葦原の生き物たち | 環学連通信

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各地の生物多様性に関心のある若者が中心となり環境保全学生連帯会議が発足しました。
日本中の水辺の再生を目指し日々活動中!

芦原の話





柳川市を流れる矢部川や沖端川、塩塚川には芦原が広がっています。もしかしたら、泥が堆積し雑草が生えているだけにしか思っていない方が多いかも知れませんが、この芦原は生き物にとって、とても大切な役割を担っています。






芦原は水を浄化したり、生き物の産卵場や生息地になることが出来ます。芦原の根元を覗いていると、無数の小さな穴が空いています。これはゴカイ類やカニ類の巣穴です。これだけの生き物の住処になっているのです。




バチ抜けと呼ばれるイトメ(ゴカイの仲間)の産卵。年に一度、一斉に巣穴から飛び出し産卵を終えると一生を終える。イトメは多くの魚や生き物の餌となります。






とくに柳川の芦原には“ハラグクレチゴガニ”が生息しています。このカニは、有明海奥部に流れ込む川(柳川~鹿島あたりまで)にしか生息していないとても珍しいカニです。とはいえ、このハラグクレチゴガニは柳川市の川などには数多く生息しています。普通にいるカニは、実は日本ではこの辺りでしか見ることが出来ない生き物だったりするのです。


豊かな芦原が残るからこそ、このハラグクレチゴガニも生息できます。しかし、このカニの生息地である芦原は失われつつあります。







河川改修により「雑草がかられ、泥が取り除かれ、綺麗になった!」と思うかもしれませんが、それにより無数の生き物の生息域が失われています。

有明海奥部周辺の芦原が失われハラグクレチゴガニが消えれば、イコールで日本からハラグクレチゴガニという種が消え去るということです。









芦原やハラグクレチゴガニだけではありません。最近ニホンウナギが絶滅危惧種になり話題になりましたが、ムツゴロウ、ワラスボ、ハゼクチ、エツ、アリアケシラウオ、アゲマキ、ウミタケetc……有明海に生息する多くの生き物が絶滅危惧種に指定されているのです。









干潟には稀に、絶滅危惧1A類の「水辺で遊ぶ子供たち」を見ることもできます。今のご時世、水辺は子供が最も近づいてはいけない場所になってしまいました。しかし、自然と接することなく大人になってしまえば、自然への興味や関心は薄れ、環境問題に対して無関心になってしまいます。

こういった、遊べる場所を保全し、水辺で遊ぶ子供たちを増やしていくことこそ、環境問題の根本を解決していける方法なのではないでしょうか?








この柳川という場所には、未だにそれらの貴重な生き物達の棲家があります。

人間の活動の最中で消えゆく生き物達の存在を、少しでも知っていただけると幸いです。