古代エジプトのピラミッドは、研究者によってさまざまな角度から考察されています。私は、ピラミッドの形と太陽には重要な関係があり、この二つを結びつけることで力とパワーを得ることができると古代エジプトの人達は考えていたと思います。

 

ピラミッドと太陽の結合の形は、ファラオのミイラに添えられた護符「ティエト」、オシリスやアヌビスなどが体に巻く紐、日本の前方後円墳の形、古墳時代の玄室壁画に描かれた〇(同心円)と△、モアイ像の文様、日暈(ひがさ)に現れる文様、八咫鏡の図象などと非常に共通性があると思います。ピラミッドは長い年月の間に人々の思考や感覚が時代によって変化していったとしても、根本的な思いは変わらず脈々と流れていたと考えられます。

 

これらの形は、死後の冥界や黄泉の世界から現世に関わる形を表現していると考えられます。古代人は死と生の循環を、この形に込めて表現したのです。

 

古代エジプトのピラミッドは単なる墓ではなく、王の霊を祀り、死後の安寧と現世の繁栄を祈る宗教的複合施設でした。ギザのピラミッドの前には祭祀場(葬祭殿)が設けられ、神官たちは日々の供養を行い、王の霊に食物や香を捧げました。これは王の霊が永遠に生き続けるための重要な儀式でした。

 

ギザのピラミッドはナイル川の西に位置し、天空の天の川の西にあるオリオン座の三ツ星の並びに対応すると考えられます。西は冥界や黄泉を象徴する方角であり、ピラミッドの配置そのものが宇宙的秩序を表しているのです。

 

 

八咫鏡の構造に照らすと、ナイル川や天の川は「ヨモツヒラサカ(黄泉平坂)」に対応し、その中心部は冥界=泉=水と捉えられます。古代エジプト神話では、原初の水ヌンから原初の丘が現れ、そこに創造神アトゥム(後にラーと習合)が誕生しました。つまり、冥界は「冥海」、黄泉は「泉」であり、中心には「水」が存在します。この水から生まれた原初の丘こそがベンベン石であり、ピラミッドの象徴なのです。

 

 

 

八咫鏡の構造に見られる正四角形と対角線の形は、日暈に現れる太陽十字が元になっていると考えられます。私はこの構造が神話の形成にも影響を与えたと捉えています。

 

 

 

 

ピラミッドと太陽は深く関係しており、結びの象徴である「ティエト」もまた重要です。古代エジプト人は形や色に敏感で、形には力が宿ると信じていました。太陽が地平線から昇り、ピラミッドの頂上と重なる瞬間、その形はイシス、オシリス、アヌビス、ヌン、ヌトなどの神々の紐の結びに見えます。これは冥界と現世を結びつける形であり、再生・復活・変容の象徴です。

 

 

 

 

さらに、ピラミッドの対角線はアテン神の絵に見られる神の腕や手に対応し、その手には魂・霊魂・神霊・精霊の球体が宿ります。ファラオが両手に持つ玉はその象徴です。ピラミッドの対角線は神の手であり、太陽とピラミッドが重なった時、その対角体(魂・霊魂・神霊・精霊)となるのです。

 

 

 

太陽とピラミッドが頂上で重なる瞬間こそがティエトの結びの形であり、古代エジプト人はこの瞬間に天空を崇め、祀ったに違いありません。この形は日暈に見られる構造から表現されたものであり、日本の前方後円墳にも通じるものです。

 

 

 

私は、古代エジプト人がピラミッドを造ったのは、太陽とピラミッドの結合を表現するためであり、その形に再生・復活・変容の願いを込め、祈りと祭祀を捧げたのだと考えています。

 

※ 写真はカラパイアさんから、八咫鏡の構造は吉野信子氏の著書より引用