これまで「イシス」の翼やその形について考察してきましたが、今回はイシスの身に着けている装飾から、古代の人々が抱いていた思想を探ってみます。

 

 

イシスの象徴と意味

 

• 玉座:イシスの頭上には玉座が描かれます。これはファラオが腰かける椅子を表現していると考えられます。イシスはファラオを復活させ再生する女神であり、この玉座は王権の守護を象徴しています。

 

• 翼:冥界から現世へ飛翔するために必要なものであり、ファラオが死を迎える時にも重要な役割を果たすと考えられます。

 

 

• アンク:永遠の生命を象徴し、「生(現世)→死(冥界)→再生(現世)」の循環を示す護符(生命の鍵)。神々やファラオが手に持つ姿が多く描かれています。

 

 

• ティエト:帯や紐を蝶結びにした形を持つ護符で、ファラオの棺に添えられる重要な存在です。アンクの変形とされ、水平に伸びた翼が閉じた形と解釈できます。イシス自身が翼を持つことから、その閉じた姿を象徴しているとも考えられます。

 

夏の大三角との共鳴

 

古代エジプトの神イシスと、夏の大三角に含まれるはくちょう座(デネブ)、こと座(ベガ)、わし座(アルタイル)との関連性を指摘する学者はいません。古代エジプト人は夏の大三角を認識していなかったとされますが、天の川を挟んで輝くこれらの星々から象徴的な意味を見出していた可能性はあると考えられます。

 

 

 

• デネブ:アラビア語で「めんどりの尾」。これはオシリスの赤い帯や紐に重ねられ、ベガとアルタイルを結ぶ結び目の象徴とも解釈できます。

 

• ベガ:アラビア語で「翼をたたんで地上に降りるワシ」。天空から地上へ降り立つイシスの姿と共鳴します。

 

• アルタイル:アラビア語で「飛翔するワシ」。地上での役割を終え、死者を冥界へ送り届ける象徴と捉えられます。

 

このように夏の大三角は、生命の循環 ― 天界からの降臨、現世での営み、冥界への帰還 ― を表現していると考えられます。

 

ティエトとこと座

 

 

ティエトの形はこと座(上の絵)の形に非常によく似ています。こと座は古代ギリシャで竪琴として認識されましたが、それ以前には竪琴の概念は存在しなかったと考えられます。ティエトはイシスの赤いハチマキとも重なり、天界・冥界・現世を強く結びつける象徴として理解できるでしょう。

 

まとめ

 

イシスの装飾(玉座・翼・アンク・ティエト)は、王権の守護、生命の循環、結び目の力を象徴しています。そして夏の大三角の星々は、イシスの役割と共鳴し、天界・冥界・現世を結ぶ宇宙的循環を表現していると考えられます。

 

※ 左上の絵画はウィキペディアからお借りしました。