野良グッピーから考える | 環学連通信

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GoogleのCMにて「野良グッピー」を捕まえているのはやながわ有明海水族館の館長です。野良グッピーがメディアに取り上げられたこの機会に、少し外来種についてかんがえてみましょう。


まず、「野良グッピー」という言葉に驚かされる人もいるでしょう。有名な熱帯魚であるグッピーは、既に日本に生息しています。


一般に観賞魚(=ペット)とされる生き物が、普通に自然界に生息する。何とも不思議な話に思われるかもしれませんが、実はこのような事は沢山あるのです。








ダルメシアンモーリーやコンビクトシクリッド、場所によってはこんな魚も生息しています。



これらは全て、観賞魚由来の外来生物です。いわゆる、捨て猫や捨て犬などと同じ、捨て熱帯魚なのです。






最近有名になったアリゲーターガーもその一つです。







それでは、なぜこのような生き物がいるのでしょうか?


答えは簡単です。
その多くは、捨てられ、そして生き残った生き物たちです。とくに熱帯魚の場合は放流された場所に温排水などがあった場合に生き残ります。






(大分県別府市を流れる川)
熱帯魚のグッピーは、本来日本の冬の水温を乗り越えることができません。グッピーがいるのは、温泉地や工場の温排水など暖かい水がある場所に限られます。

おそらく「暖かい場所を選んで捨てられた」よりは「日本中でグッピーは捨てられているが、暖かい場所でのみ生き残った」と考えるのが妥当です。


問題の本質はそこにあります。

中には放流が引き起こす問題を把握した上で放流する人もいるかもしれませんが、「飼いきれず殺すのは可愛そうだから」という感覚で逃がす人も多いようです。

しかし、可愛そうだからという感覚が、どれほどの問題を引き起こすのかというのは飼い主全てが考えるべき問題のはずです。

(そもそも、飼いきれないのに買うのが“無責任”なのですが……)






では、なぜグッピーなどの外来種が問題にされるのか、ということを考えてみましょう。









外来種が問題視される点。
まず、わかりやすいのは捕食などによる直接的被害です。大きな魚や肉食性の生き物ほど、この被害が目立ちます。これは在来種を捕食するだけでなく、水草を食べ尽くし環境自体への影響、陸上生物の場合は農作物被害もあります。








また、占有などの問題もあります。
例え直接捕食せずとも、もともといた種類と同じ餌を食べれば競争が起こりますし、縄張りを持てばそれだけ生息空間を奪い合うことになります。沖縄のプレコ(マダラロリカリア)は藻類を食べているのですが、鎧のような鱗に覆われ天敵がいないため非常に数を増やしてしまいました。







放流に伴う問題にはもう一つ「病気」の侵入の可能性があります。閉鎖的で過密な環境で飼われていたり、今まで薬で抑えられていた病気が自然界に解き放たれることで、元々そこにいた生き物たちへどのような影響を与えるか分かりません。










しかし、これらは外国産に限った問題ではありません。同様の問題は国内産の生き物でも発生します。とくに多いのは、メダカや金魚などの例です。







本来、日本人に馴染み深い魚であるはずの メダカは各地で姿を消し、いまや絶滅危惧種にまでなってしまっています。その多くは生息環境が失われてしまったためですが、細々と命を繋ぐメダカを脅かしているのは意外にも“メダカ”だったりします。

2012年、メダカはミナミメダカとキタノメダカに分けられました。ミナミメダカはさらに九つの型に分けられます。つまり、同じに見えても実は色々な違いがあるのです。

そのため、市販のメダカを放流してしまうと、本来そこにいたメダカとの競争や交雑が起こり悪影響を与えかねません。

(もちろん、メダカと同じニッチをもつグッピーやカダヤシの仲間も同様です)



「なぜ金魚を川に放流してはいけないの?」から外来生物問題を考える









では、そもそもなぜ「もともといた生き物」を守らなければならないのでしょうか。


生物多様性の保全はそもそも誰のために行っているのか?

答えは人のために行っています。






生物多様性から受けられる恩恵(生態系サービス)を人が持続的に利用していくことが、生物多様性保全の本質なのです。

その地域ごとに固有の生物多様性があり、それぞれの恩恵があります。無数の種類の繋がりで作り出される生き物の世界では、僅かにバランスが崩れると全体が崩壊しかねないです。

何の利用価値がないように見える生き物も、もしかしたら生態系の中で大切な役割を果たしているかもしれません。

また、ほとんど害がないように思える外来生物ですら、どの様な影響を及ぼすのかも未知数です。

「湿地帯中毒」内での書評で外来種への疑問が分かりやすく書かれています↓
http://d.hatena.ne.jp/OIKAWAMARU/touch/20160919









愛好家に親しまれるガーも、ひとたび川に解き放たれれば「駆除対象」になってしまいます。定着しないように予防措置として、二年後には特定外来生物に指定されることとなりました。

生き物に善悪はありません。

ガーやプレコはかっこよく、グッピーやシクリッドは美しい、本来親しまれる生き物です。しかし、無責任な飼い主らによって捨てられることで、それらの生き物を駆除しなければならなくなります。 そして、真っ当に飼育している人たちにも迷惑をかけてしまいます。


それを防ぐためにも
放流をしない、させない。
このことを徹底していかなければなりません。