリアケギバチは、かつての九州と大陸との繋がりを示す生物学的にも重要な生物です。各所で護岸工事や外来生物の影響で数を減らしています。

放流による生物相の回復は困難で、外来種や病気の拡散などの様々な問題を引き起こしかねません。しかし、こうやって人が手を加えることで、少し自然に近い形を作ることで生き物たちはすぐに戻ってきてくれるのです。
 
有用な漁獲対象種であるアユやウナギも見られます。これらの活動が、希少生物のみならず生態系サービス=川の恵みとして享受することが出来ます。




また、これだけ生物相が豊かなこの川は、環境学習の場としても利用されています。下水道の完備で排水が流れ込まなくなったことに加え、多くの動植物が分解者として定着したことで、この川のBOD、CODは1.0を下回る水準となっています。これは“問題なく泳げる水質”なんだそうです。
この清流に加え、子供たちの水辺体験に適した浅瀬に多くの生き物が生息していることはこの川の大きな魅力です。

水辺体験を通じて、希少生物だけではなく将来の環境保全を担う世代に自然や生き物に興味を持ってもらうことはとても重要なことです。

そういった活動にもこの川は利用されています。






これらの取り組みは水辺の楽校(国土交通省)のひとつです。

これらの先進的な取り組みが、例外ではなく当たり前になるような世の中にしていかなければなりません。

そのためにも、この様な実例があることを知らせていくことも大切です。コンクリートで固めてしまうのではなく、コンクリートから自然河川へという流れが広がっていくことを願います。



湿地を作ろう実践編
第2回環境保全学生連帯会議の2日後の3月27日、耕作放棄地を利用し湿地帯を作ろう!は実行段階に来ました。






1湿地帯を作る


ということで、私たちが湿地化するのはここです。既に半ば湿地化してます。
この田は端から水が染み出していて、全体が水捌けがとても悪い草むらになってしまっています。そこで水捌けの悪い草むらに境界を作り、水捌けの悪い草むら、湿地、利活用可能な土地の三つに分けることで利用したい側にも、生物多様性保全に活かしたい側にも良い関係を目指します( ̄▽ ̄)








さて、大体この辺りに境界を引きます。







人力でひたすら掘ります。








この日の天気は異常で、晴れたり雨降ってきたりアラレが降ったり曇ったり......

そんなこんなしてる間に、水がたまり始めました。







掘って固めて、ようやく形になってきました。






完成(?)
出来上がったのはこういった湿地です。
一番奥に土手を作り、これ以上向こう側へ水が流れるのを防ぎます。土手の手前には少し深みを作り、水を溜めました。中央は浅い湿地帯になっています。








今回見られた生き物について
湿地作成中に、環学連屈指の同定名人(Y氏)がここの生物相について調査してくれました。


・シッチコモリグモ




・ヒメアメンボ





・ケシカタビロアメンボの仲間(長翅型)







・ギンヤンマ






・マツモムシ





・ヒメガムシ






・ヨコエビの仲間
・ミズムシ




・ホソカの仲間





・コカゲロウ科の一種(サホコカゲロウ?)






・ツチガエル
・シオカラトンボ




・サワガニ


“今回見られた生物で自分が持知ってる範囲で指標性のある種はサワガニだけです。ミズムシに関しては綺麗な水にも少し汚い水にもいるので。他の種に関してはヨコエビやミズムシは落ち葉など分解するため、植物のある環境にいますがヒメアメンボ、ケシカタビロアメンボ、ギンヤンマ、マツモムシは植生のない環境でも見られる生物です。ただしヒメガムシは植生がある環境じゃないと見られません。

今回の着目点は福岡県準絶滅危惧に指定されているツチガエルが確認できたことです。ツチガエルは幼生(オタマジャクシ)のまま越冬するので、年中水があるところにしかいません。そのため中干しなど行う水田では生息できないのです。
八女市で湿地に生息する両生類は他にニホンヒキガエルやヤマアカガエル、トノサマガエル、アカハライモリがいますが山や林とは少し離れており、また棚田のため侵入しにくく上記の上から2種の産卵のためには来づらい環境です。

福岡県IB類のトノサマガエルがもし湿地に定着すればこれは凄い成果になると思います。福岡県レッドデータブックにも書かれてますが山間部の水路や湿田は水が途切れないので、アカハライモリ、ツチガエル、トノサマガエルが多く見られる環境だそうです。”

正確に分析してくださってます…...凄い!
湿地帯を作ろう!福岡編を主導している有明海支部だけでは同定するのにすら何日かかるのやら......。

環学連の学生のトレード体制が上手く機能してくれました!







3水路を作る

それでは二つ目の湿地帯作成に取り掛かります。ここも山側の石垣から水が染み出し、先ほどの場所ほどではありませんが、水捌けの悪い草むらになっています。

ここでは、石垣の下に水路を作ることで土地と湿地の共存を図ります。




ここからは先程まで生物調査をしていたY氏が参戦です。






おおぉ......





ここにいる環学連メンバーの誰よりも上手くクワを使い、がんがん掘り進んでいきます。






彼の活躍であっという間に完成しました!
五人いたのに半分以上彼が掘ったのではないだろうか(汗)








さて、細い水路と浅い湿地、今回は二つのタイプの湿地を作ってみました。

このままでは土手が崩れていったり、水が漏れたりしかねないので、土手の補強などまだまだ完成に向けた努力が必要ですね(汗)

初めての実験的な取り組み、この二つがどのように遷移していくのかデータを取りつつ要観察です!


3月25日、第2回環境保全学生連帯会議を開催しました。







・有明海塾
有明海保全活動への“やながわ有明海水族館”の活用

・名城大学附属高校
庄内川河川調査と清掃活動

・岱志高校
荒尾干潟の研究報告

・筑後川まるごと博物館
ちくご川こども学芸員活動

・一般学生(第2回ボルネオスタディツアー参加者)
持続可能なパーム油の利用

・環学連江戸川支部
利根運河の魚大量死について
タイと日本の環境問題の比較(近日公開)

各団体の報告内容です。会場は筑後川防災施設くるめウスをお借りしました。








後半は、積極的行動を目指した意見交換会を行いました。






持続可能な開発目標(SDGs)

環学連江戸川支部員のタイと日本の環境問題の比較やボルネオスタディツアー参加者の報告等の参加者の実体験や、“持続可能な開発目標(SDGs)”や生物多様性国家戦略などの環境を取り巻く規則や目標などを幅広い視野を共有し、名城大学附属高校の庄内川清掃活動や有明海塾や筑後川まるごと博物館の筑後川流域での活動のような地域への活動に落とし込んでいく“グローカル”な内容となりました。










環学連の強みはここにあります。色々な分野の専門的な知識をもった学生らが主体的に討論し、多くの目線から実際の問題に切り込んでいきます。また意見交換会だけでなく、実際の活動にも参加することで、これまで欠けていた“人材”の確保を目指しています。各地の環境問題に取り組む若者や学生が、他の場所で活動する仲間と共に取組むことで活動を補完し、新たなアクションを試みます。
また参加した学生は体験を通じ得た経験や知識を地元の活動に活かしていくことを目指しています。

要約すれば“環境問題に取り組む若者のトレード体制の構築”を目指した試みなのです。








そして、それらの意見交換や提案を含め環学連の目指す「一年間で実現する目標」を定めました。この目標は漠然としたものではなく、明確で決して不可能ではない目標であることを前提としました。


環学連江戸川支部
・関東の学生らを集めた勉強会や意見交換会等を開催する。
用水路で起こった水棲生物大量死の原因究明

環学連庄内川支部
・庄内川の生物図鑑の作成
・生物調査の強化
・シンポジウムの開催

環学連有明海支部
・筑後川下流域河床の復元(アリアケヒメシラウオ産卵地の再生)に向けた取り組み
耕作放棄地を利用した湿地作成
・有明海の絶滅の危機にある生物の図鑑を作成


また共通の課題として活動の知名度の向上や、体験学習の必要性も強調されました。


これらの努力目標を、各方面で年間を通して取り組んでいきます。今回共有された知識や新たな人脈を活かし、更なる活動に向け日々前進していきたいと考えます。