~年下@視点~
胸の奥が静かになった。何か言わなきゃと思うけど……実際には何も出てこない。
言葉を選んでいるわけでも、迷っているわけでもない。
ただ、今ここで何か言ったら今までと同じ場所には戻れない気がした。
――変なの。
彼はいつも通りなのに、俺のほうが落ち着かない。
目が合っただけだったのに。
いつもなら、先に逸らすのは俺のほうだ。
冗談を言うか笑って誤魔化すか、そうやって適度な距離を保ってきた。
なのに今日は……目を逸らせられなかった。
(あ……)
胸の奥で、答えが形になったのがわかった。
気づかないふりをしてきただけで、それは既に名前を持っていた。
触れてほしいとか抱きしめられたいとかよりも。
今、この瞬間に彼がいなくなる想像が一瞬よぎり、それがどうしようもなく怖いと……。
彼はここにいなきゃだめだ。
目の前にいるのになぜ今そう思ったのかはわからないけど、そう感じた。
彼の目が一瞬だけ揺れる。
その揺れが、俺のせいだとわかってしまった。
だってもう、彼が俺をどう見ているか、知ってしまったから。
(続く)