古代エジプトの神々(下の絵)の頭上に描かれる椅子や水瓶は、単なる装飾ではなく神を表現する象徴であると考えられます。現代人の感覚では神と結びつけにくいものですが、古代人にとっては霊的な意味を宿す重要な記号でした。

 

 

頭上に椅子を戴く女神は「イシス」であり、ファラオの正統性と再生を保証する存在です。オシリスの妻であり、ホルスの母として王権の継承を支えました。玉座は彼女が「王座の母」としてファラオを霊的に支えることを象徴し、死者の復活や王の永続性を保証する女神として崇められました。

 

 

一方、頭上に水瓶を戴くのは天空の女神「ヌト」です。水瓶は「水=命の源」を象徴し、死者の魂を受け入れ再生へと導く器でもあります。ヌトは夜に太陽を飲み込み、朝に再び生み出すとされ、その「受容と再生」の象徴として水瓶が描かれました。水瓶は「宇宙の母の子宮」とも解釈でき、天と地をつなぐ霊的な容器としての役割を果たしました。

 

一般的には、神々の頭上に描かれるものは「象徴」と捉えられています。古代のアニミズム思想では、すべての物に魂や霊が宿ると考えられていました。現代の日用品である車や衣服、冷蔵庫などにも精霊や霊魂が宿ると信じられていたのです。アイヌ民族や古代日本人、さらには世界各地の人々も同様の思想を持っていました。椅子や水瓶もまた神霊を宿し、強力な力を持つと考えられていたのです。

 

しかし科学の発展とともに、このような発想は薄れていきました。古代人は自然や霊的存在に強い敬意を抱き、心を込めて崇めました。自然の力は人間の力を超えるものであり、その畏敬の念は生活の根幹を支えていたのです。現代人は自然をないがしろにし、破壊を進めています。このままでは地球の未来は危機に瀕するでしょう。

 

現在起きている環境問題は、自然への感謝や目に見えない魂・霊への敬意が失われた結果とも言えます。古代の人々のように、自然や物事、魂、霊魂、神霊に感謝し供養する精神が今こそ必要です。科学の力だけで全てを解決できると考えるのではなく、自然を敬い、物を大切にし、先祖や古の神々を供養する心を取り戻すことが、未来を守る道であると考えます。