古代エジプトのお墓には「大」の形をした文様が描かれていることがあります。多くの場合、それは天井部に配置され、ラムセス9世の墓でも天井に「大」の形が確認できます。
ところが、長い回廊の側面の壁に、円の中に逆さまの「大」を描いたような文様があることを発見しました。
一般には、この「大」は星を表すと考えられています。しかし、側面の壁に描かれていることから、必ずしも空を示すものではない可能性があります。
よく観察すると、その図像は、頭を下にし、両腕を水平に広げ、両脚を開いた人間の姿が大きな円の中に表現されているように見えます。
この絵を描いた人物には、特別な意図があったはずです。とりわけファラオの墓に描かれたものである以上、その思いは強いものであったと考えられます。
通常であれば、円の中に逆さまの「大」ではなく、正立した「大」を描くはずです。
私は、この円は霊魂そのものを、そして逆さまの「大」は死者の魂の姿を表しているのではないかと考えています。
古代には、生き物の魂が死後に空へ昇り、星になると信じる人々も多くいました。
つまり、この図像は、人間の魂が夜空(冥界)へ昇っていく姿を象徴的に表現しているのではないでしょうか。
さらに、「大」の漢字の下の∧形は両足を示し、現世の大地に「立つ」ことを意味し、再生した姿を象徴しているようにも思われます。
以上のことから、円の中に逆さまの「大」が描かれたこの図像は、死者の魂、あるいは霊魂そのものを表現したものと捉えています。
※ 写真はegyptologyさんからお借りしました。


